マリーの計画
「こっ婚約者って……マリー様あんなに嫌がってたじゃないですか」
「気が変わったの。まぁそれはいいじゃない」
よくない。いやよくないよ!
私の人生に大きく関わってくるんだよ!!
マリーはそうしてその話題を終わらせてしまい、手を引かれたまま私は宮殿の中に入ったと思う間もなく、そのままマリーのお姉様の元へ挨拶に向かっている。『婚約者』という聞き捨てならない単語について聞きたいのに中々切り出せない私を知ってか知らずか、マリーは一切その事に触れず、お姉様について話をしていた。
頭の中が真っ白になりながらも、そうやってお姉様談義を聞く私は「王様とかお妃様ではなく、まず姉に紹介したい」なんてマリーはお姉様が好きなんだなぁ〜と思う。
「マリー様、お姉様のお名前はなんと言うのでしょうか」
「カトリーヌ・ディアーヌ・ドゥ・ラ・フォンテールよ。王位を継ぐ人だけがラ・フォンテールを名乗るの」
マリーはマリー・シャルロット・ガブリエル・ドゥ・フォンテールだから既に王位を継がないと決まっているという意味なのか……王位継ぎたいとすればなかなかに残酷な制度だなぁ。
「本当にお姉様がいて良かったわ!」
私の心配を裏切るそんな言葉が聞こえた。
「どうしてですか?」
「実は以前は不満だったの。なんで私だけ追い出されなきゃならないの?って。でも今はむしろ、お姉様が継いでくれるから私はここに残らなくて良いんだもの!」
マリーの言っている意味がわからないがその表情に裏表はない。
「あれ?マリー様、国を出て行きたくなかったんじゃ?」
「あの時から変わったのよ。ーーあ、ここよ。ここがお姉様が居る広間よ」
そう言って今日見た中でも一等豪華な扉を開いた。
なるほど、王様とお妃様も一緒かーーっていないわ。大きな椅子にちょこんと誰かが座ってる。
あれがお姉様なのかな。
「お姉様、ロザムンドを連れて参りました」
マリーが丁寧におじぎをしたので、私もそれに倣う。顔を上げてその人を見上げると、マリーに良く似た、でも少し厳しそうな顔の女の子がいた。
「良く来た。歓迎しよう。ロザムンド・シャポー」
少女には合わない恭しい口調が、マリーとは異なる存在であることをまざまざと表している。
ここで粗相をしよう物なら首が飛びそうだ。
「ロザムンド・シャポーと申します。この度はマリー王女のご生誕パーティに御呼びいただきまして光栄の限りでございます」
「固くならずとも良い。マリーは数年前にロードバーグに行ってからそなたの事ばかり話している」
カトリーヌがふふっと小さく笑うと、マリーは照れくさそうにしている。
「まぁ、それのお陰でーーたしかアルベールとか言ったか、あれと縁が出来たのだな」
「お姉様アルバートです」
「そうか?まあアルなんとかは、それほど重要でもないがーー」
そんな修正の言葉は今はどうでも良い。
今、なんて言った?
......アルバートって......言わなかった?
「マリー様・・・それは先ほどのお話と同じ・・・でしょうか」
「もう、お姉様、私から言いたかったのに!そうなの、私、アルバートの婚約者となったの」
何でもないようにマリーはそう言った。
聞き間違いではない。あの、アルバート、ギルのお兄ちゃん1号ことジュエルパレスのメイン攻略キャラのアルバートって事だ。
ちょ、ちょ、ちょっと待って!!ちょっとまってーーー!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「それで、お嬢様はご挨拶も早々にお暇させていただいたーーと」
メアリがぐったりとする私の話をまとめてくれた。
むしろあの場で倒れ込まなかった点について褒めて欲しい。ガラスの壁に反射するシャンデリアの光の中倒れ込むというドラマチックな展開にならなかっただけでも耐えた方だ。
「んー?でもそれだとロザムンド的には良い事じゃないの?ルートが一つ消えたんだから」
「違うんです。マリーが主人公の場合だとアルバートと結ばれる場合、私が『毒殺事件』を起こして幽閉されます」
「「どっ!?」」
物騒な言葉にジェーン先生とメアリが声を詰まらせた。
「しかもお嬢様、薬草卸そうとしてますよね・・・」
「中止した方が良いかもね。あらぬ疑いがかかる前に」
「でもせっかく色々試していて楽しいのに、そして我が家の収入源になりそうなのに」
幽閉ルート回避には代えられないか。
「とはいえ、意外だったね〜。あのお2人そんなに仲良かったっけ?」
「あまりそういった印象はございませんけどね?」
「それよりもなんでかしら。話がスタートするまでまだ5年くらいあるはずなのにー」
もはやパーティへの悩みどころではなくなった。
私は今後、今まで以上に慎重に動く必要があるのである。




