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【第36話】 雲上の秘境アヴァロンと、眠れる古代の少女

バシューッ……ガラガラガラッ!


「はあ……はあ……! 振り切った……のか……!?」


俺は【ルナティック号】の甲板に突っ伏し、荒い息を吐いた。


世界中の国家——帝国、聖王国、世界樹、さらには黒の結社やラグナロクの歓楽街まで巻き込んだ、前代未聞の全方位大包囲網。


そこから奇跡的な操縦テクニックとシルヴィアたちの超絶的な全開魔法で脱出し、雲海の最深部へと逃げ込んでから数時間。


周囲を覆っていた戦闘機の爆音や砲撃音は消え去り、静寂と清らかな風だけが流れていた。


「……追っ手の魔導反応、完全に途絶えましたわ」

シルヴィアが突剣を鞘に収め、胸を胸を撫で下ろす。


「ふぅ……命拾いしたわね。ルナティック号の推進基盤が焼き切れる寸前だったわ」

シャーロットが丸メガネをクイと持ち上げながら、操縦席から降りてきた。


「ハハハ! 世界中の大軍勢を相手に大立ち回りして逃げ切るたぁ、最高の冒険だぜ!」

バルバロッサが豪快に笑いながら、俺の背中をドシドシと叩く。


「……タツヤ、無事でよかった」

影から現れたレンが、俺の服についた煤を優しく払い落としてくれた。


「みんな……本当にありがとう。助かったよ……!」

俺は心から感謝した。


……だが、安堵したのも束の間。シルヴィアたちの目が怪しく光り始めた。


「さあタツヤさん! 戦いは終わりました……これより、極度の疲労に襲われているタツヤさんの『特別介抱権』を賭けた話し合いを——」


シルヴィアが熱っぽい視線で迫ってくる。


「待ちなさい生徒会長! 私の回復魔法と、私の膝枕が一番効果的よ!」

「ハッ、疲れた体には俺の豊かな胸の中で眠るのが一番だ!」


(逃避行が終わった瞬間に身内の争奪戦に逆戻りしたぁぁぁっ!?)


「ま、待った! 介抱の前に、ここがどこなのか確認するのが先だろ!?」


俺が慌てて周囲を指さすと、シルヴィアたちはハッと息をのんだ。


ルナティック号が不時着していたのは、雲海の遥か上空に孤立して浮かぶ、見たこともない巨大な浮遊島だった。


島全体が色鮮やかな珍しい花々と古代の白磁の建築物に包まれており、中央には天空へ向かって聳え立つ謎の水晶塔が輝いている。


「ここは……世界地図にも載っていない未知の領域ですわね……」

シルヴィアが周囲を見回す。


「空間歪曲結界で完全に遮断されているわ……。だから外のレーダーにも映らなかったのね」

シャーロットが腕を組んで分析する。


「ふふ……言い換えれば、世界中の追っ手から完全に隔離された『隠れ家』というわけですね♪」

ルナが手品のように地図を折りたたんだ。


「なるほど……ここなら暫くは安全に身体を休められそうだな」


俺は胸を撫で下ろした。


国家の包囲網も、100年ぶりの遺伝子を狙う狂乱の軍隊も、この結界の中までは入ってこられない。


「よし、船の修理に必要な資材を探しつつ、この島を調査してみよう!」


俺たちはルナティック号を木陰に隠し、島の中央にある水晶塔——古代の遺跡へと足を踏み入れた。


静寂が包む古代遺跡の内部。


壁には太古の文字や、見たこともない機械装置が埋め込まれている。


「……タツヤ、何か来る」


レンが警戒して短剣を構えた。


遺跡の最奥、巨大な開けたドーム状の部屋に辿り着いた俺たちの前に現れたのは——


透明な巨大クリスタルの中で、静かに目を閉じている一人の少女だった。


透き通るような銀色のショートヘア。


どこか人間離れした美しい容姿と、身体のあちこちに刻まれた光る回路のようなライン。


「人間……ではないわね。古代文明の『魔導人形(アンドロイド)』……!?」


シャーロットが息をのむ。


その時だった。


キュィィィィィン……!


俺がクリスタルに近づいた瞬間、俺の手首の

【世界樹の加護石】と、古代のクリスタルが共鳴して眩い光を放ち始めた!


「えっ……!? なにっ!?」


バリバリバリッ!


クリスタルに亀裂が入り、弾け飛ぶ!


中から現れた銀髪の少女が、ゆっくりと空中に浮遊し、その瞳を開いた。


澄み渡るようなコバルトブルーの瞳。


彼女は空中から静かに舞い降りると、真っ直ぐ

に俺の前へ歩み寄ってきた。


「……生体反応確認。遺伝子コード認証……『真正なる男神』と特定」


無機質だが、どこかすみ切った美しい声。


「おはようございます、マスター。私は古代男神防衛用・自律型戦闘人形『アイリス』。……これより、マスターの身と……その純潔を、全世界の過激な女性たちから永久に防衛する任務を開始します」


「え……? 『純潔を防衛』……?」


アイリスは無表情のまま、背中から巨大な光の盾と魔導砲を展開すると、俺の後ろにいたシルヴィアたちに向かってピタリと照準を合わせた。


「警告。マスターから半径一メートル以内に接近する危険な女性(肉食獣)を確認。……直ちに排除します」


「「「「「はあぁぁぁぁぁっ!??!?」」」」」


シルヴィアたちの叫び声が遺跡内に響き渡っ

た!


「な、なんですのその失礼なからくり人形はぁぁぁっ! 私たちはタツヤさんを愛する保護者(&未来の妻)ですわよ!」


逃亡劇を生き延びた俺の前に現れたのは、男神の純潔を守るために作られた古代のアンドロイド少女!


シルヴィアたちと新たな少女(アイリス)による、過激すぎる『男神防衛&争奪バトル』が、に幕を開けるのだった——!


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