【第39話】 決意の旅立ちと、過剰すぎる出撃前夜
「世界中の『男が生まれない呪い』を解く……か」
雲上の秘境アヴァロン。夜の静けさに包まれた古代庭園で、俺は満天の星空を見上げていた。
単なる逃亡者だった俺が、まさか世界を救う旅
に出ることになるなんて。
でも、理由はどうあれ俺を必死に守り、居場所をくれたシルヴィアたちのためにも、もう逃げるだけじゃ終わらせない。
「……こんなところで夜風に当たっていると、風邪をひきますわよ?」
後ろから、柔らかい布地が肩にかけられた。
振り返ると、月光に照らされたシルヴィアが、優しく微笑みながら隣に並んだ。
「シルヴィア……」
「昼間のお言葉……本当に感動いたしました」
彼女は胸元に手を当て、少し照れくさそうに瞳を潤ませる。
「最初は……学園の責任や『最後の男性』としての価値ばかりを見ていたのかもしれません。ですが、いま私は……一人の女性として、相沢タツヤという男性の志に惹かれておりますの」
「シルヴィア……ありがとう。俺、絶対みんなと一緒に——」
「ですので! これより『出撃前夜の既成事実作り(合体)』を提案いたしますわ!」
「感動的なムードを台無しにする急カーブ切るなァァァっ!?」
突如として熱っぽい瞳になり、俺を押し倒そうと組みついてくる生徒会長!
「待ちなさい生徒会長! 既成事実なら私の方が先よ!」
庭園の影からシャーロットが飛び出してきた!
その手には『絶対に断れなくなる惚れ薬入り特製ドリンク』が握られている!
「ハハハ! 最後の夜なら俺の胸で酒を飲むのが筋ってモンだろ!」
「タツヤ……今夜は影の中に、二人だけで隠れよう……♡」
「ふふ、盗み出すなら……今夜が最大のチャンスですね♪」
「タツヤ。夜の訓練(交尾)だ」
「みんな揃いも揃って出撃前夜のイベント発生させようとしてくるんじゃないよ!!」
庭園が瞬く間に大混乱に陥りかけた——その時!
ピピッ……! 警告!
「マスターの絶対純潔防衛プロトコル作動。夜間の無許可な性的接触(夜這い)を検知しました」
どこからともなく姿を現したアイリスが、無表情のまま背中の重火力バズーカを展開!
ドドドドドドドッ!!
きゃああああっ!? このポンコツロボ、夜間まで容赦ないですわ!?」
「ちょっと! 雰囲気を台無しにしないでよ!」
アイリスはシルヴィアたちの猛攻を完璧な火力で退けると、サッと俺を横抱きにし、そのままマスター専用寝室へと運び込んだ。
ガチャリ……シュイーン(完全密閉ロック)
「ふぅ……助かった……ありがとな、アイリス」
「いいえ。マスターの貞操を守るのが私の任務です」
アイリスはベッドの脇にピタリと立ち、コバル
トブルーの瞳で部屋の全方位を警戒している。
「あのさ……アイリスも、本当は一緒に寝ていいんだぞ? 充電もできるし」
俺が何気なく言うと、アイリスの思考回路が一瞬ピタリと止まった。
ピ……ピピ……ピピピ……
頭部回路が真っ赤に発熱し、彼女の頬がぽっと
赤く染まる。
「ま、マスターからの『添い寝提案』を受信……。思考フレームワークに過大負荷……。充電モード『密着添い寝』に移行します……」
「えっ、あ、いや、そんな大げさに言わなくても——うわっ!?」
アイリスは無表情のままベッドに潜り込むと、俺の身体に全力で抱きついてきた!
華奢な身体だが、全身から伝わるのは温かな体温と、どこか心地よい甘い香り。
「マスターの鼓動……体温……確認。……充電率、良好。おやすみなさい、マスター」
俺の胸に頭を預け、スースーと静かな寝息(稼働音)を立て始めるアイリス。
(無感情に見えて……やっぱりアイリスも可愛いところあるんだな)
俺は苦笑しながら、彼女の頭を優しく撫でた。
明日からは、世界中の女性の運命を変える過酷な戦いが始まる。
だけど、この賑やかで愛おしい仲間たちがいれば、どんな困難だって乗り越えられるはずだ。
翌朝。
雲海を切り裂き、完全に修理・強化された【新型ルナティック号】が大空へと飛び立った。
「目指すは中央大陸最奥……【黒き死の絶壁】!」
操縦席でルナが大きく舵を切る。
甲板には、旅立ちの決意を新たにしたシルヴィア、シャーロット、バルバロッサ、レン、ベアトリクス、そして俺の横でしっかり手を握って充電中のアイリス。
「行きましょう、タツヤさん! 世界中の女性に希望を……そして、私たちの未来を掴み取るために!」
シルヴィアが高らかに掲げた突剣が、朝日に輝く。
男が絶滅した異世界で、ただ逃げ回るだけだった少年の物語は、いまや「世界の呪いを解く大冒険」へと進化した!
【黒の結社】が待ち受ける闇の領域へ——俺たちの真の戦いが、ここから始まる!!




