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星脈と位相の狭間で  作者: 黒
アレシス学院編

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第40話:友達との真剣勝負!



 部屋の隅で、ミオは何度も拳を握ったり開いたりを繰り返していた。


「よしよし、いける……いけるいける……」


 小声で自分に言い聞かせるように呟いている。何度も深呼吸を繰り返しては、拳を握り直す。壁に立てかけた木刀代わりの棒を意味もなく素振りしてみたが、すぐにやめた。

対するリゼアは壁際の椅子に腰掛け、涼しい顔で小さな容器からナタデココを掬っては口に運んでいた。


「……ねえ、今からそれ食べるの?試合前だよ?」


「別に。お腹減ってたし」


 こりこりという咀嚼音だけがやけに響いていた。ミオの視線がちらちらとそちらへ向く。


「ほら、一口」


 スプーンごと差し出され、ミオは反射的に口を開けてしまう。


「うむ、コリコリとした食感に甘いスープが絡んでとても美味であるな…」


もぐもぐと咀嚼した後、ハッと我に返った。


「じゃなくて!……美味しいけど!美味しいけどこんな時に何呑気に食べさせてんの!?」


「……おすそ分け?」


 ミオは大きく息を吐き、両手で自分の頬を叩いて気合を入れ直した。


「んぁ〜、もう!!ふぅっ!がんばるぞ!!」


 自分に喝を入れてから、舞台の方へと歩き出す。

 通路を抜け、舞台近くから柵の外をみるとソラたちの姿があった。ルリが小さく手を振る。


「ミオさん、頑張ってください!」


「無理すんなよー」


 エルダーの声援に、ミオは無理やり口角を上げてみせた。ソラは何も言わず、ただ小さく頷いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その後すぐに係員の声が響いた。


「準決勝第1試合!リゼア選手対ミオ選手!」


「はじめ!」



「こっちだって、何も出来ずにただ負けて終わりになんかさせないからね!!」


 合図と同時に、ミオは大きく後ろへ跳んで距離を取った。背中側に、炎の塊とその周りに渦を巻くような風の魔法が姿を見せる。ぶわりと空気が唸り、周囲の砂粒を巻き上げていく。この日のために特訓した、風と爆発を組み合わせた新技だった。


 リゼアの目が、僅かに細まった。


 一瞬の静寂が舞台を包む。


「……へえ」

 抑揚のない声で、それだけ呟いた。


 柵の外でも、ざわめきが一段大きくなった。


「あれ、ミオの新技か?すげぇな……」


 エルダーが身を乗り出す。ルリも息を呑んで舞台を見つめていた。


「ミオ、あんな魔法も使えるんだな」

 ソラが小さく呟いた。驚きと感心が入り混じったような声だった。


「――くらえ!」


 ミオが両手を振り下ろすと同時に、鋭い風を纏った熱風がリゼアへと押し寄せた。爆音が会場を揺らし、舞台の中央に土煙と閃光が広がる。


「や、やったか!?」


 フラグ、いや、わずかな期待を滲ませた声が漏れる。だがその期待はすぐに崩れることになる。


 煙の向こうから、リゼアが平然とした顔で歩いて出てきた。傷らしい傷は見当たらない。制服の裾すら乱れていなかった。その手の中には、握り込まれた大きさほどの、ぐしゃりと圧縮された何かが収まっていた。ミオの魔法そのものだった。


「えー!わっ、私の魔法が!!」


「昨日言ってたやつ、試してみる?」


 返事を聞くまもなく、圧縮された魔法から次々と分離した小さな塊がミオへと向かっていく。


「え、ちょ――」


 反射的にそれを避けるので精一杯だった。着地に失敗し、体勢が崩れる。


「危なっ……!」


 2つ目が追いかけるように迫る。転がるようにして辛うじて避けた拍子に、肘を舞台の床に打ち付けた。


 リゼアはそれを2つに、3つにと細かく分割しながら、間を置かずに放ち続けた。


「ちょっ、待っ、待って――!」


 舞台を右へ左へ逃げ回るミオの悲鳴が響く。3つ目をかろうじて紙一重で躱すと、体勢を崩したまま尻餅をついた。追撃の気配に、慌てて四つん這いのまま距離を取ろうとする。


「ま、まだ来るの……!?」


 涙目のまま両手を大きく振り上げた。


「まいった!まいりましたぁぁぁ!!」


 両膝を舞台につき、涙と鼻水がごちゃまぜになった声で叫ぶ。


「はいはい」


 リゼアはあっさり手を止め、最後の1つを空中で霧散させた。


「思ったよりやるじゃない」


 しゃがみ込んで、ミオの頭を軽くぽんと叩く。


「勝者、リゼア選手!」


「うへぇ…」

 審判の声に、ミオはその場にへたり込んだまま動けなかった。



 リゼアは少しご機嫌めに舞台の端へと歩き出した。


 柵の外では、エルダーが腹を抱えて笑い転げていた。


「あははは!最後の逃げ回り方、なんだあれ!!」


「笑い事じゃないですよ……ミオさん、大丈夫でしょうか」


 ルリが心配そうに舞台を見やる。ソラは苦笑しながら、係員に肩を貸されて下がっていくミオの背中を見送った。


「あれだけ本気で特訓した技があっさり片付けられるんだから、世の中理不尽だよなぁ」


 エルダーがしみじみと呟く。ルリも複雑そうな表情で頷いた。


 柵際に戻ってきたミオは、床に座り込むなり天を仰いだ。


「燃え尽きたぜ…何もかもな……」


 そこへ、涼しい顔のリゼアがひょっこり顔を出す。


「お疲れ様。次のナタデココ、奢ってあげよっか」


「慰められてる気が全くしない……」


「ヤケクソだ!ナタデココとタピオカのごちゃ混ぜドリンク飲んでやる!」


「それ、固形物ばっかで飲みにくくねぇか…?」


「ええねんええねん!!気にしない!」


 そう言うとミオを先頭に、ソラたちは試合後の腹ごしらえへと向かった。



今回もお読み頂きありがとうございました!


今回はリゼアとミオの対決のお話でした!頑張ったもののミオではやはりリゼアには勝てず…次はお食事タイムを挟んでの決勝戦です!お楽しみに!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は9月5日(土)6時を予定しております。


最近、原神にハマってしまってなかなか執筆が思うようにいかないこともあり…ローエンくんにミティヤくんに重雲くんに、可愛ええねん!!!!



次回も何卒よろしくお願いします!


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