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薄幸ポジションだけど幽閉ルートは断固拒否します  作者: つぶあん
シャポーの家は問題がいっぱい
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突飛な話をしてしまう

観念した私はジェーン先生に、頭が変と思われないように言葉を選んで、自分の置かれている状況を説明した。

本当のロザムンドではなくて、実は別の人間の記憶がある事。その別の人間の時にこの世界の事を知っていた事。その記憶の中で算数等の勉強をしていたからある一定のレベルであれば出来る事。

そして、ロザムンドには幽閉される未来が待っており、それを回避したい事。


ジェーン先生は最初は変な顔をしていたが、話が進むにつれて興味深そうに目を見開き、矢継ぎ早に質問をしてきた。

「その記憶ではどんな国でどんな人間だったのか?」

「何故この世界を知っているのか?」

「勉強はどんな事をしていたのか?」などなど、身を乗り出して聞いてくるその姿は、嘘と言い切られてしまう恐怖を打ち消した。

特に私がやっていた『会社員』についてをとても興味深そうに聞いていた。

「なんて素晴らしいんだろう!その世界なら、女性も普通に働けるんだね!」

そう言って手を叩いていた。

文官をしていたらしいジェーン先生だが、どうやら色々あったらしい。

勉強に関しては、鞄から本を取り出すと「ちょっとこれ解いてくれるかい?」といって連立方程式のような式が書かれたページを開いていた。

そして、『何故この世界を?』という質問に対しては、一瞬悩んだ。ゲームと言う物を上手く説明出来る気がしなかった。

「なんて言ったらいいか・・・架空の国で登場します」

「架空の国?小説みたいなものかな?!」

「そうですね、架空世界の物語です。分岐点があって、誰と接点を持つのかどんな選択をするかで結末が変わります」

「ほうほう。・・・わ、私も出てくるのかな?」

そう言って少し顔を紅潮させていた。しかし、ストーリーは私が大人になってからだと伝えると、あからさまにがっかりした顔をしていた。


「うーん。凄く面白いね。本当かどうかを確かめる術はないけれど、今聞いた話を踏まえるとテスト結果に納得がいくねぇ。それにこの難しい式を解く事が出来る事や、話し方が歳にそぐわない点も理解出来るね。ただ、おかしな点もあるね。まず第一に小説の登場人物だとすると、そこに登場しない人間には出会わないんじゃないかな?だって存在しないんだから。

次にこの世の中の事なんだけど、そもそも我が国には『後宮』の制度はないんだ。王様も王妃様もそう言った事はお嫌いだ。大体適齢期になって婚約者を決めて、その人と結婚されている。

3つ目として、君はこの侯爵家の唯一の跡取りだ。その跡取りがお妃候補になってしまうとこの家はどうなってしまうんだい?アリアーデの家の子が継いでいるのかなぁ。」

「その辺りは書かれていません。ただ、ロザムンドの人間関係はとても希薄です」

私の回答を聞くと、先生は顎に人差し指を掛け考えながら、メアリをちらりと見た。

「今日しか見ていないけど、私が見る限り、アリアーデやメアリ達が君を放っておく事はなさそうだけどねぇ」

「勿論です。私はクビにされても付いて行きます。ただ、モーリー夫人が何かをしたのならそばにいられなくなっている可能性はございます」

メアリは大きく首を縦に振り下ろした。

「モーリー夫人の事は出てきませんが、おそらく、ストーリーが始まるまでの10年程の間にこの家は完全に名前だけになっていくんだと思います。それにその世界の『ロザムンド』は自分の周囲の人間と交流をしていなかったようです」


それから、ジェーン先生は『合点がいった』と人差し指を立てた。

「最後に、貴方は侯爵家の人間だ。いくら何かあったとしてもそう簡単に幽閉なんてできないよ。この国の身分制度は厳しいからね。とはいえ、あなたが王宮から逃げる理由もそれが原因かな?」

「うっ・・・」

私はまた、しどろもどろになってしまう。

とそこへメアリがお茶をテーブルに置いた。

「レディ・ジェーン、少々休憩をさせてください。お嬢様がお疲れです」

ジェーン先生は懐中時計を取り出して、時間を確認すると、メアリの提案を受け入れてくれた。

「ああ、すまないね。もう2時間もこうして話をし続けているようだね」


カップと一緒にメアリは簡単なお菓子を持って並べていく。

相変わらず薄い紅茶であったが、この休憩に生きながらえたような心地がする。ジェーン先生はお菓子を加えながら、鞄の中から封筒を取り出した。

「そうそう、これを預かって来たんだ」

と、私に渡した。

差出人の名前を見ればギルからである。そう言えばもう1週間以上経っていたのだ。封筒の厚みに、私とメアリは2人の血の気が引く。きっとその感情が露骨に出ていたのだろう、ジェーン先生が少し慌てたように声を出した。

「な、なにかマズいもの持って来ちゃったかな」

「い・・・いいえ」

「ロザムンド、顔が引き攣っているよ」

苦笑され、私も苦笑を返した。

ずしりとくる重みに開けるのが怖い。

「・・・さっきの話に戻ってしまうけど、ギルフォード王子もその小説に出てくるのかい?」

「メインじゃないですが、出てきます。私ーーロザムンドとの接点はないハズなんですが何故か今とても興味を持たれています」

「接点がないなら問題ないんじゃないの?」

「他のご兄弟は接点が十分あって、それが幽閉につながるんです。理由はよくわからないですけど・・・」

分からない分からない、とジェーン先生は首を左右に振りながらカップを口元に持っていった。

私はとりあえず中を見ないと、とメアリにレターカッターを持って来てもらうと、いくらか震える手でその封を開ける。

10枚程の便せんはずしりとした重みがあった。

そして丁寧な文字でびっしり何か書いてある。ーーが、達筆すぎて全然読めそうもなかった。私は不敬かとも思いながら、ジェーン先生に読んでもらう事にしたのだった。

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