パーティでも臆さない
いよいよ、フォンテールに来た一番の目的マリーの誕生会が始まった。
素晴らしい演奏と招待客、そして宮殿の華やかさに圧倒されつつも、初めてギルに会った時のお茶会よりはまともに対応していた。
嫌味を言ってくる人がいるかとも思いきや、やって来たギルやアルバート、ロバートそれにロードバーグの王妃が気を遣ってか隣にいてくれたお陰もあり今の所そのような事はなかった。
「ロス、今日のドレスも素敵ですね」
「ありがとう。派手すぎると思っていたんだけど、ここでだとそんなこともないみたいで安心しました」
そう、マリーの送ってくれたパニエの大きなドレスは、フォンテールでの宮殿ではなんて事はない程度で、出席者の女性は皆もっと横に広がったーーそれこそ扉に閊えてしまいそうなくらい大きな物を身につけていた。むしろ細身のドレスを身に着けている王妃様が妙に目立っているくらいだ。
「で、それなのにローザはなんで壁向いて立ってるの」
「それは・・・」
「ロバート王子、お嬢様は刺繍が見えないようにしてらっしゃるのさ!」
ジェーン先生の言葉にロバートはなるほど、と納得していた。
「マリー王女の刺繍が着いているドレスなんて今ここに居る人間だと他にはカトリーヌ王女だけのようですしねぇ」
「そうかもね。でもローザあんまり意味ないよ」
「え!?なんで?」
ロバートの指摘で周りを見ると、周囲の人がちらちらとこちらを見ているのが分かった。
「ロードバーグから来て、王子と一緒にいたらーーまぁ仕方がないよね。『お嬢様は何者なのかしら』って思われてるに違いない。現に、私はさっき『そちらのお嬢様はロードバーグのお血筋なのですか?』って他のコンパニオンに聞かれたよ」
「ジェーン先生はそれになんて答えたの?」
「んん?ふっつーに『シャポー侯爵のご令嬢ですよ』って答えたよ。王家の血筋なんて間違えられた方が大変だからねぇ。特に『今は』ね」
そう言って、強調された『今は』の言葉はアルバートとの事を指している。表立っては発表されていなかったがすでにフォンテールの宮廷に近い皆にとったら噂なのだろうが、いつ決まったのだろう。
「ギルもロバートもご存知だったんですか?アルバート様とマリー様の事」
「ああ、婚約者のこと?」
「聞いたのはここに来る直前ですね」
「前々から周囲がうるさかったんだよ。アルバートは適当に躱していて、別にお父様もお母様も気にしていなかったんだけど、このところ周りの人たちの声が一層大きくなっていてね。まぁ、頃合いじゃない?」
特に驚いた事もなくそう返す2人は、別に婚約者が出来る事に不思議はないようであった。
想像でしかないが王族とはそうなのかもしれない。
「でもマリー様とアルバートというのは意外でしたね。もっと知らない所からくると思ってました」
そう言ったのはギルであった。
「確かに。ロードバーグとフォンテールだと婚姻を結んでも今以上に近くなるのは難しいよね。アルバートに聞いても『利害一致したから』っていうから。まぁ僕らにしたらアルバートがそうしてくれていると楽になるよね」
「楽?なんですか?」
「だって、アルバートが王位を継ぐってことは決まってるようなものだし、その相手がフォンテールの王女なら誰も口出せないじゃない。で、確固たる地位を持ってもらったら、僕らは好きな事が出来るもの」
ロバートの返しに驚いてしまう。
ジュエルパレスのストーリーではロバートは王位を継ぎたがるはずなのに、今の言葉では王位に微塵の興味もないのだ。
「ロバートもギルも、王様にはなりたくないの?」
「ーーロス、物凄い事ききますね。ダメですよそんな事よそで言っては」
ギルに窘められて、自分の言った事の重大さに気がつき口を抑えると、ロバートが可笑しそうに笑いだした。
「そんな問題発言を真っ正面から言うなんて!本当ローザは変な子だね。うん、興味ないんだ。それよりやりたい事あるし」
「私もです。それに何処かのお姫様と結婚とか嫌ですし、政治にも興味がないです」
両手で口を抑えている私に2人はそう言い聞かせていると、人垣の中からアルバートが疲れた顔をしてこちらへ戻って来た。
「参った・・・こんなになるとは思ってなかった」
戻って来たアルバートはマリーの伝言を持って来ていた。
『パーティが終わってもここに残っていて』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
マリーの言付けに従い、その場で待っていた。
もちろん私はプレゼントを持って。
「そう言えば、ご出席された皆さんプレゼントってどうされていたんですかね?」
渡している姿はひっきりなしに見ていたが、その場で開いている光景を見なかった私はそう言った。
「そっか、ロザムンドはいつも僕らのパーティも見ていないから知らないよね。ああ言った場ではその場で開けない事の方が多い」
そう教えてくれたのはアルバートだ。
「そうなんですか?」
「気に入る、気に入らないもあるし、あっちのを開けてこっちのは開けないって言うのが問題になるからね」
「まぁぁ、なら私はいつもとても失礼な事をしていたんですね。礼儀知らずでごめんなさい」
ロバートの付け足しに、自分の行動を思い出して恥ずかしくなった。
「それは違いますよ。こちらが開けてと言っているんですから。むしろ開けない方が悲しいです」
「ロザムンドへは私的だからね」
ギル達のフォローによく分からないと首を傾げていると、マリーが駆け寄って来た。
「ロザムンド、待たせてごめんね!」
「マリー様、僕らは?」
「アルバートは散々話したじゃない。あ、ロバートもギルフォードも来てくれてありがとう」
「ついでな感じで嬉しいよ」
なんて言いながら、マリーの部屋へ連れて行かれる。
ああ、このプレゼントはいつ渡すべきなのか。
悩んだ挙げ句、マリーの部屋の中に入り、早々に渡す事にした。
「マリー様、これは気持ちだけなのですが・・・。頂いたこのドレスには全然及ばないのですが」
と私が両手で抱えてなんとか持てる程の大きさの箱を何度も念押ししてから手渡すとマリーはすぐさま「開けても良い??」とはしゃいでいた。
そんなに立派な物ではないし、とてもこのドレスのお返しにはならないものなんだよなぁ〜と苦笑するも、その嬉しそうな様子を見てしまい、どうぞと言った。
ワクワクした気持ちを隠さずにマリーは包みを丁寧に広げて、箱を開けた。
小さな棚と香水瓶が一つ、箱の中から出て来た。
「まぁ素敵!」
「棚は私がデザインしまして、ベンと一緒に作ったんです。あと香水はウチの庭で取れる花から作りました。すみません、心ばかりでーー」
「何言ってるの!?これは世界に一つしかないじゃない!あ、ここに掘ってあるのは忘れな草ね。それにこの香水、とても良い香りだわ!!私、香水が苦手だったのだけどこの匂いは軽くてつけ易いわ。ロザムンド、本当にありがとう!とってもとってもとーーっても嬉しい!!」
そう言ってマリーは私を力一杯抱きしめた。
メアリの言った通り、気持ちの問題だったようで、マリーは本当にこの贈り物を喜んでくれた。




