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繰り返す朝が終わる日 ~始まりは、恋する令嬢の小さな願いでした~  作者: たま


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4/19

諦めた朝

そして、また、あの朝が、来た。


私はもう、何か諦めてしまった。

張りつめていた糸が切れてしまったように、これ以上何もしたくないと思ってしまった。

もう全てどうでもいい、と投げやりな気分になる。


だけど。

どうやっても、このまま、なのなら。


私は、やっぱりハロルド様と笑いあって過ごしていたい。

たとえまた同じ日を繰り返すとしても。

あんな顔で、あんな声でハロルド様に見つめられるなんて、耐えられない。

そして、ハロルド様を傷つけてしまった自分が一番許せない。

彼には、いつだって屈託なく笑っていて欲しかった。

あんな顔、させたくなかった。

だって、私はハロルド様のことが大好きなのだから。

私の隣で、いつでも笑っていてほしい。

ううん、きっとこれはただの言い訳だ。

彼のあの態度をもう一度受け止めるほど、私は強くなれなかっただけなのかもしれない。


学園に向かう足取りも重い。

だが、今回は受け入れた。

いや、受け入れるしかない。

だって、私が何をどうしても、この繰り返しは終わらないのだから。

前回の私は、友人ともぎくしゃくして、ハロルド様ともぎくしゃくして、すべてが裏目に出ていた。

ビクビクと怯え、すべてに疑心暗鬼になって。

そんな私と一緒にいたくなんて、誰も思わないだろう。

表面上は当たり障りなく振る舞う友人たち。

だけど少しずつ、少しずつ、距離は開いていった。

友人の顔に浮かぶ笑みは、社交場のものだと気が付いた。

本心からの笑みではないと知ったとき、身を切られるような痛みが走った。

ハロルド様だけでなく、友人までも失ったのだ。

それは、とても悲しくて、寂しいことだった。

どうせ同じことを繰り返すのなら、やはり楽しいことの方が嬉しい。

だから……少しだけ引きつるように笑う私に、どうか気づかないで。

笑って。


お願いだから。




始業の鐘が鳴る。

いつもと同じ授業、同じ顔ぶれ。

もう何度も聞いた講義は退屈で、つい窓の外に視線を逸らす。

だが、この講義を受け持つ厳格なミズ・イネスは、それを許す方ではなかった。


「エルシー嬢、ここの問題点は?」


いきなり名前を呼ばれ、驚いて顔を上げる。

それなのに答えは、するりと口をついて出た。


「はい、ミズ・イネス。

コールストル沿岸の作物の不作は、同じ植物を何度も繰り返して作られたことによるものだと推測されます」


ミズ・イネスが目を見開いた。

いや、周囲の女学生たちも、一瞬静まり返った。

だって、これはまだ習っていない範囲の問題で、そして最近の研究結果なのだから。

……そして、何度もミズ・イネスが授業で教えてくれた内容なのだもの。

きっと知らないうちに覚えてしまったものの一つなのだろう。


「この問題は最近の研究で、ダーリントン卿が発見しました」


「せ、正解です。

この問題は最近の研究で、ダーリントン卿が発見されましたね。

よく存じておりましたね、素晴らしいわ」


心の中で、私も同じ言葉を呟く。

よく存じていた、も何も、何度も同じ勉強をしているのだから、覚えていて当然だった。

少しずつ、授業で習うすべての学問が理解できるようになってきた。

それも当然、私は何度も同じ講義を受けているのだから。

ただ、一気に成績が上がるのも問題なのだろう。

手加減が難しいと感じる。

ハロルド様との打ち合わせも、笑顔が増えた。

実行できないウェディングの打ち合わせは悲しいけれど、

一緒に笑い合っている方が、ずっと嬉しい。

だって、この打ち合わせ内容も、また一から繰り返すのだから。

けれど、少しずつ、前とは違う台詞が出てくる。

毎回、全く同じではない。

そう思うと、今回はなんて答えるかしら、という悪趣味な楽しみも湧いてくる。

きっと、私は根っからの楽天家なのだろう。


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