【第37話】 無感情な過保護と、防衛システム暴走中!
「警告。マスターに対する接触欲望パラメータが危険領域に達しています。対象群を全排除します」
「全排除って言った!? 待ってアイリス、落ち
着いて!!」
俺の静止も虚しく、古代のアンドロイド少女アイリスは無機質なコバルトブルーの瞳を光らせ、背中に展開した無数の浮遊砲台から高威力の光弾を一斉に放った!
ズババババババババッ!!
「なっ……速いですわ!?」
シルヴィアが間一髪で突剣の刃で光弾を弾き返す!
「ちょっと! なんなのよこのカラクリ人形! 挨拶代わりに重粒子砲ぶっ放してくんじゃないわよ!」
シャーロットがツインテールを激しく揺らしながら、【爆光障壁】を展開して光弾の嵐を防ぐ。
「へっ、面白い! 古代の玩具が俺たちに喧嘩売
ろうってのか!」
バルバロッサが豪快に笑いながら、二本の魔導銃で光弾を相殺していく。
「マスター。退避してください」
アイリスは俺の腕をすっと掴むと、軽々と俺をお姫様抱っこ(!)で抱え上げた。そのまま驚異的な跳躍力で遺跡の天井近くまで飛び上がり、シルヴィアたちから距離を取る。
「うわああああっ!? 高い高い!!」
「マスターの心拍数上昇を確認。不安を和らげるため、胸部プロテクターへの抱擁強度を強化します」
ギュッ♡
「ぐ、苦しい!! 抱きしめる力がサイボーグレベル(実際サイボーグ)なんだよ!!」
アイリスの華奢な見た目からは想像もつかない超絶筋力(魔導出力)によって、俺は彼女のやわらかい(けど頑丈な)胸元に顔を押し付けられた。
それを見た下にいるヒロインたちの目が、一瞬で血走った。
「「「「「お姫様抱っこだとぉぉぉぉぉっ!??!?」」」」」
「な……ななな何をやっていますのそのポンコツ機械はぁぁぁっ!?」
シルヴィアが激怒して顔を真っ赤にし、剣身に凄まじい風の闘気を纏わせる。
「タツヤの純潔を守るどころか、アンタが一番スキンシップ取ってるじゃないのよ!!」
シャーロットがメガネをクイと直しながら、巨
大な魔法陣を展開する。
「お頭を横取りする奴は、古代兵器だろうがスクラップにしてやるぜ!」
バルバロッサが魔導銃の出力を限界まで引き上
げる。
「……マスターを奪還する」
レンが影に潜み、アイリスの背後へと一瞬で肉薄した。
「ふふ、怪盗の『お宝』を勝手に持ち去るなんて、泥棒の仁義に反しますね♪」
ルナがトランプのカードを手裏剣のように構える。
「タツヤは、渡さない」
ベアトリクスが大剣を構え、野獣のような眼光で睨みつける。
(待って!! ヒロイン全員の『ヤンデレ怒りメーター』がカンストしてる!! 遺跡が崩壊するぞ!!)
「ターゲット群の敵意上昇を確認。防衛モード
『フェンリル』へ移行。マスターの貞操保護を最優先とし、危害を加える恐れのある肉食女性群を無力化します」
アイリスは無表情のまま、頭部のバイザーを微かに光らせた。
すると、遺跡の床や壁が組み替わり、古代の魔導ゴーレムたちがワラワラと湧き出てきた!
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
「くっ……古代の自動防衛システム……!? 厄
介ですわね!」
「アイリス! 頼むから攻撃をやめてくれ! 彼女たちは俺を狙う肉食獣じゃなくて、俺を守るために一緒に旅してきた仲間なんだ!」
俺はアイリスの腕の中で必死に訴えかけた。
アイリスはコバルトブルーの瞳をパチパチと瞬かせ、俺の顔をじっと見つめる。
「……仲間、ですか? ですがデータ照会結果によると、彼女たちの『マスターに対する視線』は保護者のそれではなく……『捕食者』の交尾欲望値99.8%を示しています」
「正確すぎるデータ分析をしないでぇぇぇっ!?」
「私の最優先プロトコルは『マスターの純潔保持』です。彼女たちと共存することは、マスターの『夜の安全』を保障できません」
アイリスの無感情な声。だが、その瞳の奥には、作られたプログラム以上の「マスター(俺)を誰にも渡したくない」という、どこか健気で頑固な意志が宿っているように見えた。
(こいつも……古代の機械だけど、俺を守るためにずっとここで眠って待ってたんだ……)
俺はアイリスの華奢な肩に手を置いた。
「アイリス。俺の心配をしてくれてありがとう。でも……俺はあいつらを信じてる。だから、戦うのをやめてくれ。……これはマスター命令だ」
「マスター……命令……」
アイリスのコバルトブルーの瞳が大きく揺れ動
いた。
体内の回路が一瞬、過熱するように赤く光る。
「……思考回路にエラー検知。マスターの『優しい笑顔』による精神撹乱……。了解しました。マスターの命令を最優先します」
アイリスは展開していたビットとゴーレムたちを即座に収容し、ゆっくりと地上へと降り立った。
「ふぅ……助かった……」
俺が床に足を着けると、すかさずヒロインたちが雪崩のように押し寄せてきた!
「タツヤさん! 無事ですか!? 変なマネ(抱擁)をされて傷つけられませんでしたか!?」
シルヴィアが俺の手を握りしめる。
「もう! 心配させないでよバカ!」
シャーロットが俺の服の裾をギュッと掴む。
アイリスは俺の後ろにピタリと寄り添い、無表情のままシルヴィアの手をサッと引き剥がした。
「警告。マスターへのパーソナルスペース(30cm以内)への侵入を禁止します。触れて良いのは防衛ユニットである私のみです」
「なっ……! まだ言うかこのポンコツロボットぉぉぉっ!」
シルヴィアが青筋を立てる。
こうして、過保護すぎる古代アンドロイド【アイリス】が仲間に加わり、俺の貞操(と静寂)を巡るハーレム争奪戦は、さらに予測不能な新ステージへと突入したのだった——!




