【第43話】 第一夫人決定戦開幕と、カオスすぎる筆記試験!?
「静粛に!! 静粛になさいな、みなさん!!」
宮殿の大広間に、シルヴィアの叫びと木槌を叩く甲高き音が響き渡った。
そこに集結していたのは、全員が純白のウェディングドレスを纏ったシルヴィアたちと、世界各国から「我こそは第一夫人に相応しい!」と押し寄せてきた大使や代理の女幹部たち、合わせて数百人。
広間はすでに熱気とバチバチの殺気で、空気が焦げ付くほどの重圧に包まれていた。
「いいですか!? このまま全員でタツヤさんに襲いかかっては、いくら世界を救った大英雄とはいえ、身体が持ちませんわ!」
シルヴィアが凛とした表情で(しかし自身もドレス姿で鼻息を荒くしながら)全員を見渡す。
「よって! 生徒会および各国の合意のもと、本日ここに公平なる【第一夫人決定世界選手権】の開催を宣言いたします!」
「「「「オオオオオオオオオッ!!!!」」」」
地鳴りのような歓声。
「公平ってなんだよ……俺の意思はどこ行ったんだよ……」
最前列の特設観覧席で、頑丈なマジックミラー付き防弾ガラスの囲い(シルヴィア発案の保護施設)の中に隔離された俺は、トホホと頭を抱えた。
「安心してくださいマスター。この防弾ガラスは核熱魔法にも耐えられます。マスターの貞操は私が物理的に死守します」
お隣にちゃっかり陣取ったドレス装甲姿のアイリスが、無表情のまま俺の手に自分のメカニカルな指を絡めてくる。
「アイリス、お前ちゃっかり『選手』じゃなくて『保護者(枠)』で俺の隣キープしてない……?」
「充電効率が最優先されます」
(ブレないな、このポンコツAI……!)
「では、第1次予選を発表いたしますわ!」
シルヴィアが巨大なスクロールを掲げた。
「第1次予選は……【タツヤさん愛・理解度深掘り筆記テスト(100問)】ですわ!」
「筆記テストぉぉっ!?」
広間から驚きの声が上がる。
「当然ですわ! 第一夫人たるもの、武力や権力
だけでなく、タツヤさんの心や過去、好みを誰よりも理解していなければなりません! 試験時間は60分! 上位10名のみが第2次予選へと進出できます!」
シャーロットがニヤリと丸メガネを光らせた。
「ふふっ……知識と分析の勝負なら、私の独壇場ね! タツヤの目覚ましをセットする時間から、毎食の米の硬さの好み、果てはホクロの位置まで完全にデータ化してあるわ!」
「ちょっと待って、ホクロの位置とか私教えてないんだけど何で知ってるの!?」
防弾ガラス越しにツッコミを入れる俺。
「ハッ! 酒の強さと愛の深さなら負けねぇが……テストだと……!?」
バルバロッサがげっそりとした顔で頭を抱える。
「……影として、タツヤのすべては観察済み」「ふふ……盗み出したタツヤさんの日常ログは完璧ですよ」
「タツヤの好み……肉。以上」
「全員、席につきなさい! 試験スタートですわ!」
シルヴィアの合図とともに、数百人のウェディングドレス姿の美女たちが一斉にカリカリとペンを走らせ始めた。
〜試験開始から30分後〜
「くっ……なんなのよこの問題はぁぁっ!?」
会場のあちこちから、悲鳴と困惑の声が上がり始めていた。
シャーロットが額に汗を浮かべ、答案用紙を睨みつけている。
『問42:タツヤが異世界に来て最初にツッコミを入れた際、右腕の角度は何度であったか?』
『問68:タツヤが「貞操の危機」を感じた時に無意識に発する叫びの平均周波数は何ヘルツか?』
『問89:タツヤが夜、夢の中でうなされている時に呟く「日本の実家の唐揚げ」のレシピを再現せよ』
「マニアックすぎるでしょぉぉぉっ!!」
シャーロットが叫んだ。
「ふふふ……甘いですわね、シャーロットさん」
シルヴィアがペンを猛スピードで走らせながら狂気の笑みを浮かべる。
「私はタツヤさんのあらゆるツッコミ動画を脳内で1000回再生し、叫び声は録音データを周波数解析済み! 唐揚げのレシピは彼が寝言で言っていた調味料の割合を完璧にメモしてありますわ!」
(シルヴィアの俺への執着心が怖すぎるんだが!!??)
「くっ……こうなれば……魔法でカンニングを……!」
どこかの国の女幹部が魔力を練ろうとした瞬間。
ピピッ!!
「不正行為を検知。カンニングを試みた受験者を即時排除します」
アイリスが防弾ガラスの隙間から小型ジャミング弾を発射!
カンニングをしようとした受験者たちが一瞬で泡を吹いて倒れていった。
「厳重すぎるだろ!!」
そして、60分が経過。
「そこまでですわ! 採点を行います!」
採点結果が、広間の巨大な魔導モニターに映し出された。
【第1次予選 通過者】
1位:シルヴィア(100点)
2位:シャーロット(98点)
3位:アイリス(95点 ※自動計測)
4位:レン(92点)
5位:ルナ(90点)
6位:バルバロッサ(85点 ※唐揚げの記述問題で奇跡の満点)
7位:ベアトリクス(80点 ※肉の部位問題で加点)
8位:セシリア(聖王国代表・80点)
9位:クラリス(帝国代表・78点)
10位:クララ(ラグナロク代表・75点)
「よっしゃぁぁぁっ!! 唐揚げの勘が当たったぜぇぇっ!」
バルバロッサがガッツポーズを決める。
「1位……! 当然の結果ですわ!」
シルヴィアが誇らしげに胸を張る。
「くっ……ホクロの角度の計算を誤ったわ……!」
悔しがるシャーロット。
結局、上位はいつものメンバーと主要国の代表たちで占められることとなった。
「さて……脱落した方々には退場していただき、残った10名で……第2次予選へと参りますわ!」
シルヴィアが怪しく瞳を光らせる。
「第2次予選の種目は……【手作り弁当・タツヤさんの胃袋撃ち抜きバトル】ですわ!!」
「またロクなことになりそうにねぇぇぇっ!!」
俺の防弾ガラスの中で虚しく響くツッコミを余所に、過酷な第一夫人決定戦はさらなるカオスへと突入していくのだった——!




