【第20話】同居人争奪戦と、魅惑の男子専用寮
「頼むから、一人で静かに寝かせてくれぇぇぇっ!!」
温室から逃げ出した俺は、夕暮れに染まる学園の広場で叫んだ。
目の前では、五人のヒロインたちが「誰がタツヤの夜のガード(=同居人)になるか」を巡って、互いに殺気立った眼光を交わし合っている。
「タツヤさん、我が『生徒会長専用宿舎』なら最高峰のセキュリティが整っていますわ! ベッドもキングサイズで、二人で寝てもゆとりがあります!」(シルヴィア)
「サイズの話をしてるんじゃないでしょうが! 私の特命研究室なら、防音・遮音・魔法障壁が完璧よ! 私と二人きりで朝まで濃密な『観察』ができるわ!」(シャーロット)
「へッ、お堅い部屋じゃ息が詰まるぜ。俺の空賊船のラグジュアリー個室に来な! 毎晩極上の酒と、この俺の最高のおもてなし(物理)付きだ!」(バルバロッサ)
「私の影に入れば、そもそも部屋すら不要だ。どこでも私の温もりを感じられる」(レン)
「ふふ、私の隠れ家へお連れしましょうか。手枷と鍵はもう用意してありますよ♪」(ルナ)
(全員提案がアウトなんだよなぁぁぁっ!!)
誰の提案に乗っても、その日のうちに俺の「純潔」が奪われる(あるいは物理的に社会死する)未来しか見えない。
俺が頭を抱えて冷や汗を流していると——
「あーらあら。夕方から元気がよろしいことですわね、お嬢さんたち?」
カツン、カツンと優雅なヒールの音を響かせて現れたのは、学園理事長のエレオノーラだった。
「理事長……!?」
シルヴィアが警戒露わに構える。
「何の用ですの! またタツヤさんを飛空艇で連れ去るつもりですか!?」
「失礼ね、生徒会長。私は学園の管理者として、この可憐な『最後の男性』のために、最も適した環境をご用意しただけですわ」
エレオノーラは扇子を優雅に開くと、鍵束をチャラりと掲げて見せた。
「学園の敷地内に、100年前まで使われていた**【旧・男子専用寮】**が存在しますの。そこを急遽、最高級の防魔・防音・防犯設備でリフォームいたしました」
「「「「「男子専用寮……!?」」」」」
「ええ。完全なる個室。防犯結界は学園最強。
いかなる女子生徒の侵入も許さない、タツヤ様だけの『絶対安全地帯』ですわ」
(ま、マジか……!?)
俺の目が輝いた。まさに俺が求めていたシェルターじゃないか!
「ただし——」
エレオノーラは妖しく口元を歪めた。
「寮の『管理人』として、私やこのお嬢さんたちの誰かが『常駐監視』する必要がありますけれどね……♪」
「やっぱりそうなるのかよ!!」
「ならば話は簡単ですわ!」
シルヴィアがすさまず前に出た。
「その男子専用寮の『同居枠(管理人)』を賭けて……今ここで、私たちで決着をつけましょう!」
「乗ったわ! 私の爆炎魔法で全員焼き尽くしてやるわ!」
「ハハハ! 空賊の腕っぷしを見せてやるぜ!」
「タツヤの隣は譲らない」
「手枷の準備はできています♡」
五人のヒロイン+理事長エレオノーラによる、**「男子寮の鍵(とタツヤの同居権)争奪バトル」**がまさに爆発しようとした——その時。
ゴォォォォォォン……!
学園の時計塔が、放課後の終わりを告げる鐘を響かせた。
それと同時に、学園の広場を囲む巨大な魔導スクリーンが一斉にノイズを走りらせ、不気味な青い光を放ち始めた。
「ん……? 何事ですの?」エレオノーラが眉をひそめる。
スクリーンに映し出されたのは——漆黒の軍服に身を包んだ、銀髪の冷酷そうな美女の姿だった。
胸元には、この世界の最大軍事国家『帝国ガイザル克』の最高幹部の章。
『聞こえるか、アルカナム学園の愚民どもよ』
スクリーンの中の冷血な軍人美女は、氷のように冷たい眼光で画面越しにこちらを見下ろした。
『我らは『帝国ガイザル克・総司令部』。これより貴校に対し、要求を言い渡す』
学園広場の空気が凍りつく。
『100年ぶりに現れた【伝説の男性遺伝子】……その少年を、直ちに我が帝国へ引き渡せ。さもなくば——』
画面が切り替わり、アルカナム学園都市の上空を埋め尽くす、帝国軍の超大型魔導要塞艦隊の映像が映し出された。
『我が帝国の誇る【魔導殲滅砲】により、その学園都市ごと跡形もなく蒸発させる』
「「「「「なっ……!?」」」」」
学園中から女子生徒たちの悲鳴が上がった。
学園内のヒロイン争奪戦という「お内輪揉め」を楽しんでいた俺たちの前に、ついに**世界最強の『軍事国家』**が、本気の軍勢を率いて武力介入してきたのだ!
「タツヤ様……」
レンが俺の前に滑り込み、短剣を握り直す。
「ハッ……面白い。学園のガキの喧嘩に、軍隊がしゃしゃり出てきたか」
バルバロッサが不敵に笑う。
「タツヤさんは……絶対に渡しません!!」
シルヴィアが突剣を高く掲げ、全学園生徒に向かって叫んだ。
「全校生徒へ告ぐ! 帝国の脅迫に屈してはなりません! 100年ぶりの『男神様』の貞操と命は……私たちが死守します!!」
「「「「「オーッ!!!!」」」」」
五千人の女子生徒たちの地鳴りのような歓声が響き渡る。
学園都市アルカナム VS 帝国軍。
俺の『遺伝子』と『貞操』を巡る戦いは、ついに**国家の存亡をかけた世界大戦(?)**へと規模を拡大していくのだった——!




