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「あー暇だわー」

「この雨ですものね。外には出られませんし」

雨垂れを眺めながらマリーが言う愚痴に本を読みながら答える。アルバートの婚約者になってからというもの彼女は1年の大部分をロードバーグで過ごしていた。

「別に私はロザムンドと違って外に出ることは好きじゃないわ。日に焼けたくないし」

「そうですか?マリー様は色白ですから問題ないと思いますけど」

「努力よ、努力!なによ、自分が焼けないからって…。そう言えばロザムンドは最近よく本を読むのね。文字問題は解決したのね」

「まだ分からない部分も多いですが…ジェーン先生もいますし、ギルやロバートも教えてくれるのでなんとかですね」

「ふぅんーーアルバートは?」

とマリーの口から出た人名に、回答に困る。アルバートも何かと気にかけて、分かりにくいという話をしていると同じジャンルのもっと簡単な本を探してきて持ってきてくれる。ジェーン先生が言うには、もう絶版になっているような希少本などもあり、王子の力を知らされている。王家からしたらそんな大層なことではないのかもしれないし親切であるのは良いことだけど、マリーの婚約者である彼が他の人にそんなふうにしているのは言うべきか……。

けれども隠し立てする方がうしろめたい事をしていると自覚してるんじゃないか?

言っておいた方が良いし、聞いておいてどうして欲しいが確認した方がいいんじゃないかな。

「アルバート様もですね。簡単な本を貸してくださいますよ。『マリーにも読ませておいて』とおっしゃってましたよ。読みますか?」

持っていた本を差し出すと、顔をしかめられた。

「そんな昔の戦争とかの話つまらないわよ。モード雑誌なら一緒に読むわ」

「そんなもの、うちにはございません」

服なんてどうでも良い。

それよりも私が閉じ込められる塔が何処にあるのか、東の国の物はどんなものがあるのかの方が知りたい。

「面白いですよ?…今メイスンさんと作ろうとしているお菓子のイメージを考えてるんです」

「お菓子!ーーそうだわロザムンドお菓子を作りましょうよ。今度はガレットが良いわ」

「えー、いやですよー。婚約者となったマリー様が私の作ったもので何かあったら困りますもの」

「何かって?何がよ」

「その…」

しまった、墓穴だったか。

口をモゴモゴさせて、濁しながら続ける。

「もし、もしですよ。私が作った物を召し上がって、具合が悪くなったり……されたら…悲しいですし。私が…マリー様にヤキモチを焼いた、とか…言われて。……ど、毒を入れたとかになったら……困ります」

「ヤキモチ?誰に?」

誰に?たしかに誰にだろう??

ジュエルパレス内であれば、アルバートと結ばれたマリーへと言うのは明白だけど、今の状態で私がアルバートに好意を持っているなんて思う人はいるだろうか。

「マリー様に。アルバート様を…取られた?とかで」

私の答えにマリーは目を丸くしていた。

「ロザムンド、あなたアルバートが好きなの!?友達とかそう言ったことではなくてよ!」

「ーーあれ?いえ、全く」

マリーの言葉で改めてはっきり分かるけど、別にアルバートは仲良しだけどマリーと2人でいても何も思わない。

「変な子ねぇ。ならヤキモチじゃなくてよ」

「そうですね。むしろマリー様を取られるって思いますね」

「私を取られる!」

マリーはそう叫ぶと私に抱きついてきた。

「やだなんて可愛いこと言うの!?大丈夫よ!私の1番はあなたなんだから。むしろそんなヤキモチならいくらでもいいわよ」

互いの頬をくっつけるように抱きつかれてそう言われて慌てて否定する。

「で、でも私は毒なんて入れませんから!本当、うちで作ろうとしてるのは毒ではなくて」

「ハーブでしょ?大丈夫よ。あ、わかったわ。それなら私が食べるものはあなたが毒味すれば良いじゃないの」

「「どくみ!?」」

マリーの単語に、それまで黙って側にいた驚いてメアリも叫んだ。

「そうよぉ。フォンテールでは王に毒味がいることもあるわ。まぁロザムンドにそれをやらせるのは冗談だけど、気になるならあなたが食べてから私に食べさせれば良いんじゃない?」

「ーー候補として検討します」




後日、王宮に呼ばれた私は、マリーと一緒に作ったガレットを持っていった。

するとマリーがこう言った。

「ロザムンド、前に言っていたこと、気になるなら試しにやってみましょうよ。これを半分食べてみて」

と、手に持ったガレットを2つに割り、私の口に入れた。されるがまま私は咀嚼をして飲み込む。

「どう?」

「美味しいです」

自画自賛だけど、今回のものは成功だ。

「なら私にも頂戴」

マリーが口を開けてそう言ったので、今度は私が彼女の口に残った半分を食べさせる。

「本当!いつもながら美味しいわ!……あら、お三方どうかなさって?」

向かい側に座るアルバート、ロバート、ギルの3人を見てマリーが何でもないように微笑んだ。

「ロス、今のはーー何ですか?」

少し震えた声の質問にマリーが微笑んだままで返した。

「内緒よ。ねぇロザムンド」

勝ち誇ったようなマリーの表情はよく分からないけど、王宮で毒味の話をするのもよくない気がするのでここはのっておく。

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