↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星脈と位相の狭間で  作者: 黒
アレシス学院編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/63

39話:フィーナvsフレア



 試合終了後、しばらく誰も口を開かなかった。


 ミオは応援のために持っていたタオルを持ったまま固まっている。ルリは両手で口元を覆い、エルダーでさえ、いつもの軽口を飲み込んだままだった。ソラも柵に手をかけたまま、視線だけを舞台に向けていた。


 舞台の上でカレンが係員に悔しそうに下がっていくのを、皆がただ黙って見送る。分厚い氷は既に崩れ落ち、舞台の半分だけが不自然に濡れて光っていた。


「……なんか…すごかったね〜…」


 ようやく絞り出したミオの声も、いつもの元気はなかった。


 柵の外側でも、あちこちから戸惑いの声が漏れていた。


 エルダーがわざとらしく咳払いをする。


「い、いやぁ、さすがだよなぁ、リゼアは!氷像の展示即売会でも始めるのかと思ったぜ」


「今そういうテンションじゃないでしょ!?」


「いや分かってる分かってる、ちょっと空気変えたかっただけだって」


 ミオが咎めるように声を上げたことで、強張っていた空気が少しだけ緩んだ。ルリも小さく息を吐き、握っていた柵から手を離す。


「……リゼアさん、やっぱり規格外ですね……」


「あいつなら何やってもおかしくないし」


 エルダーが肩を竦めながら続ける。


「次の試合で手からナタデココ出してナタデココ爆弾ー!とかやっても俺もう驚かねぇぞ」


「いやそれは驚くだろ」


 ソラがすかさず言葉を返した。


「さすがにそんな事はしないと思いますけど…次、ミオさん多分リゼアさんとですよね」


 ルリの言葉に、ミオが「うっ」と小さく呻いた。


 柵の外がざわつく合間を縫うようにして、リゼアがゆっくりと歩いてきた。手にはまだ、うっすらと冷気の名残がある。


「よう、リゼア。今のはさすがにやりすぎじゃないか?」


 エルダーが苦笑交じりに声をかける。


「そう?普通にやっただけよ」


 抑揚のない声で返しながら、リゼアは柵に軽く肘を乗せた。


「ふ、普通って……」


 ルリが言葉に詰まる。


「ね、ね、さっきの脅し文句、あれ本当にできるの?」


 ミオが興味津々に身を乗り出す。


「さあ、どう思う?」


「次はどうせミオでしょ、試してみる?」


「え!?わ、私!?」


 ミオが悲鳴に似たような、怯えた声を上げる。


「あれだな、怪談話とかによくある次はお前だー!みたいな」


「ちょっとソラ!他人事だからって」


 慌てるミオを見てリゼアが小さく笑った。


 ちょうどそこへ、係員のアナウンスが割り込む。


「次、魔法科2回戦第3試合!フィーナ選手対フレア選手!」


 係員の声に、ミオがハッと顔を上げる。


「あ、フィーナさんとフレアさんの番だ!」


「フレアって子は1回戦で土の魔法張り合いながらずっと撃ち合ってた人だったか」


 ソラが思い出したように声を上げる。


「ああ、あの我慢比べみたいなやつか。結局、根負けさせて勝ったんだったよな」


 エルダーが頷きながら記憶を辿る。舞台に目を移すと、対照的な2人が舞台に上がってくるのが見えた。動じない無表情のフィーナと対するのは、燃えるような赤髪を靡かせた女子生徒のフレアだった。


「その無表情な顔、すぐぎゃふんと言わせてやるんだから!」


 開始線に着くなり、フレアが不敵な笑みを浮かべて拳を握った。フィーナは全く気にすることなく、ただ静かに定位置についている。


「フレアさん、なんか妙に気合い入ってません?」


 ルリの言う通り、フレアは開始の合図と同時に踏み込んでいた。


「――もらったぁ!」


 ──パーティクルエミッション・アンタレス!


 連続する炎の弾が、間髪入れずにフィーナへ1発、2発、3発と次々に押し寄せる。防御に徹するフィーナが、じりじりと後退させられていく。


「1回戦の時とは違ってえらく攻撃的だな」


 ソラは柵に軽く肘をつき、炎の弾幕越しにフレアの表情を窺っていた。


 フィーナは表情ひとつ変えず、最小限の動きで炎の軌道を逸らし続けている。だが、押し込まれる分だけ舞台の端が近づいていくのも事実だった。


「まだまだーっ!!」


 フレアが声を張り上げ、両手を左右に広げた。


 ──パーティクルエミッション・アンタレス!


 今度は散弾のように小さな炎が幾つも撒かれる。数の多さで防御を崩す狙いのようだったが、フィーナは半身になっただけで、必要な分だけを的確に弾き落とした。


「あんなに撃たれてるのに、涼しい顔してますね……」


 ルリが小声でこぼす。フレアの息は既に上がり始めていた。


「はぁ…はぁ……しつっこいわね…涼しい顔してないでかかってくるなり何なりしなさいよ!」


「……」


 フレアがフィーナに話しかけるものの、フィーナは無表情でフレアを見つめたまま動かない。


「もう怒ったんだから……これで終わりよ!」


 フレアがひときわ大きな炎の塊を頭上に形成させる。爆ぜるような閃光が舞台を包み、視界が真っ白に染まる。


──パーティクルエミッション・ベテルギウ…


 フレアが詠唱を行っている途中、フィーナが背後から現れた。爆炎と閃光で自らの視界も塞がれていたことに、フレアは気づいていなかった。


 そして、フィーナは静かに呟く。


 ──デジタルエミッション・キューブ


 背後から光線のような箱状のものが無防備な背中を撃ち抜いた。


「うにゃああああああああ!!!!!!!!」


 フレアの体が大きく吹き飛び、そのまま場外へと沈んだ。


「勝者、フィーナ選手!」


「見たことない魔法…」


 ミオが呆然と呟く。ルリも頷きながら、肩の力を抜いた。


「これにて本日の2回戦は以上!残る1試合の結果と合わせ、準決勝の組み合わせは明日の朝までに掲示板に貼り出す!」


 審判のアナウンスに、柵の外がどよめいた。


「え、今日はここまでなの?」


「ま、しゃねーだろ。お楽しみは取っとけってな」


 エルダーが伸びをしながら言う。ミオはまだ心なしか青い顔をしていたが、ひとまず詰めていた息を吐き出した。


「よし、今日はもう帰ろっか……」


「珍しく素直だな」


「今日は色々見過ぎて、なんかもうお腹いっぱい……」


 5人は賑わいの残る会場を後にした。


  

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌朝、掲示板前にはすでに人だかりができていた。


「うわ、また今日もこれか……」


 ミオが背伸びをしながら呻く。人垣の隙間から、ソラが対戦表を覗き込んだ。


「あった。準決勝の組み合わせ」


「え、どこ!」


 ミオが割り込むようにして隣に体をねじ込む。指でなぞった先に並んだ名前を見て、しばらく黙り込んだ。


「ですよねーーー…」


 なぞった先にあったのは、『リゼア対ミオ』の1文だった。


「ミオ、すごい顔してるけど大丈夫か?」


 エルダーの声にも、ミオはすぐには反応しなかった。顔は青白く、指先は少しだけ白くなっていた。


「……ねぇソラ」


 ようやく口を開いたミオの声は、震えていた。


「知ってた、知ってたけど……今から入れる保険って、あるかな…?」


 冗談めかそうとした声は、最後まで力なく萎んでいった。ミオはただ、虚空を見つめていた。


今回もお読み頂きありがとうございました!


今回はフィーナvsフレアのお話でした!

前話に続き、今回も実力者の2人が戦うお話でした。

次回はミオ対リゼアです!果たしてミオに勝機は…?次回もお楽しみに!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は8月31日(月)6時を予定しております。


何卒よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。