表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
繰り返す朝が終わる日 ~始まりは、恋する令嬢の小さな願いでした~  作者: たま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/19

確信

そして、四度目の朝が来た。

悲鳴を上げなかった私を、誰か褒めてほしい。

おかしい、異変だ。

身体がガタガタと震えてしまうのを止められない。

既視感なんかじゃない。

どうしよう?

どうすれば?


考えても、答えは出ない。

なぜ私だけ?

どうして他の皆は、覚えてないの?

繰り返す朝、

繰り返す時間。


何か、きっかけがあるはずなのに。

そのきっかけが分からない。

私の不安定さが伝わったのか、今回は私とハロルド様の仲ですらぎこちない。

好きなのに、怖い。

好きだけど、言えない。

その後ろめたさが、私からハロルド様を遠ざける。


「何か、悩みごとがあるのかい?」


そう優しく聞いてくれる、彼の顔すら見られない。

彼も戸惑っているのだ、あの朝からいきなり私の態度が変わったのだから。

でも言えるわけがない。

同じ時間を何度も繰り返しているなんて。

言ったら最後、きっと婚約は返上、私は伯爵家を継ぐこともなくなるだろう。

運が良ければ修道院に入れてもらえるかもしれない。

ただ頭がおかしくなったと思われているのであれば、それは……叶わないだろう。

どうしよう。

気だけが焦る。


外商が持ってきたブローチを見て、悲鳴を上げそうになった。

悲鳴はかろうじて飲み込んだものの、急速に顔色が悪くなる私に、父は慌て、うやむやのまま購入は見送った。

だって、あのブローチだ。

形も、輝きも、忘れるはずがない。

もう耐えられない。

四葉のブローチなんて、二度と見たくない。


なのに、それは私の下にきた。

ハロルド様が私に、とプレゼントしてくれたのだ。

そう、紛れもない、あの四葉のブローチを。

私は、四葉の形のモチーフが好きだった。

ハロルド様に差し上げたハンカチにも刺繍していたし、自分のハンカチにも勿論刺繍していた。

ハロルド様が、私の好みをきちんと把握して選んでくださったのは、分かっている。

だけど、今、それは私を絶望に突き落とす刃にしか見えない。


「ありがとうございます」


その声が、受け取る手が、かすかに震えていたとしても、誰が私を責められるだろうか。

この事を知っているのは、私だけ。

傍から見れば、私の行動は拒絶以外のなにものでもないだろう。

もちろん、ハロルド様も例外ではない。


そうして、あの日、キスをねだった日。

あの東屋で。


「せめて少しは取り繕ってくれないか?

いくら僕の事を気に入らなくても」


口元には笑みを浮かべているのに、まるで他人のような声音で、そう懐疑的に言われた。

ハロルド様は微笑んでいるのに、私達の空気はまるで凍えるかのように冷たい。

熱い目で私を見てくれていたハロルド様は、そこにはいなかった。

ただ、冷たい目をして私を見ていた。

あんな低い声で、視線で私を見たことなんか一度もなかったのに。

あぁ、違うのに。

私が言葉を探している間にも、ハロルド様の指先が、わずかに強くテーブルを押さえているのが見えた。


この場に及んでも、私は真実を言うべきか迷ってしまう。

そう、彼の疑いも当然だ、と思う自分もいるのだ。

何か言い訳を考えようとしても、私の頭では難しかった。

それに、言い訳なんて出来るはずがない。

だって。

事実、あの時、東屋で無邪気にキスをねだった私は、もういないのだから。


絶望が胸を支配する。


「見送りは、結構だ」


席を立つハロルド様に、声をかけることすらできなかった。

彼の背中は、実に雄弁に拒絶を伝えていた。

ハロルド様以外に好きな人なんていない。

そう言いたかった。

だけど、言えなかった。

言えるわけが、なかった。


何度も繰り返す時間が怖くて。

事実を話すことで、嫌われたくなかった。

頭がおかしい、変な女だと思われたくなかった。


そうして、結局。


私は自分のことしか考えていなかった。


ハロルド様の優しさも想いも全て拒絶したのは、他でもない私だという事実。


彼に失望されるほど、私は彼を傷つけてしまった。

そんなつもりはなかったのに。

だからといって、私がした態度が許されるわけでもないのだ。

何をどう言っても取り返しがつかない、それが嫌というほど分かってしまった。。

私は、ただ呆然と彼の後ろ姿を見つめるしかできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ