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【第35話】 媚薬の余波と、雲上のファイナル・ターゲット

「ちょ……みんな、目がヤバい!! 顔が近すぎるって!!」


高度四千メートル。朝焼けに染まる【ルナティック号】の後部デッキで、俺は後ずさり、船の手すりに背中を打ち付けた。


ラグナロクの女帝クララから勝ち取った魔導シャンパン【ラグナ・ロワイヤル】。


昨夜は気合で耐えていたシルヴィアたちだったが、朝日とともに体内で熟成された『特製媚薬成分』が本格的に覚醒してしまったらしい。


「ふふ……タツヤさん……♡ 逃げなくてもよろしいのに……」


普段は凛々しい生徒会長のシルヴィアが、突剣を床に放り出し、濡れた瞳で上目遣いに俺を覗き込んでくる。頬はリンゴのように赤く、吐息は甘く熱い。


「そうよ……タツヤ。もう我慢しなくていいのよ? 私は……準備万端なんだから……♡」


シャーロットが丸メガネを外し、とろけた表情でツインテールを揺らしながら迫ってくる。


「ハァ……ハァ……俺の……俺の『つがい』……♡」


普段は無口なベアトリクスまで、野性味あふれる抱擁で俺を押し潰そうと両腕を広げている!


「おいおい……乗組員の命を守るのが船長の務めだが……今朝ばかりは俺の『本能』が抑えきれねえぜ……♡」


バルバロッサが豊かな胸元を大胆にはだけさせながら、舌なめずりをして一歩踏み出してくる。


「影は……主(タツヤ)のすべてを受け入れる……♡」(レン)

「ふふ、怪盗が最後に盗むのは……あなたのハート(と純潔)です♪」(ルナ)


(全滅だ!! ヒロイン全員が完全に発情(ピンク色)モードに入ってるぅぅぅっ!!)


頼みの綱のルナまで操縦桿を放り出して参戦しようとしているため、飛空艇は激しく揺れ動き、蛇行運転を始めていた。


「だ、ダメだ!! みんな正気に戻れ!! 船が撃墜するぞ!!」


俺が悲鳴を上げた、その時だった——!


ドドドォォォォォン!!!!!


朝焼けの雲海を突き破り、幾重もの巨大な影が【ルナティック号】の前後左右を完璧に包囲した!


「「「「「!?!?」」」」」


あまりの衝撃に、媚薬でトロけていたヒロインたちの意識が一瞬で覚醒する。


「な……何事ですの!?」


シルヴィアが素早く突剣を拾い上げ、周囲を警戒する。


雲の切れ間から姿を現したのは——これまでに俺たちを追い詰めてきた、世界中の最強国家たちの旗艦勢揃い(オールスター)だった。


左手には、学園都市を破壊した帝国軍の超巨大要塞【要塞艦グラン・ガイザル】。甲板にはドS少将クラリスが仁王立ちしている。


右手には、聖王国の白鳥型旗艦【アヴェ・マリア号】。聖女セシリアが光の翼を広げている。


上空には、世界樹の国エルヴンヘイムの樹木戦艦。女王ルシエラがヤンデレな視線を送ってくる。


さらには、脱出ポッドで逃げ延びた【黒の結社】のカミラ率いる潜水飛空艇、学園の最高権力者・理事長エレオノーラの豪華魔導船まで!


「「「「「男神(タツヤ)様を渡せぇぇぇぇっ!!!!」」」」」


空を埋め尽くす何百隻もの戦艦から、世界中の最高権力者(美少女・美女たち)の叫びが合唱

となって響き渡った!


「っ……! 世界中の追っ手が、同時に集結したというのですか!?」


シルヴィアが息をのむ。


「チッ……逃げ場なし、か!」


バルバロッサが苦々しく噛みタバコを吐き捨てる。


「タツヤ……私が、死ぬ気で守る」


が刃を構え、俺の前に立ちはだかる。


(ま、マジかよ……! 追っ手全員がここで鉢合わせするなんて……絶対絶命なんてレベルじゃないぞ!?)


だが、各国の旗艦からスピーカー越しに届く声は、もはや交渉ではなく『己の欲望の主張』と化していた。


『男神様は帝国の種馬として育てるのが義務

だ!』(クラリス少将)


『いいえ! 神聖なる我が聖王国の聖なる夫となっていただきますわ!』(セシリア聖女)


『我が世界樹で1000年間、私だけの苗床になってもらいます……♡』(ルシエラ女王)


『私の男子寮(密室)へお戻りなさい、タツヤ様♪』(エレオノーラ理事長)



お互いを牽制し合い、空中でいまにも大戦争が

勃発しそうな張り詰めた空気。


俺は……ごくりと唾を飲み込んだ。


逃げて、逃げて、逃げ回ってきた。


学園都市から始まり、大空へ、世界樹へ、深海

へ、不夜城へ。


だけど……いつまでも逃げ続けているだけじゃ

ダメだ。


「……みんな、ちょっと退いててくれ」


俺はシルヴィアたちの前に進み出た。


「タツヤさん……!? 危険ですわ!」

「ダメよタツヤ! 外は極大魔法が飛び交ってるのよ!?」


「大丈夫だ」


俺は深く息を吸い込むと、甲板の手すりに立ち上がり、世界中の戦艦に向かって腹の底から叫んだ!


「おい!! お前ら全員……聞いてくれぇぇぇぇっ!!」


全戦艦の砲門が一瞬、ピタリと止まった。


「俺は……俺はただの『遺伝子』でも『種馬』でも『苗床』でもねぇ! 俺は相沢タツヤ……一人の人間だ!!」


俺の声が、高度四千メートルの雲海全体に響き渡る。


「俺を道具みたいに奪い合うのはもうやめろ!

俺の貞操は……俺の心は……俺が選んだ『最高の仲間たち』と一緒に、自分の意思で決めるんだぁぁぁっ!!」


静まり返る空。


シルヴィア、シャーロット、バルバロッサ、レン、ルナ、ベアトリクス。


みんなが目を見開き、胸を押さえて俺を見つめている。


「タツヤさん……」


シルヴィアの瞳から、ポロリと一粒の涙が零れ

落ちた。


そして——俺の決死の叫びを聞いた世界中の国家のトップたちは、一瞬の静寂の後……





「「「「「……カッコいいぃぃぃぃっ♡(キュンッ)」」」」」


「逆効果かよぉぉぉぉっ!!?」


『なんて男らしいの……! ますます欲しくなったわ! 全軍、突撃ぃぁぁっ!』(クラリス少将)


『私の愛の力でその意思ごと包み込んで差し上げますわぁぁっ!』(セシリア聖女)


全員の目がさらにハートマークになり、狂乱の全方位突撃が開始された!


「あはは……やっぱりこうなるのね!」


シャーロットが半ばヤケクソで笑う。


「ふふ……ですがタツヤさん」


シルヴィアが涙を拭い、今までで一番眩しい、

最高の笑顔で突剣を掲げた。


「あなたのその言葉……しかと受け取りましたわ! 私たち『タツヤハーレム(仮)』の絆……世界中の軍隊に見せつけてやりましょう!」


「おうよ! 大空の果てまで、どこまでも付き合ってやるぜ!」

「タツヤの意思を……阻む者は全て斬る」

「ふふ、世界を相手回した最高の泥棒猫(愛の

逃避行)の始まりですね♪」


みんなの心が、一つに合わさる。


「行くぞみんなっ! 俺たちの自由と未来を掴み取るぞぉぉぉっ!!」


ドカンッ!!


【ルナティック号】は光の爆発とともに加速し、世界中の戦艦が入り乱れる大乱戦の空へと突撃していった!


絶滅した世界で繰り広げられる、たった一人の男と、彼を愛し抜く最強のヒロインたち、そして世界中の美少女国家による——愛と命と貞操を賭けた『世界一周・無限大逃避行』!


俺たちの過酷で甘くて賑やかな戦いは……まだまだ始まったばかりだ!

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