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【第33話】 狂乱のキャバレー都市ラグナロク

バリバリバリッ……ドガァァン!!


「キャァァァッ!?」


「うおぉぉぉっ!不時着するぞぉぉっ!」


漆黒の空を覆うネオンの海へ、翼から黒煙を吹いた【ルナティック号】が滑り込んでいく。


聖王国の追撃をなんとか振り切ったものの、魔導燃料が完全に底をついた俺たちの飛空艇は、不夜城と呼ばれる巨大歓楽都市【ラグナロク】

の裏路地に豪快に不時着した。


ゴミ箱やドラム缶を吹き飛ばしながら停止する船体。


「ふぅ……間一髪、生きてましたね♪」


操縦席でルナが可愛く首を傾げる。


「生きてたのは重々結構だけど……ここ、どこなのよ!?」


シャーロットがツインテールについた埃を払いながら、壊れたハッチの外を見上げた。


そこに広がっていたのは——


夜空を刺すような眩しいピンクと紫のネオンサイン、街中に響き渡る妖艶な音楽、そして華やかなドレスやバニーガール姿で街を練り歩く、無数の酔い痴れた美女たちの姿だった。


「ようこそ、世界最高の不夜城……【ナイトライフ都市・ラグナロク】へ」


バルバロッサがニヤリと口元を歪める。


「ここは酒、ギャンブル、そしてあらゆる『欲望』が肯定される無法地帯だ。100年前は男たちの天国だったらしいが……男が絶滅した今は、女たちが寂しさを紛らわせるために狂乱のパー

ティを続けている街さ」


「……最悪の場所に落ちてしまいましたわ」


シルヴィアが額を押さえて深々と溜め息をついた。


「この街の女たちは、全員が『男の幻影』を求めて飢えています。もしタツヤさんの存在がバレたら……一瞬で千切られる勢いで群がってきますわよ」


(千切られる!? 表現が物騒すぎるんだよ!!)


俺は身震いした。


たしかにネオンの下を歩く女たちの目は、心なしかギラギラと飢えているように見える。


「とりあえず変装だ。タツヤ、これを着ろ」


レンが影の中から一着の衣装を取り出した。


「な、なんだこれ……フード付きのぶかぶかポンチョ?」


「顔と体型を隠す。ついでに……私の匂いを染み込ませてある」


「余計なものを染み込ませないで頂戴!」


シャーロットが即座に突っ込む。


ともかく、俺はフードを深く被り、顔を隠して街へ繰り出すことになった。目的は【ルナティック号】の修理に必要な『超高純度魔導燃料』の入手だ。


ネオンが眩しく光るメインストリート。


「すご……街全体が歌舞伎町とラスベガスを混ぜたみたいだな……」


俺が圧倒されていると、周囲の巨大な魔導ビジョンが一斉に切り替わった。


『緊急指名手配! 100年ぶりの【男神様】を探せ!』


画面にドカンと映し出されたのは——超高精度で描かれた**俺の顔写真(ポスター)**だった!


『賞金は金貨一億枚! または【男神様との一夜のデート権】! 情報提供者はラグナロクのオーナー・【夜の女帝】クララ様の特別個室へご招待!』


「「「「「一億枚 & デート権ぇぇぇぇっ!?」」」」」


街中を歩いていた美女たちの目の色が一瞬で変

わった。


獣のような眼光で、互いを牽制し合いながら周囲を見回し始める。


「おい、見たか!? 男神様だぞ! 本物の男だ!」


「一億金貨もヤバいけど、デート権!? 嘘でしょ、抱きしめたい!!」


「どこ!? どこにいるの男神様ぁぁぁっ!?」


街全体が、一瞬で狂乱の狩り場へと変貌した。


(や、やばい……俺の顔がデカデカと指名手配されてるぅぅぅっ!?)


俺は冷や汗をダラダラ流しながらフードを目深に被り直す。


「落ち着きなさい、タツヤさん。私たちがついていますわ」


シルヴィアが凛々しく胸を張る。


「そうよ、燃料を買うだけなら裏市でパパッと済ませられるわ」


シャーロットも同意する。


……だが、人生そううまくはいかない。


つまずいた酔っ払いの女性が、俺の肩にドスンとぶつかったのだ。


「あら、ごめんなさいね……って、きゃっ!?」


「あ。」


ぶつかった衝撃で、俺のフードがハラリと脱げ落ちた。


街のネオンライトが、俺の顔をバッチリと照らし出す。


酔っ払い美女の目が、点になった。


そして——徐々に見開かれ、真っ赤に血走っていく。


「あ……あ……あ……」


「……違います。私は似ているだけのポスターの模写です」


俺は必死の笑顔で言い訳を試みた。


だが、無駄だった。


「男神様がいたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


彼女の耳をつんざく悲鳴が、不夜城全体に響き渡った。


「「「「「な、なんだとぉぉぉぉっ!??!?」」」」」


一瞬にして、数千人のバニーガール、ドレス姿

のキャバクラ嬢、ボディガードの女たちが、地鳴りのような足音を立ててこちらへ一斉に振り向いた!


「男だ! 本物の男だぁぁぁっ!」


「捕まえろー! 私の部屋に連れ込むのよー!」


「種を寄こせぇぇぇぇっ!」


「ヒィィィィッ!? ゾンビ映画より怖いよぉぉぉっ!」


「タツヤさん、走りますわよ!!」


シルヴィアが俺の手を強く引き、ネオンの街並みを全力ダッシュ!


「待ちなさい! 男神様ぁぁぁっ!」


数千人の酔っ払い美女軍団が、津波のような勢いで追いかけてくる!


「くそっ、数が多すぎるわ! どこかに隠れないと!」


シャーロットが悲鳴を上げる。


「こっちだ! 俺の顔馴染みの店がある!」


バルバロッサが裏路地の重厚な扉を蹴り開けた。


俺たちは雪崩れ込むように店の中へ飛び込み、内側から鍵をかけた。


ドカン! ドカン! と外の扉が叩かれる音。


「ハァ……ハァ……助かったのか……?」


胸を押さえて息を整える俺。


だが、暗い店内に漂う妖しい紫色の香煙と、豪奢なベルベットのソファを見たシルヴィアの顔が引きつった。


「ば、バルバロッサ……ここ、何の店ですの……?」


「あ? ここか? ラグナロク最高峰の高級ホストクラブ……の廃店舗だ」


「フフフ……よくぞお越しくださいました、愛しい男神様……♡」


店の奥の豪華な玉座から、妖艶な紫のドレスを纏った美女がゆっくりと立ち上がった。


その胸元には『ラグナロク最高権力者・クララ』の名札。


「まさか自ら私の『VIP指名個室』へ飛び込んでくださるなんて……最高の夜になりそうですわ……♪」


「逃げ込んだ先が敵の本拠地(キャバレーの女帝の部屋)だったぁぁぁぁっ!?」


不夜城の夜は、まだまだ明ける気配を見せないのだった——!


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