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昼下がりに考え込んでいる

誕生日からこのところ忙しくしていたが、少し小休止のような昼の午後だ。

子爵に会ったり、グーピュル商会に行ったりしていたが今日は予定もない。既にジェーン先生との授業も終わり庭でのひと時。足下でジョセフが時折こちらを見上げては『遊ぶ?遊ぶ?』と期待の籠った眼差しをしているが、微笑みを返してまた考え事をしている。


ベンの家具で今の所、極貧からは抜け出ているがそれ一辺倒は良くない。あれはベンの物だ。だからシャポー家の立て直しとして何が出来るかを考えている。

「ねぇメアリ、お父様の商会ではどんな物を扱っていたの?」

「しがない使用人の私よりも、スチュワードさんやアンナさんに聞いた方が良いと思いますよ。それか・・・ジェーンとか」

「そうよね。ただ、この間の子爵の話を聞く限り、私にはお父様のような事は出来そうもないのよね」

「そうなんですね」

そうなのだ、気遣いとか先読みなんて才能はない。前も何も出来る事がなくただの会社員だったもの。それなら私が知っている知識を使ってこの世界にないものでも売り出せば良いけど・・・。

とは言ってもこの世界は電気くらいしか足りないものない。制作側の意図なのか大体18世紀〜19世紀直前くらいの文明があるし、産業革命前夜くらい?とすれば機械産業でもすれば儲かるのかしら?そんな知識もないしなぁ。資金作りとして銀行ーーは金融知識がないとだめだし。

行き先が見えない。

「お嬢様が知っていらっしゃる『小説』の知識を元に先手を打って儲けを出すのはいかがでしょうか」

メアリの提案は私も考えていた。戦争が起こる前にその手を打つとか、バブルの品を事前に買いあさるとか、占い師にでもなってやろうかとも考えて、やめた。

「それも良いと思ったんだけど・・・その考えに至った理由を聞かれたら答えられないから止めたの」

「理由ですか?」

「なんか思いついくにも訳がないとだめでしょ?知ってるから、なんて言ったら一気に怪しまれちゃうもの」

はぁーと大きくため息をついて、紅茶を飲んだ。

あれ?ちゃんと味がする。

・・・そういえば子爵のところで『東の国のお茶』って出て来たわね。

そしてちらりと、リリーが用意してくれたマドレーヌの方も見る。

食べ物についても現実世界の物が普通にある・・・でも和菓子ってないわね。

「そうだ!和菓子作るってのはどうだろう?!」

立ち上がってそう叫ぶ。

「和菓子・・・なんですかそれは?ーーそれはそうと、トムが先ほどからお嬢様に話があると言っております」

私の単語に聞き慣れないという反応をしながら、メアリはトムを呼んだ。



「お嬢様、ちょっと良い?」

トムがそう言ってこちらへ寄って来た。ベンが家具ならトムはウチの生い茂った庭の植物を、知り合いに卸して利益をくれている。その知り合いは花屋さんなのか飲食店なのかちゃんと聞いた事はないが、タダで渡す代わりにシャポーの館の修繕や庭の整備を無料でやってくれている。

「どうしたの?修繕が出来ない場所でもあった?」

「いや、そっちはあらかた終わったから大丈夫っす。その所為で、いつも卸してる所が幾ら払えば良いって聞いて来てるんだけど、いくらで卸す?」

「買ってくれるの?わざわざ??」

雑草を?どんだけ物好きなの??と不思議に思っていると

「雑草じゃないらしいよ。なんか外国の植物らしくて、この国だとめったに手に入んないらしい」

「侯爵の趣味でしょうかね?」

メアリも知らないらしく首を傾げる。

「うーん、私には物価が分からないからジェーン先生に聞いてみましょ。話はそれ?」

「それとは別に、2つくらい確認したいことがあるんだよね。薬問屋がウチの植物を知って欲しいって言ってることと、庭掘ってたらでこんな物が・・・」

と手に持っていた蔓を見せる。

これは、良く知ってる。

「ジャガイモじゃない。これがどうしたの?」

「へぇー、『じゃがいも』っつーんですか。お嬢様物知りっすね」

ジャガイモがない?何だそりゃ。

「食べられるわよ、蒸かしても美味しいし、揚げても抜群に美味しい上にお酒に合うわよ」

「へ?酒??お嬢様、酒飲むんすか?」

おおっと、久々に忘れてた。私は10歳、お酒は20歳になってから。

「い・・・いえ、そう聞いた事があったなー、って」

誤摩化しにメアリが入ってくれる。

「ならリリーに作ってもらいましょう。蒸かすってただ蒸せば良いんでしょうか」

「ええ、洗って皮着いているままでいいの」

「分かりました。トム、それと先の方ですけど薬問屋ですか?」

「そうなんだ。クスリになる物が結構あるらしいけど、薬を卸すとなると勝手にやっていいのかわかんないし」

薬、そう言えばロザムンドの幽閉理由に『毒殺事件』があった覚えがある。

薬ねぇ・・・。避けた方が良さそうだけど、どうだろう。

「言い値で良いって言って来てるけど、どうする?」

トムの言葉に揺らぐ。収入源はいくつかあった方が良いけど、法律はどうなんだろうか。誰に聞けば良いのかわからない。

「とりあえず、その問屋さんに会いたいから今度呼んでもらっても良いかしら?」

トムにそう伝えると、すぐに設定するとの事だった。

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