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星脈と位相の狭間で  作者: 黒
アレシス学院編

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第41話:不思議な少女と怒りの少女、フィーナvsライカ



 準決勝第1試合の熱がまだ引ききらないうちに、次の試合が始まった。


「準決勝第2試合!フィーナ選手対ライカ選手!」


 控えの入口から、フィーナが音もなく歩き出す。周りの様子など気にすることもなく舞台へ上がった。


 反対側から出てきたのは肩の上で乱雑に切りそろえた髪の女子生徒だった。制服の袖を肘までまくり上げ、片手で首の後ろを掻きながら舞台に上がってくる。


「あー、だりぃ!」


 柵の外まで届く声だった。近くにいた生徒が数人、顔を見合わせる。


「誰、あの人……」

 ルリが小声で聞いた。


「治安わりーな…」


「2回戦の最後の試合で勝った子じゃない?」

 ミオがコップから口を離す。


「あー、あれか。1回戦で一瞬で終わらせたやつ」


 エルダーが柵に肘をついた。


 舞台の中央でライカが肩を回す。気だるげな目でフィーナを見たあと、指をさして話した。


「なあ、あんた強ぇーんだろ。無傷でここまで来たからには」


 フィーナは答えない。視線だけをライカへ向けている。


「無視かよ」


 舌打ちが聞こえた。そこで、フィーナが口を開く。


「違う。楽器を演奏するの」


「……は?」


「無視してたら鍵が出ない」


 抑揚のない声だった。ライカの眉が寄る。


「何言ってんだお前」


 フィーナはそれ以上続けなかった。ライカが乱暴に頭を掻きむしる。


「あーもう!ムカつくなあ、おい」


 指先が、ぱちりと弾けた。空気が擦れるような音とともに、腕のまわりに細い光の筋が這っていく。



 審判が両者の間から下がった。



「はじめ!」


 ライカの両手が胸の前で合わさる。腕に這っていた光が一点へ集まり、束ねられていく。空気が乾いた音を立てて軋んだ。


 しかし、フィーナは動かない。


───パーティクルエミッション・ポルックス!


 白い柱のようにも見える光の塊が、フィーナへ向かって一瞬で舞台を裂いた。着弾と同時に爆風が膨れ上がり、結界の内側を白く塗り潰す。柵際の何人かが顔を伏せた。


 だがライカはそこで止めなかった。煙の中へ、続けざまに電撃を叩き込んでいく。1発ごとに舞台が跳ね、閃光が煙を内側から照らした。中の様子は誰にも見えない。


「ちょっとありゃー撃ちすぎだろ」

 エルダーが柵から身を起こした。眉間に皺が寄っている。


「見えてねぇのに撃ち続けるかよ、普通」


「フィーナさん!」

 ミオが柵を掴んで身を乗り出した。声は次の閃光と爆音に飲まれる。


「ちょっと、返事して!ねえ!」


 ルリは両手を口元に当てたまま、視線を舞台から外した。足元を見つめて、そのまま顔を上げない。


 ソラは舞台の方を見たまま動かなかった。


 打ち込むたび、確かな重さが返ってくる。捌かれる感触も、逸らされる感触もなかった。全部、入っている。


 ライカの手が止まった。


「……なんで」


 煙が流れ、輪郭が浮かび上がる。


 フィーナは立っていた。制服のあちこちが焦げ、覗いた腕に黒い筋が走っている。頬から顎にかけて煤が伸び、髪の先が縮れていた。それでも膝は折れていない。


「…ぽふ……」


 口を開き、黒い煙を少し吐いてからフィーナが自分の手のひらへ視線を落とす。しばらくそこで止まった。


 そして肩を落とした。


 片手が上がる。


「降参」


 審判の手が一拍遅れて上がった。


「こ、降参により決着!ライカ選手の勝利!」


 拍手はまばらだった。


「はぁ!?」


 ライカが声を張り上げる。


「ちょっと待てよ、おい!なんだそれ!やり合う気すらないじゃないか!」


 フィーナはもう背を向けていた。


「舐めてんのか!どういうつもりだ!」


 その背中の歩調は変わらない。焦げた裾を引きずるようにして、廊下の方へ消えていった。


 柵の外でも、言葉が続かなかった。


「……勝ったの、あの人なんですよね」


 ルリが確かめるように呟く。


「そういうことになるなぁ」

 エルダーが頭の後ろで手を組んだ。


「あの怪我、大丈夫なのかな……」

 ミオが柵から手を離して話した。


「服、破けてたし腕も少し焦げてたよね…医務室行った方がいいんじゃないかな」


「あの様子だと行かねぇだろ。自分で歩いてったしな」

 エルダーが顎を掻いた。


「……でも、なんで降りたんだろ」


「見た目こそボロボロだったけど、まだやれたよね」


「まあ、そう見えたけどな」

 ソラは舞台の方を見たまま、返す言葉を探していた。攻撃を受けたこともそうだが、反撃を一切しなかったのも気にかかった。


 少し離れた柵際で、リゼアが腕を組んでいた。ミオの声にも振り向かない。


「リゼアは?なんか分かる?」


 ミオが身を乗り出す。


「……」


 黙ったままその視線は舞台へ向いていた。


 そこへ審判の声が場内に響いた。




「これにて準決勝は終了!決勝は――リゼア選手対ライカ選手!」




 会場からざわめきと歓声があがる。


 舞台を降りたライカが、そのままドタドタと柵の方へ歩いてきた。リゼアの正面で足を止める。


「おいアンタ!決勝の相手だよな!」


「そうみたいね」


「アンタも見てたんだろさっきの!あのクソみたいな試合!」


 ライカが親指で舞台を指した。


「まっっったく気に食わねぇ!!試合前から意味不明なこと言われてムシャクシャしてたのに結果もこれだ!仕方ないからアンタで発散させてもらうから、覚悟しとけよ!!」


「……え?」


「え?じゃねえよ!」


 リゼアが小さな容器の蓋を開けた。甘いスープに浸かったナタデココたっぷり入っている。


「たべる?」


「食わねえよ!」


 ライカは柵を殴りつけて背を向け、まだ焦げた匂いの香る舞台を睨みつけてから、大声をあげながら廊下の方へと歩いて行った。


今回もお読み頂きありがとうございました!


今回は治安の悪いライカと謎の従者フィーナとの対決でした!困惑するライカ、仕方ない!ライカとリゼアの対決はどうなるのか、是非次回もよろしくお願いします!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は9月7日(月)6時を予定しております。


何卒よろしくお願いします!


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