【第28話】 南海の海賊連盟と、十万の女海賊(肉食獣)
ザザーーッ……ザバァァァン!
雲海を抜け、高度を下げた飛空艇【ルナティック号】の眼下に広がっていたのは、どこまでも透き通るエメラルドグリーンの大海原だった。
そして、その中央に聳え立つのは——何千隻もの大小様々な海賊船を鎖と木造の橋で繋ぎ合わせて作られた、巨大な水上無秩序都市【バーミューダ】。
「す、すげぇ……! 街全体が船でできてる……!?」
甲板の手すりに身を乗り出し、俺は感嘆の声を上げた。
「へっ! 驚くにはまだ早いぜタツヤ!」
俺の隣で、空賊船長バルバロッサが豪快に黒いマントを翻す。
「ここが俺のホームグラウンド、海上都市バーミューダだ! 聖王国の法も、学園都市のルールも、帝国の軍隊もここには届かねぇ。力と酒と女がすべての自由の港町よ!」
「自由すぎるのも考えものだけどな……」
俺が冷や汗を流していると、ルナティック号は水上都市の中心部にある巨大なドックへとゆっくりと着水した。
ドスン……!
ハッチが開き、俺たちが水上デッキへと足を踏
み出そうとした——その瞬間。
「「「「お頭ぁぁぁぁぁっ!! お帰りなさいませぇぇぇっ!!」」」」
ドドドドドドドドドッ!!
地鳴りのような歓声とともに、デッキを埋め尽くすほどの女海賊たちが押し寄せてきた!
露出度の高い革のビキニ鎧や、海賊服に身を包んだ、褐色の野性的な美女たち。その数、ゆうに数千人!
「バルバロッサお頭! 今回の獲物はどうでしたか!?」
「って、ちょっと待って……お頭の隣にいるあの華奢な男……」
「ウソ……本物……? 男……!?」
一瞬の静寂。
次の瞬間、数千双の瞳が怪しくギラリと光り輝いた。
「「「「ほんものだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!(狂喜)」」」」
「キャーッ! 男の生きてる匂いがする!」
「抱きしめたい! 押し倒したい! お持ち帰りしたい!」
「お頭! その男、私たちの新しい『船長(旦那)』にしてくれるんですか!?」
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
十万の女海賊から放たれる熱気と欲望の波動が、海面を津波のように波立たせる!
「ひぇぇっ!? 学園都市の女子生徒より肉食度が高すぎるだろ!!」
俺は思わず後ずさった。
学園都市の美少女たちが「お上品なアプローチ」なら、こちらの女海賊たちは「力ずくの強奪」がデフォルトなのだ!
「せ、生徒会規約適用外の地域とはいえ……こ
れはあまりにも品性が欠けておりますわ!」
シルヴィアが突剣を構え、俺の前に立ち塞がる。
「タツヤに指一本でも触れてみなさい! 爆破す
るわよ!」
シャーロットがツインテールを逆立てて魔力弾を練り上げる。
「タツヤの周囲三メートルは不可侵領域。近づ
く者は斬る」
影から姿を現したレンが短剣を閃かせる。
「へっ、威勢がいいねぇお嬢ちゃん方!」
女海賊たちの先頭に立っていた、眼帯をしたド派手な大柄の美女——副船長**【ジェシカ】**が、巨大なバトルアックスを肩に担ぎながらニヤリと笑った。
「だがな! このバーミューダじゃ、学園のルールも騎士の面目も関係ねぇんだよ! 男はお頭の獲物……つまり、俺たち【バルバロッサ海賊団】全員の共有財産(旦那)だ!」
「「「「そうだ! そうだ! 男を差し出せぇぇぇっ!!」」」」
「野郎ども……静かにしやがれぇぇぇっ!!」
バァァァン!!
バルバロッサが腰の魔導銃を天に向けてぶっ放した。
凄まじい銃声と覇気が港全体に響き渡り、狂乱していた女海賊たちが一瞬でピタリと静まり返る。
「お、お頭……?」
バルバロッサは堂々とした足取りで皆の前に進み出ると、俺の腰をグッと強引に引き寄せ、自らの豊かな胸に抱きかかえた。
「勘違いするなよ、ジェシカ。そして野郎ど
も。……こいつは俺たちの『共有財産』じゃねぇ」
バルバロッサはニヤリと不敵で魅力的な笑みを
浮かべ、十万の女海賊に向かって高らかに宣言した。
「こいつは……俺が心底惚れ込んだ、世界でたった一人の『俺の男(お頭)』だ!!」
「「「「ええええええええぇぇぇぇっ!?!?!?」」」」
港全体が揺れるほどの絶叫が上がった。
俺自身も「えぇぇぇっ!?」と大声を上げた。
「お、お頭が……男一人の専属になっちまっただと!?」
「あの男嫌いで有名な『極悪のバルバロッサ』が!?」
「フッ……文句があるなら、海賊のルールで来い!」
バルバロッサは酒瓶を片手に掲げ、叫んだ。
「今夜は……【男神降臨&お頭の婚約大宴会】だぁぁぁっ! 酒を持ってこい! 肉を焼けぇぇぇっ!」
「「「「ウォォォォォォォッ!!!!」」」」
恐怖の強奪戦から一転、港は狂乱の「大婚約パーティー(大宴会)」へと突入してしまった!
「ちょっと待ちになさいバルバロッサ!」
シルヴィアが額に青筋を立てて詰め寄る。
「いつの間にタツヤさんと婚約したのですか!? 認めませんわ! 生徒会として断固抗議します!」
「そうよ! なんであんたが一番乗りみたいな顔してるのよ!」
シャーロットも激怒。
「……タツヤ、酒に毒を盛られないよう、私が毒味する」
レンが俺の杯をじっと見つめる。
「タツヤ、肉を食べろ。元気が出る」
ベアトリクスが巨大な肉塊を俺の口に放り込ん
でくる。
(助かった……のか? いや、全然助かってない!!)
十万の酔っ払い女海賊たちと、嫉妬に燃えるメインヒロインたちに囲まれ、俺の命と貞操を賭けた夜の宴が、今まさに幕を開けようとしていた——!




