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【第7話】生徒会長の極秘検診と崩壊する理性

翌朝。朝靄に包まれるアルカナム魔法士官学校・生徒会執務室。


重厚なオーク材の扉が閉じられ、部屋の中は完全な密室と化していた。


「……これより、未登録助手『タツヤ』の身元調査および精密身体検査を開始します。ローゼンベルクさん、あなたは退出しなさい」


「な、なんでよ!? 私が主治医として立ち会うべきだわ!」


抗議するシャーロットだったが、シルヴィアの冷徹な一瞥に射貫かれ、あえなく撃沈した。


「生徒会令に基づき、国家安全保障上の理由による単独聴取です。……異論は認めません」


ガチャン、と重い錠前が下りる音。


部屋に残されたのは、高級な革張りソファに座らされた俺と、執務デスクの前で凛と腕を組む生徒会長シルヴィアの二人だけだった。


(なお、影の中に潜むレンだけは、天井の隅から気配を消して息を殺している)


「……さて」


シルヴィアはゆっくりと歩み寄り、デスクに両手をついて俺をのぞき込んだ。


一見すると、完璧な鉄の意志を持つ生徒会長。

だが——俺の鼻は誤魔化せなかった。彼女の指先がかすかに震え、制服の胸元が浅く激しい呼吸で上下している。


(やばい……隠蔽の指輪をつけてるのに、距離が近すぎて完全に匂いが届いてる……!)


「フードを取りなさい。それが最初の命令です」


「……はい」


ここで逆らえば即座に拘束される。俺は覚悟を決め、ゆっくりとフードを後ろへ滑らせた。


ふわりと露わになった、黒髪と、男子高校生特有の無骨な骨格、そして男の素顔。


「っ……!?!?」


シルヴィアの息が止まった。


彼女の氷のような青い瞳が、信じられないものを見たかのように大きく見開かれる。


その白い頬が、まるで熟したリンゴのように、みるみるうちに根元から真っ赤に染まっていく。


「あ……あ……っ」


「あ、あの……生徒会長?」


「喋らないで!!」


シルヴィアは咄嗟に両手で自分の顔を覆い、後ろへタタタッと二、三歩飛び退いた。


「な、何なのその声は……!? 低くて……重くて……頭の奥のほうがジンジン痺れるような……! それに、なんなのその顔立ちは!? 顎のラインが……肩幅が……女子(わたしたち)と全然違うじゃない!!」


「いや、男だから当然なんですけど……」


「『男』ですって……!? 冗談はやめなさい! 男など100年前に死に絶えた幻の存在……! あなたは、我がグランベル聖王国を混乱に陥れるための新種の魔導生物か何かなのね!?」


「魔導生物扱い!? 俺は普通の人間ですよ!」


「だったら証明しなさい!」


シルヴィアは涙目になりながら、腰のレイピアの柄に手をかけた。


「私自ら……あなたの全身を『触診』して、骨格と筋肉の構造を確かめます! 服を……服を脱ぎなさい!!」


「なんで触診で服脱ぐんだよ!!?」


「当たり前でしょう! 衣服の上からでは正確な解剖学的データが得られません! さあ、上着を脱いで、その……胸板と腹筋を見せなさい!」


理由をつけて脱がせたいだけだろそれ!!


シルヴィアは必死で「これは生徒会長としての公務である」という顔を作ろうとしているが、その瞳は完全に潤み、息は荒くなり、完全に男のフェロモンに脳を焼かれかけていた。


彼女はプルプルと震える手で、俺の学ランのボタンへ手を伸ばしてくる。


「待ってください生徒会長! 俺……俺には重度の『女性アレルギー』があるんです!」


「……は?」


シルヴィアの手が止まった。


俺はとっさに、一世一代の大嘘をでっち上げた。


「俺は……女性に肌を触られたり、服を脱がされたりすると、体内の魔力が暴走して周囲数百メートルを吹き飛ばす爆発を起こす体質なんです!」


「な……なんですって……!?」


「だから俺に触れると……学園全体が吹っ飛びますよ!?」


「そ、そんな危険な体質……聞いたことがありません……!」


シルヴィアは動揺し、差し伸ばした手をピタリと止めた。


ふぅ、これでなんとか時間稼ぎを——


「……ふふ」


突然、シルヴィアが低く妖しい微笑みを浮かべた。


「? 生徒会長……?」


「試しているのですね……私を」


「は?」


シルヴィアは決意を秘めた瞳で俺をじっと見つめ、一歩、また一歩と近づいてきた。


「私はグランベル聖王国の第一王女。民を守るためなら、自らの身を危険に晒すことなど造作もない……。もしあなたが爆発するというのなら、この私が……私自身の体でその爆発を受け止め、あなたを鎮めてみせます!」


「いや理屈がおかしい! 爆発したら死ぬんだよ!?」


「覚悟はできています! さあ……私を爆発させなさい!!」


「爆発させなさいってなんだよぉぉぉっ!?」


狂気!! 真面目すぎる人間が極限まで追い詰められると、謎のロジックで暴走する!!


シルヴィアは瞳を蕩けさせながら、俺の胸元へダイブするように飛びかかってきた!


「待てタツヤ! 爆破はさせん!」


バサッ!!


天井から影が舞い降り、俺とシルヴィアの間に一瞬で割り込んだ。くノ一のレンだ!


「なっ……何者!?」


「タツヤの身と貞操を守る影、レン。……生徒会長、貴様の企みもここまでだ」


レンは短剣の背でシルヴィアの手首を軽く叩き、彼女を俺から引き離した。


「忍び……!? なぜ生徒会執務室に侵入できたの……!?」


「タツヤに指一本触れさせん。……行くぞタツヤ!」


レンが俺の腰を抱え上げ、窓ガラスに向かって跳躍した。


「ちょっと待ってレン! ここ三階——」


ガシャーン!!!!


「逃がしません!!」


なんとシルヴィアは、理性を失いかけた顔のまま、破られた窓から俺たちを追ってそのまま飛び出してきた!


三階の高さから庭園へ飛び降りながら、剣を抜いて叫ぶ生徒会長。


「私に……私にその『爆発』を経験させなさいぁぁぁっ!!」


「だから意味が変わってるんだよぉぉぉ

っ!!」


学園潜伏初日。


厳格なはずの生徒会長が真っ先に狂惑し、俺の

貞操をかけた大追跡劇が校庭の真ん中で開幕してしまった——!

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