【第29話】 狂乱の大宴会と、女海賊たちの夜這い包囲網
「ガハハハハ! 飲め飲めぇい! 今夜は100年ぶりの『男神誕生祭』だぁぁぁっ!」
海上に浮かぶ巨大な酒場船。
千樽を超えるラム酒の樽が叩き割られ、巨大な海獣の丸焼きが炎を上げて焼き上がっていく。
「タツヤ! ほら、俺の杯から飲め!」
酒が入り、いつにも増して豪快になったバルバロッサが、俺の首に腕を回してドデカい木製ジョッキを押し付けてくる。豊かな胸の感触がダイレクトに当たって、俺の理性が大ピンチだ。
「バ、バルバロッサさん! 酒は弱いから勘弁してくれっ……!」
「なーに言ってるんだ! 海賊の女房……じゃなかった、旦那になるなら、樽ごと飲み干す度胸が必要だぜ!」
「誰がいつ旦那になったんだよ!?」
「認めませんわ!!」
バァン!!
テーブルを叩き割らんばかりの勢いで立ち上がったのは、顔を真っ赤にした生徒会長シルヴィアだった。その手には、いつの間にかカラになった酒杯が握られている。
「タツヤさんは……学園の、そして人類の至宝です! 一海の空賊の個人的所有物にして良い存在ではありませんわ! ……うっ、なんだか頭がふわふわします……」
「シルヴィア、あなた完全に酔っ払ってるでしょ!」
シャーロットが呆れ顔でツッコミを入れるが、当のシャーロットも酔い止め魔法をかけ忘れたのか、ツインテールを揺らしながらトロけそうな顔をしている。
「むぅ……タツヤ、私の研究室に来れば……毎日美味しいリンゴジュースをあげるわよ……♡」
「薬(惚れ薬)が入ってそうなジュースはお断りだ!」
宴会はすでにカオスを極めていた。
周囲を見渡せば、数百人の女海賊たちが酔いと熱気に目を爛々と輝かせ、俺を隙あらば持ち去ろうとテーブルの周りをじわじわと取り囲んでいる。
「ねえねえ、お頭が酔い潰れたら、あの男神様を私の船に連れ込んでいいかな……?」
「馬鹿! 一番手は副船長のジェシカさんでしょ!」
「いいや、早い者勝ちよ! 100年ぶりの男なのよ!? 一晩でいいからあの胸に飛び込みたい!!」
(ヒイッ……! 女海賊たちの視線が完全に獲物を狙う肉食獣のそれだ……!)
「タツヤ、足元に潜れ」
シュッと影から現れたレンが、俺の腕を引いてテーブルの下へと引きずり込んだ。
「れ、レン……!?」
「ここなら目立たない。宴会が最高潮に達した隙に、裏の小舟で脱出する。……二人きりで、誰も追ってこられない無人島へ逃げよう」
「さらっと重い駆け落ち提案すんな!?」
「ふふ、無人島も素敵ですが……私の『秘密の宝物庫』へご招待しましょうか?」
暗がりの中で、どこからともなく現れた大怪盗
ルナが、俺の耳元で怪しく囁いた。ルビー色の瞳が暗闇で妖しく光る。
「私の手枷を使えば、タツヤ様を誰にも奪われないようにしっかりと……私と繋ぎ止めておけますよ……♡」
「ルナまでヤンデレ化してきてるじゃねぇか!」
「タツヤ。肉を食え」
ベアトリクスがテーブルの下にまで巨大な骨付き肉をねじ込んできた。
上下左右、どこを向いても危険すぎるヒロイン
たちの愛(と欲望)が渦巻いている。
その時だった。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
突然、海面から響く不気味な振動が、酒場船全体を激しく揺らした。
「な、なんだ!? 地震か!?」
「いや……違う! 海の底から、何かが上がってくる!」
バルバロッサが一瞬で酒気を吹き飛ばし、鋭い眼光で海面を睨みつけた。
ザバァァァァァン!!!!
水上都市バーミューダの周りの海が割れ、巨大な漆黒の潜水要塞——【深海魔導潜水艦】が姿
を現した!
潜水艦のハッチが開き、そこから立ち上ったのは、禍々しい紫色の魔力を身に纏った一人の美女。
「ふふふ……見つけましたわよ、男神様……♡」
妖艶な笑みを浮かべ、黒いドレスを風にはためかせるその女性の胸元には——世界を裏から操る闇の組織【黒の結社】の紋章が刻まれていた。
「我が名は【深海の執行者】カミラ。……世界中の女どもが奪い合う『至宝』……私たちが奪い去り、洗脳して『黒の種馬』として使わせていただきますわ!」
「黒の種馬って言うなァァァっ!!」
帝国、世界樹のヤンデレ女王、十万の女海賊、そしてついに現れた闇の組織【黒の結社】!
男一人を巡る世界規模の強奪戦は、海上都市バーミューダで更なる大波乱を迎える——!




