【第42話】 世界を救った大英雄と、全員ウェディングドレスの地獄絵図
魔導ウィルスの呪いが解け、【黒き死の絶壁】の決戦から一週間。
学園都市の男子寮……改め、俺のために新築された【男神記念宮殿】の豪華なバルコニーで、俺は紅茶を一口すすり、静かな溜め息をついた。
「はぁ……世界に平和が戻ったなぁ……」
空を見上げれば、かつての不気味な暗雲は姿を消し、清々しい青空が広がっている。
これから生まれてくる子供たちには、当たり前に男の子も含まれる。この世界の「男の絶滅」という悲劇は、俺たちの手で完全に打ち砕かれたのだ。
(これにて俺の命と貞操を巡る命懸けの逃走劇も、無事に大団円……!)
俺が心からほっと胸を撫で下ろした——その時だった。
ドガァァァァァン!!!!
宮殿の重厚な正面扉が、豪快な衝撃波とともに内側から吹き飛ばされた!
「なっ……何事!?」
「逃がしませんわよタツヤさんっ!! これより【全人類復興・第一夫人決定世界選手権】を開催いたしますわ!!」
煙の中から現れたのは——純白のレースとシルクをふんだんに使った、息を呑むほど美しいウェディングドレス姿のシルヴィアだった!
「へ……? ウェディング……ドレス……!?」
俺が呆然としていると、シルヴィアの左右から、同じく純白のウェディングドレスを身に纏った面々が続々と姿を現した!
「そうよ! 世界の呪いは解けたけど、これから生まれる男児が大人になるまであと20年はかかるのよ! つまり、今すぐ子孫を残せる唯一の男神にして『世界を救った大英雄』の価値は……宇宙レベルで跳ね上がってるのよ!」
ミニ丈のキュートなドレスに身を包んだシャーロットが、メガネをクイと直しながら主張する。
「ガハハハ! 英雄の妻になるのは海賊の頂点に立つこの俺に決まってんだろ!」
胸元が豪快に開いたワイルド&セクシーなドレス姿のバルバロッサが、二丁拳銃を空へぶっ放す。
「タツヤの花嫁衣装……作った。似合う……?」(和風ウェディングドレスのレン)
「ふふ、世界を救った大英雄の『愛』を盗み出す……最高の怪盗の仕事ですね♪」(シースルードレスのルナ)
「タツヤ。今夜……式を挙げる」(部族風ドレスのベアトリクス)
さらには——
「充電率100%。……マスターの花嫁防衛&永久伴侶モード『ブライダル・アヴァロン』へ装甲換装完了。……誰一人としてマスターの隣を譲る気はありません」
ドレス風の白銀装甲を身に纏ったアイリスが、無表情のまま俺の右腕をギュッと抱きかかえてきた!
(全員ウェディングドレス着て押し寄せてきたぁぁぁぁっ!??!)
「ちょっと待て!! 平和になったんだぞ!? 命狙われる危険はなくなったんじゃないのか!?」
「命は狙われませんわ! ですが、あなたの『貞操』と『第一夫人の座』を巡る戦争は、ここからが本番ですのよ!」
シルヴィアが突剣(なぜかブーケが括り付けられている)を掲げて宣言する。
さらに、宮殿の庭園には、世界中から届いた『超大量の婚約指輪と手紙の山』が積み上げられていた。
「見てください! 帝国からはクラリス少将との全軍婚約調印書! 聖王国からはセシリア聖女との神聖挙式日程表! 世界樹からはルシエラ女王からの苗床予約券! 歓楽街のクララ様からはVIP永久指名指輪! 世界中の国家が、あなたとの婚姻を正式な国家外交として迫ってきていますの!」
「平和になったことで、むしろ公的に堂々と狙われるようになったぁぁぁっ!?」
俺は頭を抱えた。
逃亡劇の時は「闇雲な争奪戦」だったのが、世界を救った英雄となったことで「世界中の国家とヒロインたちによる、合法かつ過激な花嫁争奪バトル」へと進化していたのだ!
「さあタツヤさん! 誰を第一夫人に選ぶのか……今ここで決めていただきますわ!」
シルヴィアが迫る!
「私の膝枕と実験室を選びなさい!」
「俺の船で新婚旅行に行くぞ!」
「マスターの夜の営みを、24時間完全ガード&フルサポートします」
「みんな一斉に詰め寄るなァァァっ!!」
俺の悲鳴が、快晴の学園都市の空へ虚しく響き渡る。
世界は救われた。
けれど……相沢タツヤの「絶対貞操防衛線」と、シルヴィアたちによる「愛と欲望の終わりなき花嫁争奪戦」は、更なるスケールアップを遂げてこれからも続いていくのだった——!




