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繰り返す朝が終わる日 ~始まりは、恋する令嬢の小さな願いでした~  作者: たま


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浅はかだった

「私の望んだ未来?

そんなの、知らない」


気が付けば、声に出ていた。


だって、やっぱり私は。

目の前の、リリア様を放っておけない。


「なんで?

じゃ、リリア様の幸せはどこにあるの?

何で巻き戻したの?

チャールズ様を助けるためでしょ?

そんなプレゼントいらない、足掻いてよ、もっと!

頑張ろうよ、私だって頼りないけど、力になるからっ」


泣きながら、リリア様に向かい大声を出していた。


「は?」


リリア様の冷たい声が場を支配する。

思わず、怖気づいて私は黙ってしまった。


「何を言ってるの?

ねぇ?

貴女に何が分かるというの?」


声が一段と低くなる。


「ねぇ、想像してみて?

貴女の大事なハロルド様、貴方がどう足掻いても頑張っても毎回死んじゃうのよ?」


その声は私にまとわりつくような、ねっとりとした話し方で。


「何回も、よ?

自分の大好きな人が、ね。

自分のせいで死ぬのよ?

病気なら、まだ諦められる。

だけど、私が聖女だから、殺されるのよ?

あんな誠実で素敵な人が、よ?

私なんかの為に、死んじゃうの。

それが、どんな事だか本当に分かっているの?」


静かな絶望を含んだ声は、私の独りよがりの想いなどを打ち消す。

その瞬間。

あの時のハロルド様の声が蘇る。


「エルシーに何かあったら、僕は生きていけない」


無理はするなと、私を気遣う優しいハロルド様。

あの穏やかな笑顔、優しく私の名前を呼ぶその声。

エスコートする手の温もり。

とても真面目で、ちょっぴり不器用な、そして私の大好きな、大切な婚約者。

その、ハロルド様が何度も。

何度も死んでしまう。


「……っ」


胸の奥がぎゅっと締めつけられる。

想像するだけで、こんなに苦しい。

耐えられるはずがない。

きっと足掻く、何度でも。

あの微笑みを取り戻すまで。

……繰り返す。

あぁ、そうか。

だから、あの朝を何度も繰り返したのね、私は。

あぁ、あぁ。

私は、何て。

何て浅はかだったのだろう。

そんなの、とっくにリリア様だって試していたはずなのに。


だけど、そんなの耐えられないじゃない。

リリア様が大切な人を失うのに、世界が平和なんておかしいじゃない。

彼女の犠牲の上に立つ、平和なんて。

聖女は幸せを運んでくれるのに、その聖女が幸せじゃないなんて。

聖女の犠牲、聖女。

……聖女。

私達が教会で習う聖女の伝説は。


聖女伝説

王国に、若き王と若き王妃がいた。

国はまだ成立したばかりで脆く、政も軍も安定していなかったが、二人は仲睦まじく、力を合わせ、共に国を築いていた。

だが、その不安定さは隣国にとって格好の標的となる。

王妃の美貌に目を付けた隣国の王は、次第に理不尽な要求を突きつけるようになった。

それは明らかに戦争を誘うための口実だった。

そして、国力の差は歴然としていた。

それでも王と王妃は協力し合い、知恵をもってそれを退けたという。

戦わず、躱し、譲るべきものと譲れぬものを見極め、戦争を回避した。

到底不可能とされた回避。

その渦中で、王妃はまるで神託を受けたかのように振る舞い始めたという。

事実、王妃は神から啓示を受けた。

夫たる王へのその愛が奇跡を起こしたのだ、と。


愛をもって神意を受け取る力。

それが、聖女の始まり。


王家に必要とされるその資質は、今もなお王妃に聖女が選ばれる理由だと言われている。


幼いころからずっと聞かされていたこの王国の成り立ち、ううん、聖女伝説ともいわれる昔話。

でも、これ、実際は。


小さく身体が震える。

思わず両手で自分を抱きしめた。


王妃様は、時間を繰り返していた?

だから、不可能と思われる戦争を回避できた。

きっと、何度も、何度も足掻いて。

ようやく、たどりついた果ての、歴史。

そんな、まさか。

そんなはずない。

そんなおかしい話、あるわけない。

そう言い切りたいのに。


言い切れない。

だって、私も。


ゴクリと喉が鳴る。


繰り返している。


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