おでかけ
ぶっ倒れて終わった誕生会の少し後、私は初めてジェーン先生と2人でお出かけをしている。
馬車の中には2人しかいないので人目も気にせず色んな話が出来た。
「30分くらいで着くのなら歩きでも良かったのに」
「とんでもない!お嬢様を歩かせたら、私がじい様に怒られちゃうよ!」
そう言ってジェーン先生は老人のマネをしながら更に言った。
「『まったくお前は。こんな小さい子侯爵令嬢歩かせるなんてひどいヤツだ。本を読むのも大事だけどね、気遣いが出来ないのはお前のいけない所だ』って。自由にさせてもらっているけど、結構口煩いのよ。ウチのホワイトじい様は」
「お爺様と仲が良いんですね」
ジェーン先生の話には頻繁にホワイト子爵の話が出てくる。実際にはお爺様ではないらしいが、大昔、ジェーン先生のお婆様と恋仲になりジェーン先生の母が生まれると、自分の血がつながっているとか関係なしに多大な援助をしたそうだ。何でも、『君の子なら自分の子だ』と言って認知し、形式上だけでもと養子にしてしまったそうだ。
「あれ、そう言えば先生は『レディ』よね?でもホワイト子爵は『子爵』よね」
「良い所に気がつくね。息子、私の叔父上に家督を譲って今は子爵って名乗ってるんだよ。実際子爵なのかはわからないけどね」
「適当ねぇ〜」
「だって私からすりゃめったに会わない、たまに会ったら怒るじい様なだけだもの。じい様以外のホワイト家の面々とはほとんど会った事もないしね」
その言葉に、身分のめんどくささを感じる。
「変なじい様だけど嫌いじゃないし、むしろ数少ない理解者だよ。ーー辛気くさい感じになったけど。じい様とおばあさんの話はそんじょそこいらの恋愛小説顔負けだよ。仲良くなったら是非聞いてみると良い。あ、恋愛小説と言えば、お嬢様は結局どうなの?」
急転換する話題に、唾が変な所に入って咳き込んだ。
「なんですかそれ?」
「小説の世界なんでしょう?それも恋愛系の。どう?ロマンスは生まれそう??」
「見たまんまです。なーーんにも生まれていませんし、生まれさせません!」
「・・・ちょっとギル王子とか、他の王子が不憫に思えて来たぞ。とはいってもさ、話を戻すけど3年いて王子樣方とマリー様以外にメインの登場人物って出て来たの?」
そういえば、ジュエルパレスには他にも攻略対象は2人と隠しキャラ1人、そして私、マリーの他に主人公が1人いたはずだ。15歳にストーリーが開始する予定だからまだ会っていないだけかもしれないが、先に手を打っておく事も出来なくないかもしれない。
「おーい、ロザムンド?急に黙っちゃわないでよ」
攻略対象の1人は確か軍人ーー騎士だから、騎士が来そうな所には近寄らないようにして、もう1人は他の国の大臣だった。子どもの私が大臣に会う事はなさそうだしこれは放っておこう。そして隠しキャラは全員攻略しなきゃ出てこないはずだから、今の私が会う事は有り得ないわね。
「大丈夫!!!」
「わぁ!急にどうしちゃったのさ。大丈夫って何が?」
「しばらくは、今の登場人物達のフラグを潰し回っていけば大丈夫だと思うの!」
「そうなの?ーーフラグは・・・潰せそうにないけどねぇ」
ジェーン先生が小さく言っていたのは聞こえないフリをした。
そんな話をしていると、ホワイト子爵の家に着いたので、私とジェーン先生は手をつないで館に向かった。道すがら、出迎えがない事を謝られたが、私はそんな物に慣れてはいないのでこの方が良い。
「私が来るって言うからきっと誰も来ないようにしてるんだ」
ジェーン先生が苦笑まじりにそう言っていた。
ホワイト家の人とはほとんど交流がないということは、先生もまた微妙な立場なのかもしれない。私はつないでいた手をギュッと握った。
シャポー家とは違って必要な分手入れがされている庭とその先にある大きくはないけれども立派な作りの館。その扉をジェーン先生はノックもせずに開いた。
「ホワイトじい様ー、お嬢様をお連れしましたよー。侯爵令嬢に出迎えもないって普段の礼儀はどうしたの」
かなり大声でそう叫びながら私の手を引いて中に入っていく。温かい日差しが綺麗に磨かれた床に反射した静かな館で、人の気配がなかった。そしてメインのお部屋の部屋に近づくと、その扉が開いており中を覗き込むと誰かが倒れている足が見えた。
その瞬間、まさか倒れていらっしゃるのは・・・ホワイト子爵!?
爺様とジェーン先生は言っていたが一体おいくつくらいなんだろう。
私は駆け寄って倒れている白髪のおじいさんーーホワイト子爵に声をかけた。
「だっ大丈夫ですか?!もしもし、きこえますか?」
こう言うとき体を揺すっちゃいけないんだっけ?とりあえず仰向けにさせ、私は倒れているホワイト子爵を呼んだ。




