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【続7話】 乙女たちの結集と、創世への旅立ち

不夜城ラグナロクの象徴『紫電楼』の最上階。


崩れ落ちる天井と激痛のような爆音の中、俺はヴェロニカのしなやかな腰を引き寄せ、彼女の身体を横抱きにした。


「ふふ……本当に男らしくて、強引な坊やね。嫌いじゃないわ♡」


ヴェロニカは甘い吐息を俺の首筋に吹きかけながら、楽しそうに俺の首に腕を回す。


「ヴェロニカ、喋ってないで舌を噛まないようにしてろ! 脱出するぞ!」


紫電楼の周囲を埋め尽くすのは、世界過激派連合軍の数十万にも及ぶ男たちの軍勢だ。彼らは黒鉄の装甲車や魔導砲を並べ、不夜城から逃げ出そうとする俺たちを「女を渡せ!」と狂乱の叫び声を上げながら包囲していた。


『ハルトさん、みなさん……! 聞こえますか!? エリア・ゼロからの遠隔支援を開始します!』


通信機から流れてきたのは、エリア・ゼロで待機しているクロエの愛らしい声だった。彼女の祈りの魔力が空間を越えて俺たちの身体を包み込み、全身の疲労が一気に吹き飛んでいく。


「助かるよ、クロエ! 5人目の乙女・ヴェロニカの保護に成功した! これから合流する!」


『はい……っ! お待ちしています、ハルトさん!』


「さあ、豚どもを蹴散らして脱出しますわよ!」


セシリアが前に出ると、その指先から眩いばかりの純白の光柱が放たれた。


「極光殺界(ルミナス・ブレイザー)ッ!!」


何千もの反乱兵となぎ払う極光の濁流。それに続き、軍総督ヴァルキリアが重厚な大斧を地面に叩きつけ、凄まじい衝撃波で前方の装甲車群を木っ端微塵に粉砕した。


「ハハッ! 私の目の前を塞ぐ不敬者どもめ、まとめて肉塊となれッ!」


さらに、影のように地を這うレン華が、神速の刃で敵の指揮官たちの首を次々と落としていく。


「……ハルトの邪魔は、させない」


タイプも出身も異なる女の子たちが、俺を中心に完璧な連携を見せ、数十万の包囲網に一点突破の風穴を開けていく。


「な、なんだあのバケモノどもはぁぁッ!?」


狂乱していた男たちが、恐怖で次々と武器を捨てて逃げ惑い始めた。その隙を逃さず、ヴェロニカが俺の腕の中でくすっと妖艶に微笑む。


「ふふ、最後の仕上げよ。……不夜城の男たち、聞きなさいな♡」


ヴェロニカが指を鳴らすと、彼女が街中に仕掛けていた魔導音声が不夜城全体に響き渡った。


「わたくしは今から、この相沢ハルトくんのものになりますわ。命が惜しい豚どもは、連合軍の残党を後ろから撃ちなさい。生き残った者には……わたくしの『投げキッス』くらいはプレゼントしてあげてもいいわよ?」


「「「うおおおぁぁぁぁッ!! ヴェロニカ様のために撃てぇぇぇッ!!」」」


その一言で、不夜城に残っていた数万の傀儡の男たちが一斉に連合軍の背後へ襲いかかった。


「相変わらず恐ろしい女ですわね……言葉一つで男を狂わせるなんて」


セシリアが呆れ顔で吐き捨てる。


「ククッ、だが見事な手際だ。ハルト、今だ! 魔導艇へ飛び乗れ!」


「了解ッ!」


崩落する紫電楼の屋上から、俺たちはアイリスの操縦する高速魔導艇へと一気に飛び移った。


魔導艇は激しい爆炎を上げる不夜城を背に、極北の隠れ家『エリア・ゼロ』へ向けて全速力で離脱したのだった。




安全圏に入った魔導艇のキャビン。


静かなエンジン音が響く室内で、ヴェロニカはゆっくりと俺の隣に腰掛けた。スリットから伸びる艶やかな生脚が、俺の太ももにそっと触れ合う。


「ふぅ……命拾いしちゃったわね。ハルトくん、助けてくれてありがとう♡」


ヴェロニカはそう言うと、俺の首にそっと手を回し、不意打ちのように俺の頬へと濃厚な唇を押し当てた。


んちゅ……。


甘い質感と、熟した果実のような香水が俺の理性を揺さぶる。


「なっ……何してるんだ、ヴェロニカ!?」


真っ赤になる俺を見て、ヴェロニカは満足そうに口元を歪めた。


「あら、命の恩人へのほんのお礼よ? それとも……口づけの方がよかったかしら?」


「ち、ちょっとお待ちなさいな不夜城の女王ッ!」


セシリアが顔を真っ赤にして割り込んできた。


「ハルトに気やすく触れないでくださいます!? あなた、年上だからって調子に乗っていらっしゃいませんこと!?」


「ふふ、あら可愛いセシリアちゃん。嫉妬かしら? でもね、欲しいものは自分から奪いに行かないと、大人の女に全部取られちゃうわよ♡」


「な……ッ! 誰が嫉妬などッ!」


「ハハハッ! 賑やかで良いではないか!」


ヴァルキリアが豪快に笑い、レン華は静かに俺の背後に寄り添って「……ハルトは、私の主」と呟く。


今まで孤独に戦ってきた乙女たちが、俺の周りで少しずつ表情を柔らかくしていく。その光景に、胸の奥が温かくなるのを感じていた。


数時間後。


隠された秘境『エリア・ゼロ』の大聖堂。


扉が開くと、そこには一人の少女が待っていた。


最年少の乙女——【森の聖女】クロエだ。


「ハルトさん……! みなさん……っ!」


クロエは溢れ出る涙を拭いもせず、俺のもとへ駆け寄ると、力いっぱい胸に飛び込んできた。


「無事で……無事でよかったです……! お帰りなさい、ハルトさん……ッ!」


「ただいま、クロエ。約束通り、全員無事に連れて帰ってきたぞ」


俺はクロエの頭を優しく撫で、しっかりと抱きしめ返した。一番の安らぎである少女、その温もりに心が満たされていく。


クロエは俺の胸から顔を上げると、背後に立つ4人の乙女たちに向かって深々と頭を下げた。


「セシリアさん、ヴァルキリアさん、レン華さん、ヴェロニカさん……ようこそ、エリア・ゼロへ!」


【森の聖女】クロエ(16歳)。

【聖皇国の美姫】セシリア(18歳)。

【黒鋼都市の軍総督】ヴァルキリア(20歳)。

【影のくノ一】レン華(17歳)。

【不夜城の支配者】ヴェロニカ(26歳)。


16年前の『紅の沈黙』により、女性が絶滅したこの絶望の世界。


その世界に遺された「最後の5人の乙女(ラスト・ヴィーナス)」全員が、ついにこの場所に一堂に会したのだ。


アイリスが静かに一歩前へ出ると、無機質ながらどこか誇らしげな声を響かせた。


「報告。世界に遺された5人の乙女、全員の保護・結集を確認しました。これより、本拠地『男神の楽園(エデン)』の正式運用を開始します」


5人がそれぞれの瞳に決意と愛の光を宿し、俺を見つめてくる。


「世界中の男たちが敵になろうと関係ない。俺は……お前たち5人全員を絶対に護り抜く! そして、この絶望した世界を変えてみせる!」


ハルトの誓いに、5人の乙女たちが微笑み、力強く頷いた。


乙女たちを巡る奪還劇はここに完結し、物語はいよいよ5人の乙女たちとハルトが心身ともに深く結ばれ合い、真の愛と絆を育む創世の章へと突入するのだった!


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