【レンEND】 〜影の忍びが仮面を捨てる夜、ただ一人の女として受ける愛〜
世界を揺るがした男神争奪戦、そして世界を覆っていた「男が生まれない呪い」の解呪。
各国が『相沢タツヤ』という唯一無二の存在を手に入れようと権謀術数を巡らせる中、俺が最後のパートナーとして選んだのは、どのような苦境においても俺の影となり、その身を盾にして守り抜いてくれた忍びの少女——レンだった。
表舞台の華々しい結婚式やパレードを、レンは「影の身には柄じゃない」と断った。そのため、俺たちは学園都市の静かな離れにある、竹林に囲まれた純和風の屋敷で二人だけの密やかな夜を迎えることにしたんだ。
静まり返った和室。
行灯の柔らかな灯りが、畳の上にゆらゆらと淡い陰影を落としている。
「……タツヤ。酒、もう一杯飲むか?」
そう言って徳利を差し出したレンの声は、どこか硬く、微かに震えていた。
いつもの漆黒の忍び装束ではなく、今夜の彼女はしなやかな手触りの薄紫色の絹浴衣を着ている。普段は黒い面布や髪留めで隠されている黒髪が、肩へと美しく下ろされ、首筋の白さが生々しく際立っていた。
「ありがとう、レン。でも、そんなに肩肘張らなくていいんだぞ?」
俺が微笑みながらお猪口を差し出すと、レンは「ん……」と短く頷き、緊張した手つきで酒を注いだ。
「いや……別に緊張なんてしてない。……嘘だ。すごく緊張してる。ずっと影として『気配を殺す』ことしか教わってこなかったから……こうしてタツヤと二人きりで、妻としてどういればいいのか……全然分からないんだ」
彼女は伏し目がちに呟き、膝の上でぎゅっと浴衣の裾を握りしめた。
「どうしていればいいなんて決め手はないよ。俺とレンの夫婦なんだから、レンのままでいいんだ」
俺がお猪口を置き、彼女の手の上にそっと自分の手を重ねると、レンの肩が跳ねるように小さく揺れた。伝わってくる彼女の手は驚くほど冷たく、そして繊細だった。
「レン。俺が選んだのは、最強の護衛としての忍びじゃない。俺の隣で笑って、一緒に生きてくれる……一人の女の子としてのレンなんだ」
「っ……タツヤ……」
レンの黒真珠のような瞳が、揺れる灯火に照らされて光る。
「私は……日陰に生きる毒で、ただの刃だ。華やかさも、女らしさもない。こんな私を妻にするなんて、タツヤにとって何の得もないだろ……」
「得とか損とか、そんなのどうでもいいんだよ。命がけで逃げ回っていた時、俺が一番安心できたのは、レンが隣にいてくれた時だった。レンのその手が、俺を何度も温めてくれた。だから、俺のこれからの一生はレンにあげたいんだ」
俺の真っ直ぐな言葉に、レンの瞳からぽろりと一粒の涙が零れ落ち、畳に小さな輪を作った。
「タツヤ……。忍びに生まれた私に、そんな言葉……ズルいぞ……」
忍びとしての無感情な仮面が、音を立てて崩れ去っていく。
レンは意を決したように静かに立ち上がると、帯に手をかけた。
さらり、と結び目が解ける音。
薄紫色の絹の浴衣がゆっくりと肩から滑り落ち、畳の上へと重なり合う。
月光と行灯の淡い光に照らし出されたのは、あまりにも白く、そしてどこか儚げな彼女の素肌だった。
華奢でありながら、過酷な鍛錬によって無駄な肉を削ぎ落とされた美しいくびれ。そして、可憐に主張する柔らかな胸のふくらみ。だが、その滑らかな肌のあちこちには、俺を守るために負った古い刃の傷跡や擦り傷が、小さな白い筋となって残っていた。
「……見苦しいだろ」
レンは胸元を両腕で隠すように抱きかかえ、恥ずかしそうに身体を縮こまらせた。
「身を守るための傷とはいえ……傷だらけの身体だ。タツヤの肌に触れるには、あまりに汚いんじゃないかって……」
「汚いなんて、絶対に言うな!」
俺は立ち上がり、レンの華奢な身体を正面から強く抱きしめた。
「ひゃうっ……!? タ、タツヤ……っ!?」
直接肌と肌が触れ合う。
ひんやりとしていた彼女の肌が、俺の体温を吸い上げるように一瞬で熱を帯びていく。俺の手は彼女の背中に回され、そこに残るいくつもの傷跡を愛おしむように撫で上げた。
「この傷は全部……俺を生かすためにレンが戦ってくれた証だ。俺にとっては、どんな宝物より綺麗で、愛おしいよ」
「あ……あぁ……っ」
俺の言葉が彼女の心に届いた瞬間、レンの手が俺の背中に力強く回された。
彼女は俺の胸元に顔を深く埋め、声を押し殺すようにして泣き出した。
「タツヤ……タツヤ……っ! ずっと……ずっと好きだった……っ! 影として死ぬ覚悟はできてたのに……タツヤに抱かれたいなんて不遜な気持ち……ずっと胸の奥に隠してたんだぞ……っ!」
「もう隠さなくていいんだ、レン。今夜は……俺の全部を受け止めてくれ」
「 私を……タツヤの手で、一人の女にして……っ!」
俺は彼女をすくい上げるように抱き上げ、和室の奥に敷かれた真っ白な布団の上へと優しく横たえた。
敷布団の上で髪を散らすレン。
薄桃色に染まった肌、涙で濡れた長いまつ毛、そして熱い呼吸を繰り返す小さな唇。そこにいたのは、主君を守る忍びではなく、愛する男を欲しがる可憐で情熱的な一人の乙女だった。
俺は彼女の上に静かに覆いかぶさり、その唇をそっと塞いだ。
「んむ……っ♡ ……ふあぁ……っ♡」
初めてのキス。
レンの唇は驚くほど柔らかく、そして甘かった。
最初は驚いて目を丸くしていた彼女だったが、俺が優しく何度も唇を重ね、舌を滑り込ませると、彼女もまたおどおどと小さな舌を絡ませてきた。
「んっ……あむ……つ、タツヤ……舌が……熱い……っ♡」
唇を離すと、二人の間に銀色の糸が引いた。
レンは荒い息を吐きながら、うっとりと潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
俺の手が彼女の胸元へと伸び、可憐な胸を優しく包み込んだ。
「あぁっ……!? んあぁっ……♡」
レンの口から、今まで聞いたこともないような甘い悲鳴が漏れた。
彼女の背中が小さく反り上がり、爪先までピーンと緊張で強張る。
「タ、タツヤ……そこは……っ。身体の奥が……痺れる……っ♡」
「嫌か?」
「嫌な……わけないだろ……っ♡ 痛みに耐える訓練は散々やったけど……こんな……甘い感覚……習ってない……っ♡」
彼女の肌はみるみるうちに桜色へと染まり、小さな胸の先端が愛らしく立ち上がっていく。俺がそこを指先で優しく転がし、唇で吸い上げると、レンは頭を左右に振って俺の髪を愛おしそうにかき乱した。
「あっ……♡ あぁぁっ……! タツヤ……私……身体がおかしくなっちゃう……っ♡」
言葉とは裏腹に、彼女の細い太ももは自らゆっくりと開かれ、俺の腰を受け入れる姿勢を作っていた。
密やかに濡れそぼる、彼女の最も神聖で無防備な秘所。
「レン……愛してる」
「私も……私も死ぬほどタツヤが好きだ……っ♡ 私の中に……タツヤの熱を……頂戴……っ!」
二人の鼓動が完全に一つになる瞬間。
俺は彼女の細い腰を強く引き寄せ、静かに、そして深く彼女と繋がった。
「はうあぁぁぁぁっ……っ♡♡♡」
レンの口から、激しい歓喜の悲鳴が迸る。
彼女の体腔は俺を強く締め付け、熱く脈打っていた。忍びとして鍛え上げられたしなやかな身体が、俺を逃がさまいとギュッと抱きかかえてくる。
「っ……レン、きついか……?」
「ううん……ううん……っ♡ タツヤが……私の中にいる……! 影だった私が……いま、タツヤと一つになってる……っ♡」
レンは涙を目に浮かべながら、愛おしそうに俺の首筋に抱きつき、何度も耳元で甘い吐息を吹きかけてきた。
俺は彼女の身体を愛おしむように、ゆっくりと、そして次第に激しく腰を突き動かしていった。
「あぁっ……♡ んっ……くっ……♡ タツヤ……タツヤぁっ……♡」
シーツを掴む彼女の指先。
部屋の中に、情熱的な肌と肌がぶつかり合う音と、レンの甘く淫らな悲鳴が溶け込んでいく。
忍びとしての冷静さは微塵もなく、彼女はただひたすらに快楽と愛の波に飲み込まれ、俺の名前を叫び続けた。
「私を……私を壊してくれ……っ♡ タツヤの女として……生かして……っ!」
「レン……! レン……っ!」
俺たちの情熱は最高潮に達し、深い愛の波が二人の身体を激しく突き抜けた。
「あぁぁぁぁぁっ……っ♡♡♡」
レンの身体が大きく跳ね上がり、俺の背中に爪を立てながら極上の絶頂を迎えた。
二人の体温と情熱が一つに溶け合い、夜の和室には、ただ二人の荒い息遣いと愛の余韻だけが満ちていったのだった。
翌朝。
竹林を抜けて差してくるやわらかな朝の光が、障子を透かして部屋を明るく照らしていた。
ふと目を覚ました俺は、腕の中に確かな温もりと重みを感じた。
隣を見ると、レンが敷布団の上で俺の胸にぴったりと顔を埋め、静かな寝息を立てていた。
乱れた黒髪が真っ白な肌に散らばり、昨夜の激しい情愛の痕跡が、彼女の首筋や胸元に可愛らしく残っている。
(レン……本当に、俺の妻になってくれたんだな)
俺が彼女の柔らかな頬をそっと撫でると、レンの長いまつ毛がピクピクと揺れ、ゆっくりと開かれた。
黒真珠のような美しい瞳が、じっと俺を見つめる。
「……タツヤ」
おはよう、レン。よく眠れたか?」
そう尋ねると、レンは昨夜の出来事を鮮明に思い出したのか、頬をブワッと真っ赤にして、慌てて布団を頭までかぶろうとした。
「ひゃうっ……!? た、タツヤ……! お、おはよう……っ♡」
「こら、逃げるなよ」
俺が布団越しに彼女を強く抱き寄せると、レン
は布団の中からひょっこりと顔を出し、照れくさそうに目を細めた。
「……ごめん。昨夜の自分が……あまりにも恥ずかしくて。忍びのくせに……あんな声出して、タツヤにしがみついちゃって……」
「恥ずかしがる必要なんてないだろ。レンの素直な気持ちが嬉しかったんだ。世界で一番、愛おしい夜だったよ」
俺が彼女の額に優しくキスを落とすと、レンの
瞳にじわっと涙が浮かんだ。
「タツヤ……。私、夢を見てるんじゃないかって……まだ怖いんだ。影として生まれて、使い捨てられるはずだった私が……こんなに温かい朝を迎えられるなんて……」
「夢じゃない。俺がずっと、レンの手を離さないから」
レンは胸の前に手を当て、心底幸せそうに微笑んだ。その笑顔は、かつて仮面で感情を殺していた忍びの面影など微塵もない、世界で一番美しい一人の女性の笑顔だった。
「これからは……陰からじゃなくて、隣でタツヤを守る。……ずっと好きだぞ、私の旦那様」
朝日が二人を包み込む中、俺たちは再び静かに唇を重ね合わせた。
影の時代は終わりを告げた。
これからは光の中を、愛する妻と共に歩んでいくのだ——。




