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星脈と位相の狭間で  作者: 黒
アレシス学院編

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第38話:絶戦・リゼアvsカレン



「や、やった……勝った……勝ったよね!?」


 ミオが喜びの声を上げてスキップをしながら柵に駆け寄る。エルダーが差し出した手のひらに、勢いよくハイタッチを叩き込んだ。


「痛って!力入れすぎだ!」


「だってめっっちゃ嬉しいんだもん!ねえソラ見てた!?最後のとこ!」


「見てた見てた」


 ソラが小さく笑って頷く。ルリも安堵の表情のまま拍手を送った。


「正直、途中はどうなることかと思いましたけど……よくあそこから立て直しましたね」


「でしょでしょ!?私にかかればこんなもんよっ!!」


「あ〜、お腹すいた!勝利のごほうびに何か食べたいっ!!」


「切り替え早っ!試合終わった直後にそれってさすがミオだな…」


 柵際でその様子を眺めていたリゼアは、何も言わずに視線を対戦表の方へ戻す。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「2回戦第2試合、リゼア選手対カレン選手!」


 舞台の上、カレンは静かに一礼した。その目に動揺の色はなかった。対するリゼアは、いつも通り無表情のまま定位置についた。


「はじめ!」


 審判の声と同時にカレンが先に動いた。足元から白い靄が広がる。


 ーーパーティクルエミッション・カペラ。


 靄が晴れると、舞台の半分に薄く氷が張っていた。


 リゼアは構わずカレンの方へ足を進める。一歩、また一歩。氷の上でも歩調は変わらなかった。


「おおぅ…強者の風格…」


 柵際でミオが感心したように口を開けている。


 カレンは表情を変えず、右手を軽く振る。


「まずはこれで――」


 リゼアの進行方向の氷から、鋭い柱が一本、勢いよく突き上がった。切っ先が服を掠め、薄い筋を作る。それでも足は止まらない。


 カレンは眉一つ動かさず、リゼアの歩みに合わせて柱を次々と突き立てていく。柱の表面からは無数の氷柱が鋭く伸び、行く手を塞ぐように突き出してきた。1回戦の勝ち方――一発の風で場外まで飛ばした、あの単純な力業ではない。


「今回は、逃げ場から削らせてもらうから!」


 左右から迫り出した氷柱が、リゼアを挟むように閉じていく。避ける素振りも見せないまま、かすった襟が薄く切れた。


 カレンはもう一段、突き立てる柱の数を増やした。


「まだよ――これで決める!」


 正面と両脇、三方向から氷柱が一斉に突き上がった。それが轟音とともに砕け散り、破片交じりの衝撃波が舞台を叩く。リゼアの膝が、初めてわずかに折れた。


 その直後、リゼアの纏う空気が変わった。


 音が沈む。氷の照り返しが一瞬曇り、柵際の温度が下がった気がした。ソラは鳥肌が立つのを感じた。


「……えっと、これ、決勝戦じゃないよね…?」

 ミオがあまりの試合の展開に呆然とする。


 カレンは再び氷を放とうとしたが途中で止まった。目の前で、リゼアが踏み出していた。進路を妨害していたはずの氷が、砕けながら崩れていく。体勢を崩す様子もなく、まっすぐ距離を詰めてくる。


「――ッ!」


 声にならない息だけが漏れた。距離はもう詠唱するだけの余地を残していなかった。


 カレンの喉から、短く上擦った声が漏れた。


「こないで…!!」


 氷の刃を続けざまに放つ。1発、2発、3発。狙いを絞る余裕もなく、とにかくがむしゃらに撃つのに精一杯になり狙いも乱れ始めている。


「くっ……なんで、当たらな……!」


 声が掠れる。詠唱の間隔が短くなるほど、威力そのものも薄くなっていく。それでも手を止めれば終わる――そんな焦りだけが、動きを加速させていた。


「まだまだね」


 リゼアはそれだけ言うと、片手を前へかざした。


 カレンが張り巡らせた氷の上に、真っ白で分厚い氷がみるみる内に重なっていく。柱も、足場も、砕けた欠片さえも取り込みながら、舞台の半分がひと回り厚みを増した氷塊へと変わっていった。


「嘘、そんな……」


 カレンの魔法が、上から丸ごと塗り替えられていく。同じ「氷」のはずなのに、密度も透明度もまるで別物だった。


「まだ続けるなら、このまま貴女以外――舞台ごと全部、氷漬けにするけど」


 声の調子は、これまでと変わらないままだった。


 カレンは荒い息を吐きながら、突き立てていた両手をゆっくりと下ろした。


「……参りました」


 絞り出すような声だった。両膝が崩れ、そのまま氷の上に膝をつく。柵の外では、誰も声を上げられずにいた。


「勝者、リゼア選手!」


 審判の声が響いた時、カレンはまだ氷の上に座り込んだままだった。舞台の端では、分厚くなった氷が音もなく崩れ落ちていた。


今回もお読み頂きありがとうございました!


今回は高い実力を持つカレンと、更にそれをも凌ぐ実力のリゼアの試合のお話でした。最早決勝のような魔法科の試合でしたが、この先はどうなるのでしょうか。ぜひこの続きも一読よろしくお願いします!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は8月26日(土)6時を予定しております。

何卒よろしくお願いします! 

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