学力テストで分かる浅はかさ
「なるほど。なるほど、なるほど、なるほどね〜」
ジェーン先生は部屋に着くとすぐに自身の鞄の中から、用意していた何枚かの紙を渡してきた。それはテストの様で、『文字を書いてみましょう』だの『自分の名前を書いてみる』、『知っている単語を10個』『文章を書く』『簡単な計算問題』『この国の歴史』と言った内容だった。
紙を渡された時、そばにいたメアリがハラハラした表情をしていたが、大丈夫だと目で伝える。
ここで嘘をつく事も考えたが、国語に関してはこの世界の文字に関しては王宮でギル達に学んでいたし、その事はきっと耳に入っているだろうから出来る限りの事をした。
それに対して、歴史に関しては全部白紙にした。実はゲームの内容で知っている部分もあったが、何処までが子どもの知っている範疇か分からなかったからだ。
その結果を採点しながらジェーン先生は一人納得したようフムフムと言っている。
「ロザムンド、『文字から教えてくれ』って言われていたけど文字はきちんと出来ているね。単語も・・・まぁ完璧って訳ではないけどある程度知っているようだね。で、気を悪くしたら申し訳ないけど、私は嘘が苦手だからはっきり言うね。貴方は文法が間違っている。おしゃべりしている分にはあまり問題はないと感じていたけど、書いてみるとはっきり分かる」
「やっぱりひどいですよね・・・」
内心で万歳をしながら、しょんぼりした風を装ってそう返した。ボロボロであれば当面王宮へ行かなくて良いから悪い結果は願ったりだ。
「う〜ん、酷いって言うよりも別の国の言語に置き換えて書いているみたいだね。ーーほらここを見てご覧」
ジェーン先生はそう言って私が書いた一文『私はクッキーが好き』と書いた文を指差した。
「主語『私は』が来て次に名詞『クッキー』がきて、動詞『好き』が来てる。普通は『主語、動詞、名詞』になるわけだ。しゃべっている時はそうしているだろう?でも書くときは全部先に言ったような順序になってる。他の文章も同じような順序になってるから、まるで別の国の文法を、この国の言語を使って書いているようだよ」
するどい指摘にギクっとなる。文章の書き方まではギル達に習わなかったので、話し方が通じているのだから話しているように書けば良いと思っていたが、どうやら私の話し言葉は翻訳されているらしい。ーーだから文字が分かっても本を読むのが大変だったのか。
今更分かった所で遅いけれど。
私の焦りに気づいてるかいないのかは分からないが、ジェーン先生は続ける。
「それに現在形、過去形、大過去、未来形もなくて全部現在の書き方だ。これは、昔教えた異国から来た子が同じ間違いをしていたよ。ーーで、私が不思議に思ったのはロザムンドはこの国の生まれなのに、そして周りもこの国の人間なのにどうしてこんな間違いの仕方になるんだろう?ってこと」
「適当に書いているうちに・・・」
「そうかい?ちなみに、算数に関しては満点で歴史は白紙。ーーーどこかで算数だけ習ったのかな?ちなみに異国の子も算数に関しては出来てたんだ。数字は共通だからね」
算数は1足す1レベルから、せいぜいかけ算割り算くらいだから出来ても問題ないと踏んでいた。
後悔先に立たず、万事休すだ。
口ごもっていると、気を利かせたメアリが間に入る。
「お嬢様は、当家の状況を考えて下さっておいでです。きっと独学で学ばれたのでしょう」
「本が読めないのに?あなた達が教えたのかい?」
「そ、それは・・・」
メアリの助け舟も虚しく、ジェーン先生は私が答えるのを待っていた。
腿の上辺りのスカートの裾をギュッと握り、言ってしまおうか、はぐらかすかを迷う。
「ロザムンド、私は別にあなたを嘘つきと言いたい訳じゃない。単純に不思議で、失礼な物言いになるけど、『好奇心』から聞いているだけなのよ。まぁ、会って数時間の人間を信用しろって言うのも無茶な話だけどさ。安心して良いよ、私は噂話をする知人がいないからもし何か隠してるんなら心配しなくて良い。メアリにも席を外してもらうようにするよ」
「伯母さまは?」
「ん?アリアーデは確かに友人だね。でも家庭教師たる者、友人と生徒なら生徒を優先するよ。犯罪とかじゃなければね」
スカートを握っていた両掌が汗ばんでいたのを、そっと拭い、私は観念して自分の事を話し始めた。




