番外編:カトリーヌ
私はカトリーヌ。カトリーヌ・ディアーヌ・ドゥ・ラ・フォンテールという韻を踏んだような名前のフォンテールの王位継承者。
家族構成は父である王と双子の妹、母はすでにいない。あともう引退したお爺様がいらっしゃるの。お爺様は早く私に後を継がせたいらしいし、お父様も逆らうつもりはないらしく、既に宮殿内では事実上トップに君臨しているわ。
別に国の事をするのは嫌いじゃないけど、不満があるの。
それは双子の妹、マリーちゃんのこと。皆はそっくりだって、言うけど全然似ていない。私よりもずっと表情が豊かで髪の毛だってピカピカしてるし、唇はバラ色で動くたびに花が綻ぶように見える。
率直に言えば100倍可愛いの。
数年前までマリーちゃんは私の事をあまり見てからなかったから、私は寝ている彼女くらいしかマジマジとみる機会がなかった。
でも私はマリーちゃんが大好きで、お話ししようとするととても緊張する。お爺さまと話をするときよりも何倍も緊張して上手く話せないから、マリーちゃんはどんどん私と話をしてくれなくなった。
そんなある日に『癇癪が過ぎる』という事でマリーちゃんはお隣のロードバーグへ少しホームステイさせられる事になってしまった。私は大好きなマリーちゃんがいなくなって干涸びそうだった。
そんな時に側近のジルがこう言った。
「そんなに寂しいのでしたらマリー王女そっくりのお人形でも作らせましょうか?」
後から思えば揶揄ったのだと分かるけど、その時の私には天啓だった。早速、有名な職人を呼び寄せて私はマリーちゃん人形を作らせたの。
マリーちゃん人形に話しかける私を見て、ジルは「マリー王女にもそうやってお話しになれば良いのに」と呆れていた。
そんなの無理!
緊張して出来ないし、それにこんな甘ったれな話方したら幻滅されて余計に話してもらえなくなっちゃうもの。
この時から私のマリーちゃん人形集めの趣味が始まった。ちなみに今では30体以上ある。
そんなマリーちゃんオタクの私だからロードバークから帰って来たマリーちゃんが変わった事にもすぐに気がついた。私によく話しかけてくれるようになったり、「お姉様すごい!」って褒めてくれたりするようになった。
嬉しいけど、不思議だった私は思い切って「マリー、なにか良い事でもあったのか?」って聞いてみたら、顔を赤くして「うん」って教えてくれた。
始めはまさか、大人達のバカな考え通りロードバーグの3兄弟の誰かに何かされた!?
とも勘ぐったけど、どうやら違うみたい。だってその子達の話は全くと言っていい程出てこないもの。
出てくるのは『ロザムンド』、その名前ばかり。朝から夜までロザムンドロザムンド。
最初は面白くなかったけど『ロザムンドと話をしていたら、私の事が自慢になった』とか、『私ともっと話をしてみたくなった』なんて言うもんだから私も『ロザムンドちゃん』の事を色々聞いたわ。
お家があまり裕福ではない事。
フォンテールとの国境近くのシャポー家の娘だという事。
マリーちゃんが褒めるくらい可愛い事。
これは一度、マリーちゃんとお付き合いしても良い子なのかお姉ちゃんが見定めてあげなきゃ!と思って
「よろしい、では次のマリーの誕生日に招待なさい」
って言ったら、それはもう嬉しそうにしていたわ。
その時の可愛らしさは交響曲が作れるくらいの感動をくれた。
そしてこの世のどんな祝日よりも重要なマリーちゃんのお誕生日目前に、ロザムンドちゃん私のところへがやって来た。
マリーちゃんと手をつないで私の広間へやってくる2人を見た瞬間、
リーンゴーーーン!!!
って私の中で鐘がなったわ。
この胸の高鳴りは何かしら!
良いわね、溶けるような金髪のマリーちゃんと夜空みたいな漆黒の髪のロザムンドちゃん。タイプが違う美少女が2人並んで歩いているだけでその足跡に花が咲き誇り、頭上で天使がラッパ吹き出しそう。
ジル!見てご覧なさい!2人がキャッキャウフフしてる〜!!
マリーちゃんがいなければその場でそう叫び出してたに違いない。
これはすぐに職人にロザムンドちゃんを模したお人形さんを使ってもらわなきゃいけないわ。洋服は何色にしようかしら。
あらやだ、マリーちゃんがお姉ちゃんっぽい事してる。これ、この光景を残したい。今すぐ画家を呼んでも大丈夫かしら。宮廷画家は今マリーちゃんの『誕生日3日前』の肖像画を描かせているから、この間のアカデミーで歴史画の特賞をとった人に頼む事にしましょう。
ーーって、あらあら急に2人揃って、私を見つめてるぅ!!!
美少女の上目遣い、その破壊力たるや。お姉ちゃんオーバーキルされそう。
天国!そう、こここそが楽園、ヘブンなのね!
(※注※カッコ内がロザムンド達に聞こえていた言葉と思って下さい)
「いらっしゃい、ロザムンドちゃん!(良く来た。歓迎しよう。ロザムンド・シャポー)」
「ロザムンド・シャポーと申します。この度はマリー王女のご生誕パーティに御呼びいただきまして光栄の限りでございます」
「ふふっ聞いていた通り、真面目な感じの美少女だね〜。マリーちゃんは昔、ロードバーグに行ってから毎日ロザムンドちゃんの話をしてくれるのよ!(固くならずとも良い。マリーは数年前にロードバーグに行ってからそなたの事ばかり話している)」
私がふふっと小さく笑うと、マリーちゃんが照れくさそうにしているじゃない。なんて表情なのかしら、プライスレス!!!
「その所為で、アルベールとかいう王子と婚約するなんて大人達に良いようにされちゃってるけど(まぁ、それのお陰でーーたしかアルベールとか言ったか、あれと縁が出来たのだな)」
「お姉様アルバートです」
「え?まあ別にマリーちゃんはアルベールの事は好きじゃないから形だけだと思うけどね(そうか?まあアルなんとかは、それほど重要でもないがーー)」
ロードバーグの三兄弟めこんな眼福を味わってたなんて、憎い、もう羨ましいとかじゃなくてただ憎いっ。
あ、いいこと思いついた。アルベールとかいうのに婿に来て貰えばいいんじゃない?
ロザムンドちゃんも下らないこと言われないウチの国の方がきっと楽しく過ごせるし、こっちで過ごせばマリーちゃんも楽しいんじゃない?
シャポー家ならフォンテール貴族だって受け入れやすいし。
別にマリーちゃんもアルベールの事はさほど重要じゃなさそうだしーー。
うん!名案だわ。美少女2人を両脇に国政を担うっていいんじゃないかしら。
私、頑張っちゃうから!




