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【第23話】【世界逃走編】開幕! 旅立ちの夜と、危険すぎる一泊目

「逃避行って……本気で言ってるのか!?」


裏山の草むらの中、俺は声を潜めながら思わず叫んだ。


「当たり前だぜ!」


空賊船長バルバロッサが、口元の煤を乱暴に拭

いながら不敵に笑う。


「帝国の【グラン・ガイザル】が本気で攻めてきた以上、学園都市(ここ)はもう主戦場だ。ここに残ってたら、お前は遅かれ早かれ帝国のドS少将に引っ捕らえられて『国家繁殖マシン』にされちまうぞ?」


「絶対に……阻止する」


レンが影の中から低く呟き、手裏剣の刃を冷たく光らせる。


「そうですわ」


シルヴィアが突剣の柄に手を当て、真剣な眼差しで俺を見つめた。


「学園の防衛結界が突破された今、この街にタツヤさんを安全に匿える場所はありません。……なら、私たちがタツヤさんを連れて世界中を移動し続けるしかありませんわ!」


「幸い、移動手段なら私の『隠し飛空艇』があります」


怪盗ルナが優雅にシルクハットを被り直し、指を鳴らした。


「帝国のレーダーを撒ける超小型・超高速の魔導飛空艇【ルナティック・号】……今夜、みなさんを乗せて大空へエスケープしてみせますよ」


「……決まりだな」


ベアトリクスが大剣を肩に担ぎ、鼻を鳴らす。


「俺の『つがい』を誰にも渡さん。世界の果てまでついていくぞ、タツヤ」


「ちょっと待ちなさいよ! 私の実験機材と媚薬のレシピも持って行くわよ! タツヤの『観察』は旅先でも継続よ!」


シャーロットが巨大なバックパックを担いで息巻いている。


(脱出するのはありがたいけど、同行するメンツの危険度が全員限界突破してる件について!!)


だが、迷っている暇はなかった。


ゴォォォォォン……!!


山道を揺らすような重低音が響き、学園の広場と男子寮の方向から、クラリス少将と理事長エレオノーラの激しい交戦音が聞こえてくる。


「行きましょう、タツヤさん!」


シルヴィアに手を引かれ、俺たちは夜の裏山を駆け抜けた。


山頂の隠された洞窟の奥——そこに鎮座していたのは、ルナの言葉通り、漆黒と銀の装甲で固められた流線型の美しい小型飛空艇だった。


「全員乗り込んで! 出航です!」


ブスススス……バシュゥゥゥン!!


静音魔導エンジンが覚醒し、飛空艇【ルナティック号】は、追っ手の帝国軍艦隊に気づかれることなく、月光の雲海へと静かに飛び立った。


下を見降ろせば、遠ざかっていくアルカナム学園都市の夜景。


転移してから波乱続きだった思い出の場所が、雲の彼方へと消えていく。


(脱出した……! 俺、とりあえず生き延びたんだ……!)


安堵の息を破裂しそうなほど吐き出した俺は、操縦席の横のふかふかシートに沈み込んだ。


「ふぅ……これで、とりあえずは一安心だな……」


「ええ……本当に……」


隣に座ったシルヴィアが、ほっとしたように胸を撫で下ろす。


……そう、脱出は成功したのだ。


だが俺は、決定的な問題を見落としていた。


この超小型飛空艇には、『寝室(休憩スペース)』が一つしか存在しないということを。











深夜二時。


高度三千メートルの上空を巡航する飛空艇の、小さな後部居住区(レストルーム)。


部屋の真ん中には、二人掛け用の小さなソファと、小さなシングルベッドが一つ。


そこに集まったのは——


生徒会長シルヴィア、天才魔導士シャーロット、くノ一レン、大剣使いベアトリクス、空賊船長バルバロッサ、大怪盗ルナ……そして俺。

全員が、お互いを凄まじい殺気で牽制し合っている。


「……タツヤさんは今日の戦いで一番疲れていますわ。私が隣で添い寝をしてあげます」


シルヴィアが当然のようにベッドへ足を踏み出そうとする。


「待ちなさいよ生徒会長! 疲労回復には私の特製アロマポーションと、私の添い寝(物理)が一番効くに決まってるでしょ!」(シャーロット)


「ハッ、子供は引っ込んでな。長旅の夜は、この俺の豊満な胸に抱かれて眠るのが一番安らぐんだよ」(バルバロッサ)


「タツヤの枕になるのは私だ。影の温もりを与えてやる」(レン)


「ふふ、鍵はすでに私が閉めました。今夜は私とタツヤ様のお泊まり会です♪」(ルナ)


「……俺のつがいの隣は、俺のものだ」(ベアトリクス)




「みんな落ち着いて!! ベッドは一つしかないんだよ!?」


俺は悲鳴を上げた。


「大丈夫ですわタツヤさん」


シルヴィアが凛々しく(しかし頬をピンクに染めて)突剣の柄を握り締めた。


「これより——【第1回・世界逃亡記念! タツヤさんの『隣で寝る権利』争奪・深夜の枕投げ(ガチバトル)】を開催します!!」


「枕投げのスケールが命がけなんだよぉぉぉ

っ!!」


学園を脱出し、世界へと飛び出した俺。

だが、狭い飛空艇の中で繰り広げられる「過酷すぎる一泊目」から、俺の純潔を賭けた世界逃走劇はスタートするのだった——!


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