【続1話】 荒野の突破戦と、甘き手当ての夜
「目標、前方の魔導戦車隊二十四門! 砲撃が来るぞッ!」
荒野の赤土を巻き上げ、地鳴りのような咆哮を上げる巨大な黒鉄の重戦車群。
その巨大な主砲が一斉に俺たちへ向けられ、砲口にギラギラとした朱色の魔導光が収束していく。
「射てぇぇぇッ! 小僧は肉片に変えろ! 女性体には傷をつけるなよ!」
黒鋼公国の指揮官の怒号と共に、空が引き裂かれた。
二十四発の魔導榴弾が、空気を焼き焦がしながら俺たちの頭上へと降り注ぐ。一発だけでも小山を吹き飛ばす威力の魔力凝縮弾。それを前にして、俺を左腕で抱きしめているクロエが「ひやあぁぁッ!?」と悲鳴を上げて俺の首に強くしがみついてきた。
「ハルト様、戦術領域フルドライブ。迎撃シールドを展開します」
俺の背後で、アイリスの白銀の髪が逆立つように舞い上がった。
彼女の背中から光の翼のようなホログラムバリアが扇状に広がり、俺たちの頭上を隙間なく覆い尽くす。
ドカアァァァァンッ!! ドォン、ドォォォンッ!!
爆発の衝撃波と炎の嵐が荒野を包み込む。土煙と赤熱した鉄片が激しく飛び散るが、アイリスが展開した古代の幾何学障壁はピチピチと青い火花を散らすだけで、傷一つ負わない。
「バ……バカな!? 魔導戦車隊の一斉砲撃を、たった一機の防護壁で受け止めたというのか!?」
「ひるむな! 砲撃が効かないなら突撃だ! 囲んで叩き潰せ!」
爆炎の隙間から、数千の重装甲歩兵たちが槍や大剣を構えて波のように押し寄せてくる。
下卑た笑みを浮かべ、世界にたった5人しかいない16歳の乙女・クロエを奪おうとする男たちの群れ。
「アイリス、シールドを解除しろ。……あいつらに、男神の血の味を教えてやる」
「了解。ハルト様、過度な魔力解放による身体への負荷にご注意を」
障壁が光の粒子となって消え去ると同時に、俺は右手の漆黒の大剣に、体内の全魔力を流し込んだ。
曾祖父・相沢タツヤから脈々と受け継がれてきた、常人離れした真なる神の魔力。刀身が黒銀色の高密度なオーラを纏い、バリバリと空間を歪ませる。
「旋風奥義——『天破・断空斬』ッ!!」
大地を深く踏み込み、大剣を横一閃に振り抜く。
ズォォォォォォォンッ!!
それは剣技というより、巨大な台風だった。
黒銀の衝撃波が扇状に荒野を削り取りながら殺到し、押し寄せていた数千の重装兵たちを、まるで羽虫のようにまとめて空へと吹き飛ばしていく。
「ぐはぁぁぁぁッ!?」
「なんだこの魔力はぁぁぁッ!?」
さらに衝撃波は止まらず、後方に控えていた魔導戦車隊の厚い特殊装甲すらも紙くずのように切り裂き、爆発の連鎖を引き起こした。
チュドォォォォンッ! ズドオォォンッ!
たった一撃。
荒野を埋め尽くしていた黒鋼公国の最精鋭部隊は、完全に壊滅し、ただの煙と灰の山へと変貌していた。
「……ふぅ……」
大剣を背中の鞘へと滑り込ませると、俺の腕の中でクロエがぽかんと口を開けて呆然としていた。
「す……すごい……。ハルトさん……たった一撃で、あんな巨大な軍隊を……」
「これが、100年前に世界を救った曾祖父さんの力……男神の血の力だよ。さあ、敵の増援が来る前にここを離れるぞ。アイリス、次の潜伏ポイントは!?」
「はい。ここから北西三キロの地点に、タツヤ様がかつて使用された『古代地下シェルター・第三秘匿点』が存在します。追撃を振り切るには最適な場所です」
「よし、走るぞ!」
俺はクロエをしっかりと抱き直すと、アイリスと共に爆煙が立ち込める荒野を疾風のごとく駆け抜けた。
荒野の崖下に隠された、苔むした重厚な鋼鉄の扉。
アイリスが認証コードを入力すると、静かな機械音と共に扉が開き、俺たちは無事に地下シェルターへと滑り込んだ。
「ふぅ……ここまで来れば、ひとまず安心だな」
暗く静かな地下室の灯りを点けると、そこには100年前の家具や魔法陣が当時のまま保存されていた。埃っぽいものの、水や魔力鉱石の備蓄は十分に機能している。
俺はクロエを柔らかいソファへとそっと下ろした。
「ハルトさん……! あ、あの……腕……っ!」
ソファに座ったクロエが、青ざめた顔で俺の右腕を指さした。
「ん? ああ……」
見ると、先ほどの大技を放った反動と、戦車隊の破片を庇ったせいで、俺の右腕の袖が破れ、赤い血がたらりと伝っていた。激戦の最中は興奮していて気づかなかったが、皮膚が大きく裂けている。
「ハルト様。傷口は深さ約八ミリ。感染症のリスクがあります。手当てが必要です」
「大丈夫だよ、これくらい……」
「ダメですっ!!」
おとなしいクロエが強い声で叫び、俺の前に立ちはだかった。
大きな栗色の瞳に涙を溜めながら、俺の手をぎゅっと両手で包み込んでくる。
「私のために……私を護るために怪我をしたのに、『大丈夫』なんて言わないでください……! 私、治癒師なんです……『森の聖女』なんて大層な名前はいらないけれど……ハルトさんの傷くらい、治させてください……っ!」
クロエの必死な表情に、俺は思わず毒気を抜かれた。
「……分かったよ。お願いできるか、クロエ」
「はいっ……! すぐに手当てします!」
クロエは俺をソファに座らせると、自分は膝立ちになって俺の右腕を胸元へと引き寄せた。
「ふぅ……『天に咲く野の息吹よ、傷つきし身体に安らぎを』……」
クロエが小さく詠唱を唱えると、彼女の小さく柔らかな両手から、温かく透き通るような緑色の光が溢れ出してきた。
その光が俺の傷口を包み込むと、ズキズキとしていた痛みが瞬時に消え去り、引き裂かれた皮膚が細胞レベルでみるみる塞がっていく。
「すごいな……一瞬で痛みが消えた。さすがは『聖女』だ」
「えへへ……私にできるのは、これくらいですから……」
照れたように微笑むクロエ。だが、手当てのために彼女の身体が極限まで接近していた。
ふわりと漂う、彼女の髪から匂い立つ甘く可憐な野の花の香り。
薄手のブラウス越しに伝わってくる、16歳ならではの柔らかく小ぶりながらも確かな膨らみを持つ胸の感触。そして、息がかかるほど近くにある、薄桃色の小さな唇。
「あ……」
傷が完全に治癒したあとも、クロエは俺の腕を抱きしめたまま、離そうとしなかった。
彼女の顔がブワッと真っ赤に染まり、長いまつ毛が緊張でピクピクと揺れている。
「クロエ……? 傷、もう治ったぞ?」
「あ……あの……わかっています……わかっているんですけれど……っ」
クロエは上目遣いで俺を見つめ、トロンとした瞳で熱い吐息を漏らした。
「私……ずっと、男の人たちが怖かったんです。16年前に女の子が生まれなくなってから……街の男の人たちも、国の人たちも……みんな私を見る目がギラギラしていて……『俺の女になれ』とか『国のために子供を産め』とか……触られるたびに、気持ち悪くて、恐ろしくて……っ」
彼女の小さな身体が、過去のトラウマを思い出してキュッと縮こまる。
俺は思わず、左手で彼女の頭を優しく撫でてやった。
「もう大丈夫だ。俺が絶対にそんな真似はさせない」
「はい……っ。ハルトさんに抱きしめられた時……私、初めて気づいたんです。男の人に触られて……こんなに胸がドキドキして、温かくて……幸せな気持ちになれるなんて……」
クロエは自ら俺の膝の上に乗り上げると、俺の首元に小さく細い腕を回してきた。
ぴたりと密着する二人の身体。彼女の柔らかい太ももが俺の腰を挟み込み、熱い鼓動が服越しにダイレクトに伝わってくる。
「クロエ……ッ!?」
「ハルトさん……私……ハルトさんになら……全部あげたいです……っ。私の身体も……心も……全部……」
「っ……!」
16歳の可憐な乙女が魅せる、無防備で圧倒的な愛の告白。
16年間、世界中の欲望から逃げ続けてきた彼女が、初めて一人の男性に心と身体を開いた瞬間だった。
彼女の潤んだ瞳と、甘く吐き出される吐息。
俺の理性は、曾祖父ゆずりの男としての本能と共に、激しく熱を帯び始めていた。
「クロエ……本当に、俺でいいのか?」
「ハルトさんじゃなきゃ……嫌です……っ♡ 私を……ハルトさんの本当の『女』にしてください……っ」
俺は彼女の細い腰を引き寄せ、その可憐な薄桃色の唇を、ゆっくりと塞いだのだった。
「んむっ……あむ……っ」
初めて交わす、熱く深いキス。
クロエは一瞬ビクッと身体を強張らせたものの、すぐにうっとりと目を閉じ、小さな舌をぎこちなく俺の口内へと絡ませてきた。
「んふぁ……ハルトさん……唇……すごく熱いです……」
唇が離れると、銀色のツバの糸がうっすらと引き、クロエの顔は真っ赤に熟していた。
俺は彼女の薄手の上着のボタンを一つずつ外していく。
露わになったのは、透き通るような白い肌と、桜色の小さな突起を抱く愛らしい胸の膨らみ。
「あっ…… 見られるの……恥ずかしいです……」
クロエは照れくさそうに腕で胸を隠そうとしたが、俺がその手をとって優しく包み込むと、うっとりと瞳を細めた。
「クロエ、すごく綺麗だ……」
「ハルトさん……優しく……してくださいね……」
俺は彼女の華奢な肩から首筋にかけて、愛おしそうに何度もキスを落としていった。
「あぁっ…… んあぁっ…… そこ……気持ちいいです……」
敏感な肌を刺激されるたびに、クロエの口から可愛らしい甘い悲鳴がこぼれ落ちる。
俺は彼女の小さな秘所へと優しく手を伸ばし、溢れ出る熱い蜜で濡れた蕾を愛でていく。
「はうぅっ……!? あ、ハルトさん……そこっ……何か熱いのが……溢れてきちゃいます……」
「大丈夫だ……力抜いて……」
「んぁっ…… ハルトさん……好き……大好きです……」
二人の情熱が最高潮に達した時、俺は彼女の最奥へと、壊れ物を扱うようにゆっくりと身を沈めていった。
「あぁぁぁぁぁッ……っ♡♡♡」
クロエの口から、歓喜とほんの少しの痛みが混ざった甘い悲鳴が迸る。
世界にたった5人しか残っていない人間の女性。
その最高に密やかで温かい最奥が、逃がすまいと俺を強く、強く締め付けてくる。
「ハルトさん……っ! 私の中に……ハルトさん
が入ってる……」
「クロエ……! 愛してる……っ!」
俺は彼女の華奢な腰を優しく抱きかかえ、ゆっくりと、けれど深く腰を突き動かし始めた。
「んあぁっ……あっ……ハルトさん…… ハルトさんっ……」
部屋の中に響き渡る、クロエの甘い悲鳴と熱い呼吸。
一回腰を振るたびに、彼女の瞳から愛おしさの涙がこぼれ落ち、俺の首元に強くしがみついてくる。
男だらけの滅びゆく世界で交わされる、絶対の絆と愛の契り。
俺たちは夜が深けるまで、何度も何度も互いの身体と心を求め合い、至福の熱を注ぎ込み続けたのだった。
翌朝。
地下シェルターの静かな寝室で、俺は目を覚ました。
腕の中には、幸せそうな寝顔を浮かべ、俺の胸にぴったりと顔を埋めて眠るクロエの姿があった。昨夜の激しい愛の証が、彼女の白い肌の上に可愛らしく散らばっている。
「……ん……っ。ハルトさん……?」
クロエが目をパチパチと開け、俺と目が合うと、一瞬で顔を真っ赤にしてシーツを引っ張り上げた。
「お、おはようございます……昨夜は……私、すごく破廉恥じゃありませんでしたか……?」
「そんなことないよ。めちゃくちゃ可愛かった」
「〜〜〜っ♡♡」
俺が彼女の頭を撫でてやると、クロエは照れくさそうに俺の胸元に再び顔をうずめてきた。
トントン、と部屋の扉がノックされる。
「ハルト様、クロエ様。朝の栄養補給の準備が整いました。また、緊急の情勢変化が確認されましたので報告いたします」
入ってきたのは、相変わらず無表情だがどこか空気の読めるアンドロイド・アイリスだった。
「アイリス、何があったんだ?」
俺はクロエに服を着せながら尋ねた。
「はい。世界に遺された5人の女性のうちの一人……【聖皇国の美姫】セシリア・フォン・ローゼンベルク(18歳)に関する情報です」
アイリスが空中にホログラム映像を展開する。
そこに映し出されたのは、金髪縦ロールの豪華絢爛な髪と、気品あふれる青い瞳を持つ、息をのむほど美しいドレス姿の少女だった。
「聖皇国は、彼女を『神の開帳』と称し、一ヶ月後に全国家の代表を集めた大競売会を開催すると発表しました。彼女を最も高い資金と軍力で落札した国家に、彼女の『所有権』を与えるとのことです」
「なんだと……!? 競売会だと!?」
俺は激憤して拳を握りしめた。人間の一人の少女を、まるで物のようにオークションにかけるだと!?
「はい。セシリア様は現在、聖皇国の地下大聖堂に厳重に軟禁されています。周囲には聖皇国の聖騎士団数千が配置されており、奪還は極めて困難です」
「ハルトさん……っ! セシリアさんを救けてあげてください……! 私と同じように、あんな酷い目に遭わせちゃダメです……っ!」
クロエが胸元で拳を握りしめ、必死な瞳で俺を見つめてくる。
「ああ、もちろんだ!」
俺は大剣を手に取り、力強く立ち上がった。
「競売会なんてバカげた催し、俺がぶっ潰してやる! 待ってろよ、セシリア姫!」
クロエを無事に保護した俺たちの次なる目的地は、巨大宗教国家・聖皇国!
世界に散らばる5人の乙女を巡る奪還の旅は、さらに激しさを増して加速していく——!




