着せ替え人形になって
今日は私の10歳の誕生日だそうで、家人はバタバタしている。
さすがに誕生日に台所には入れてもらえないのでお菓子を作るわけにもいかず、誕生日なので授業もなかった。朝から料理だの掃除だの、皆で楽しそうに進めていくのを他所に私は部屋でメアリにドレスを色々着せ替えられていた。
「メアリ、もうこれで良いんじゃない?とても素敵だと思う」
「いえ、やっぱりこの色じゃ少し大人っぽすぎると思いますのであちらの水色の物に…」
「それはさっき着て、顔色が悪く見えるって言ったじゃないの」
「先程と髪型を変えてみますし…でもたまにはピンクもお似合いだと思うんですよね。色の白さを際立たせますし、お年としたらそういった色の方が」
「あっちは『レースが安っぽい』ってなったでしょ。ーーというか、この大量のドレスはどうしたの」
実は今朝ここに連れてこられた時から気になっていたことをようやく問いただす。部屋の真ん中に立たされると、私を中心にした円周上に並べられた数々のドレスや装飾品が用意されたのだ。その数の多さに腰を抜かしそうになっているとアレでもないコレでもないとメアリの着せ替え人形となってしまったのだ。
おしゃれに興味のない私はヘトヘトである。
きらびやかな装飾品が目の端々に嫌でも入って来て、いくらかかったのか聞くのが怖い。皆この家の事をどうにかしようとしてるのは知っているが、相変わらず貧乏なのには変わらないはずだ。
「・・・念のため確認するけど、これ全部買ったりしてないわよね」
「勿論そんな事しておりません。お嬢様がそんな無駄遣いをお喜びにならないのは知っております」
「じゃあこれは・・・?」
レンタル?そんな制度あったのか?
もしかしてお母様からお古かしら??
「これはグーピュル夫人およびご主人、ならびに商会の皆様からのプレゼントです。ーーあちらの濃紺のドレスも良さそうですね」
「伯母っ?!ご主人?!そして商会?!?私会った事ないのに?」
当たり前だけど伯母さまは会った事はある。ご主人であるグーピュルの伯父さまも何度かお会いしているが、それほど仲良かった覚えはない・・・恰幅の良い伯母さまのテンションに負けない話し好きの親しみのあるおじさんで、ジャ○おじさんを思い出した。まぁ、姪っ子の誕生日に何もないのはというのも、人付き合いにおいては大事かもしれないから伯父さんからもまだーーなんとか理解しよう。
でも商会?会ったことない人にまでプレゼントなんて、大人の交流術ってやつか。
とか自分を納得させているとメアリは続けた。
「グーピュル夫人達はマリー様達の企画を聞いて『私も参加するわ』って張り切っていらっしゃいました。そしてそれに皆様続々参加されてますよ」
「お返しする訳には」
「いかないでしょうねぇ」
「でも悪いわ」
「皆様お会いしたいと言っておりましたよ。この館にも時折来る者もいるので、お見かけした際にはお礼を言って差し上げれば良いんじゃないですか」
「・・・分かった」
「ああ、そうです。参加と言えばジェーンも」
「ええ!?ジェーン先生まで?」
意外な参加者だ。私と同じく身なりになんて興味ないタイプと思っていたのに、裏切られた気分。
「ジェーンのお爺さま、ホワイト子爵から預かって来たといって一式渡されました」
「だから会った事ないのに何故!?」
メアリが指差す先に会ったリボンのかかった箱を見て、目を見開いた。いえもう、ホワイト子爵なんて全くお会いした事ないですし、モーリー夫人撃退に一役買っていただいただけでも震える程感謝しているのに、プレゼントまで。
「これは、今度お会いしてお礼を言わなきゃだめね」
「ですねぇー」
と言いながらもメアリの手は休まる気配がない。
ただその行動も、鏡に映る自分を見て分からないでもない。自画自賛みたいで気持ち悪いが、確かに人形のようだし、いつもと違う格好をさせると印象がガラリと変わる。面倒くさがりの私は、誰に何と言われても普段は着た切り雀のように同じ服を着ているからこう言った時くらいしかメアリが侍女らしい作業をすることはない。
まぁ、これもプレゼントだと思えば良いか。諦めてされるがまま、お昼過ぎまでメアリの着せ替え人形をしていた。




