【シャーロットEND】 〜天才魔導士のツンデレ解消と、解けない愛の魔導契約〜
【黒の結社】との死闘を制し、世界から「男が生まれない呪い」を解除してから数か月。
世界中が『男神・相沢タツヤ』を巡って熾烈な花嫁争奪戦を繰り広げる中、俺が自分の生涯のパートナーとして選んだのは——逃亡劇の最中も、命がけの戦いの中でも、その圧倒的な魔法と秘めた優しさで俺を支え続けてくれた天才魔導士、シャーロット・フォン・ローゼンベルクだった。
学園都市の特区の一角に新設された【中央魔導研究所】の最奥にあるプライベートルーム。そこは、シャーロット専用の研究室兼居住スペースだった。
普段なら怪しい魔導書の山や、妖しく光るフラスコ、怪しげな魔法陣の描かれた紙くずが足の踏み場もないほど散乱しているはずの部屋が、今夜は奇妙なほど綺麗に片付けられていた。
「ふん……別にアンタを迎えるために掃除したわけじゃないわよ。部屋が散らかってると、魔法陣の記述に支障が出るからなんだから!」
腕を組み、ツインテールを激しく揺らしながらフンと鼻を鳴らしたのは、シャーロット本人だった。
普段着ている学園の制服や堅苦しい実験用ローブではなく、今夜の彼女は胸元に可憐なフリルがあしらわれた、シースルーの真っ白なネグリジェを身に纏っている。丸メガネの奥にある琥珀色の瞳は、どこかソワソワと泳いでおり、彼女の白い頬は最初から林檎のように真っ赤に染まっていた。
「わかってるよ。でも、部屋に招いてくれて嬉しいよ、シャーロット」
俺——相沢タツヤは、ソファに腰掛けながら苦笑いした。
「べ、別に招いたわけじゃないわ! これは魔導士としての定期点検! あんたという世界唯一の『男神』の生体魔力数値を、私が……その、筆頭専属魔導士として……ううん、あんたの『たった一人の妻』として永久保証するための手続きなんだから!」
シャーロットは慌てて早口で言い訳を並べ立てると、机の上から一枚の羊皮紙をバッと取って、俺の目の前に叩きつけた。
「ほら! 講釈はいいから、これにさっさとサインしなさい!」
「これって……婚姻届(魔導契約書)……?」
羊皮紙には、精巧な金色の魔法陣とともに、俺とシャーロットの名が刻まれていた。彼女の美しい筆跡で、びっしりと愛の誓いと『一生の魔力共有義務』が書かれている。
「な、何よそのニヤニヤした顔は! これはあくまで理論上の契約よ! あんたの健康と魔力バランスを、私が一生管理してあげるっていう親切心なんだからね! 感謝しなさい!」
「シャーロット……相変わらず素直じゃないなぁ」
俺がくすっと笑うと、シャーロットの顔は爆発しそうなほど真っ赤になった。
「うぐっ……! バ、バカ! あんたはいつもそうやって、私が一生懸命理論武装してるのに、笑顔一発で崩してくるんだから……っ!」
「だって、本気で嬉しいんだよ。世界中から色んな申し出があったけど、俺が一緒になりたいのは……世界を救う旅の中で、ずっと俺の隣でツンツンしながらも必死に守ってくれたシャーロットだけだったんだから」
俺が静かに立ち上がり、彼女の目の前まで歩み寄ると、シャーロットは「っ……」と息をのんで一歩後退りした。だが、背後はすぐに本棚に突き当たり、逃げ場を失ってしまう。
「タ、タツヤ……近すぎるわよ……っ」
「シャーロット。もう逃がさないよ」
俺は彼女の細い肩をそっと抱き寄せ、手から羊皮紙を受け取ると、迷わず自分のサインを書き入れた。
「これで……俺たちの契約は成立だ。俺の生涯は、全部シャーロットのものだ」
「あ……っ……」
契約書が淡い桃色の光を放ち、二人の手元でスッと消えて体内へと吸い込まれていく。
誓いの魔導契約が結ばれた証だった。シャーロットは自分の手元と俺の顔を交互に見つめ、ぽろぽろと小さな涙を琥珀色の瞳に浮かべた。
「バカ……ホントにバカ……。そんなこと言われたら、断れるわけないじゃない……っ♡」
俺が彼女の華奢な体を強く抱き締めると、シャーロットは観念したように俺の胸元に頭を預けてきた。
ツインテールの柔らかな髪が俺の首筋を撫で、甘いベリーのような香りが鼻腔をくすぐる。普段は強がりばかり言っている彼女だが、その身体は小さく、華奢で、そして今にも壊れてしまいそうなほど繊細に震えていた。
「シャーロット、メガネ……外すね」
「あっ……ダメ……! 外したら……あんたの顔が直視できなくなっちゃう……っ」
彼女の静止も聞かず、俺はそっと彼女の鼻頭から丸メガネを滑り落とし、近くのテーブルに置いた。
メガネを外したシャーロットの素顔。
そこには、知的で気難しそうな魔導士の面影はなく、ただただ照れと愛おしさでとろけそうな、可憐な一人の少女の素顔があった。
「うぅ……見ないでよバカ……っ。メガネがないと、視界がぼやけて……あんたとの距離感が分からなくなるんだから……」
「距離感が分からないなら、もっと近くにいればいいだろ?」
「きゃっ……!?」
俺は彼女をすくい上げるようにお姫様抱っこした。
「ひゃああっ!? ちょ、ちょっとタツヤ!? 何するのよ! 魔法陣の展開もなしに身体を浮遊させるなんて聞いてないわよ!」
「魔法じゃないよ。俺の腕だ」
「そういう問題じゃ……うう……っ♡」
パニックを起こしてバタバタと脚を揺らすシャーロットだったが、俺が彼女の体をしっかりと保持して大きなベッドへ運ぶと、彼女は観念したように俺の首にきゅっと腕を回してきた。
柔らかい天蓋付きのベッドに彼女をそっと横たえると、真っ白なネグリジェがはらりと乱れ、白くすべすべした太ももと、引き締まった細いウエストが露わになった。
「タツヤ……あんた、私をどうするつもりよ……っ」
ベッドの上で仰向けになり、上から覆いかぶさる俺を見上げるシャーロット。視界がぼやけているせいか、彼女の琥珀色の瞳はどこか潤んでおり、俺の顔を探すようにじっと見つめてくる。
「どうするって……夫婦(契約者)になったんだから、決まってるだろ」
「~っ! あんたって人は……いつもそうやって直球なんだから……」
シャーロットは恥ずかしさに耐えかねたように両手で顔を覆ったが、俺はその細い手首を優しく掴み、ベッドの上に固定した。
「シャーロット。ツンツンするのはもうおしまいだ。本当の気持ちを聴かせてくれ」
俺がじっと彼女を見つめながら囁くと、シャーロットの胸が激しく上下した。
彼女は意を決したように、唇を微かに震わせな
がら俺の目を見つめ返してくる。
「……ずるいよ、タツヤ」
「え?」
「ずるいわよ……! 私はね、ずっと怖かったんだから! あんたが世界中のどこかに行っちゃうんじゃないかって……私を選んでくれないんじゃないかって! 私の魔法じゃ、あんたの心を繋ぎ止められないんじゃないかって……ずっと不安で夜も眠れなかったんだから……っ!」
ポロポロと、彼女の目から大粒の涙が溢れ出した。
「私は……素直になれないし、可愛げもないし、口を開けば屁理屈ばかり……。でも……でもね! 世界で一番あんたを愛してるのは、私なんだから! あんたの笑顔も、温かい手も、私を優しく呼んでくれる声も……全部、誰にも渡したくなかったの……っ♡」
涙で濡れた天才魔導士の、偽りのない素直な叫
び。
俺の胸は愛おしさで破裂しそうになった。
「シャーロット……ありがとう。俺を選んでくれて。俺も、世界で一番シャーロットが愛おしいよ」
「んっ……ふあぁっ……♡」
俺は彼女の涙を拭うように、何度も、何度も唇を重ね合わせた。
「んむっ……あむ……っ♡ んふぅ……タツヤ……ぁっ♡」
唇が合わさるたび、シャーロットの口から甘く艶やかな吐息が漏れる。
舌を優しく絡ませると、彼女は戸惑いながらも、必死に俺の舌に応えようと小さな舌を絡ませてきた。
「はぁ……はぁっ……♡ タツヤ……息が……できないわ……っ」
唇を離すと、彼女の吐息は荒く、胸元が激しく上下していた。
俺は彼女の首筋から鎖骨へと唇を滑らせ、柔らかい肌に優しく吸い付いた。
「あっ……♡ そこは……ダメぇっ……! 魔法回路が集中してる場所なの……っ♡」
シャーロットは背中を小さく反らせ、つま先までピンと伸ばして甘い悲鳴を上げた。
彼女の肌は桜色に染まり、全身からうっすらと熱気が立ち上っている。
ネグリジェのフリルを解き、滑らかな絹の生地を押し下げると、彼女の白く豊かな胸元が月光の下に露わになった。小柄な身体に似合わず、優美なふくらみが、俺の目の前で恥ずかしそうに揺れている。
「見ないで……っ。恥ずかしい……こんな姿、見られたら……私、天才魔導士として立てなくなっちゃう……っ」
「天才魔導士じゃなくていいよ。今のシャーロットは、俺の可愛い奥さんだ」
「バカ……っ♡ そんな甘い言葉……反則よ……っ!」
俺は彼女の柔らかい胸元に顔を埋め、優しく食
んだ。
「あんっ……!? あぁぁっ……♡ タツヤ……ダメ、それ……効きすぎるわ……っ♡」
シャーロットの手が俺の頭を抱え込み、胸元へと押し付けてくる。拒絶する言葉とは裏腹に、彼女の身体は俺の愛撫を激しく求め、熱く脈打っていた。
俺の指先が彼女の細いウエストからヒップ、そして熱く湿り気を帯びた絶対領域へと滑り込んでいく。
「はうっ……!? そこは……あっ……タツヤ、待って……っ! 私……私、もう頭が追いつかないの……っ♡」
「シャーロット、計算なんてしなくていいんだ。俺を感じてくれ」
「んあぁぁっ……♡ 計算なんて……できるわけないじゃない……っ! あんたに触れられるたびに……私の頭の中……全部あんたでいっぱいになっちゃうのよ……っ♡」
彼女の濡れた瞳が、欲望と深い愛情でトロリと蕩けていた。
照れやツンデレの仮面は完全に吹き飛び、いまそこにいるのは、愛する男に全てを捧げようとする情熱的な一人の女だった。
「タツヤ……お願い……。私を……あんたの熱で壊して……っ♡ 私の全部を……あんたのものにして……!」
シャーロットの手が俺の腰へと回され、しがみつくように身体を引き寄せられる。
「シャーロット……愛してる」
「私も……私も愛してるわ、タツヤ……っ♡ 一生……解けない愛の契約を……私に刻んで……っ!」
二人の身体が重なり合い、情熱的な熱が一つに溶け合った。
「あぁぁぁぁっ……♡ タツヤさぁぁんっ……!」
甘い悲鳴が静かな研究室に響き渡る。
天才魔導士が弾き出したどんな複雑な魔法式よりも、熱く、濃密で、完璧な答え(愛)が、二人の体を駆け巡っていった。
夜が更けるのも忘れ、俺たちは何度も名前を呼び合い、抱き合い、お互いの存在を深く深く刻み込んでいったのだった。
翌朝。
研究室のステンドグラスから、色鮮やかな朝の光が差し込んでいた。
まぶしさに目を覚ました俺は、自分の胸元に柔らかな温もりを感じた。
見下ろすと、シャーロットがシーツを抱きかかえ、俺の胸に小さく丸くなって眠っていた。
ツインテールの髪は乱れ、メガネのない素顔はとても幼く、愛らしい。
昨夜の激しい愛撫の余韻か、彼女の白い肌にはうっすらと桜色の赤みが残っており、規則正し
い小さな寝息を立てている。
(本当に……素直になると、こんなに可愛いんだな)
俺が彼女の額にかかった前髪を優しく撫で払うと、シャーロットの長いまつ毛がピクピクと動いた。
「ん……ぅ……タツヤ……?」
うっすらと琥珀色の瞳を開いた彼女は、ぼやけた視界の中で俺の顔を認識すると、一瞬で顔を林檎のように真っ赤にした。
「ひゃうっ……!? た、タツヤ……っ!?」
「おはよう、シャーロット。よく眠れたか?」
「お、おはよう……って、ちょっと! なんでそんなに爽やかな顔してるのよバカ! 私が……私達が昨夜、どれだけ恥ずかしいことをしたか分かってるの……っ!?」
シャーロットは慌ててシーツを顔まで引き上げ、真っ赤になった顔を隠そうとした。
だが、その指の隙間から、ちらりと俺の様子を伺ってくる。
「みっともなくなかった……? 私……あんなに叫んで……あんたに抱きついて……」
「みっともないわけないだろ。世界一可愛かったよ。シャーロットの素直な気持ちが知れて、すっごく幸せだった」
俺がシーツ越しに彼女を強く抱き締め、額に優しくキスを落とすと、シャーロットは「うぅ……っ♡」と甘い声を漏らし、諦めたようにシーツから顔を出した。
「あんたって人は……本当にずるいわ。そんなこと言われたら、もう二度とツンツンできないじゃない……」
「ツンツンしてもいいよ。俺がぜんぶ受け止めるから」
「……バカ。これからは……ちゃんと素直にしてあげるわよ。あんたの……たった一人の奥さんなんだから……っ♡」
シャーロットは照れくさそうに微笑むと、自分からつま先立ちになり、俺の唇にちゅっと小さなキスを贈ってくれた。
「タツヤ。私の人生最大の実験と計算の答え……教えてあげるわ」
「答え?」
「ええ。世界で一番幸せな女は……私・シャーロット・フォン・ローゼンベルクだってことよ! これからも一生……私だけを愛し続けなさいね、タツヤ♡」
朝日が差し込むベッドの上で、天才魔導士が見つけた世界最高の答え。
解けることのない愛の契約を結んだ俺たちの、甘く賑やかな新婚生活は、ここから永遠に続いていくのだった——。




