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星脈と位相の狭間で  作者: 黒
アレシス学院編

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第36話:2回戦の対戦相手



 朝、訓練場の掲示板前にはすでに人だかりができていた。


「うわ、もうあんなに集まってるよ!」


 ミオが背伸びをして人の頭越しに覗き込もうとするが、届かない。


「ソラ、代わって見てよ!背高いし!」


「いや、少ししか変わらないし俺もよく見えないよ…」


 そう言いながらソラは前に出た。人垣の隙間から紙に書かれた対戦表が見えた。


「あった。ミオの名前……」


「え、どこどこ!」


 ミオが割り込むようにしてソラの隣に体をねじ込む。指でなぞった先に、自分の名前と並んで書かれた名前を見つけて、しばらく黙った。


「……ゴーエン?」


「知らない名前だな」


「誰これ、聞いたことない」


 周りの生徒たちも同じ名前を見て、ざわついていた。


「あ、あれじゃないか。ほら、あそこ」


 エルダーが指を指した先、訓練場の端に1人の男子生徒がいた。背丈はソラよりも頭一つ大きく、腕も足も丸太のように太い。上半身は着崩した制服の下からでも分かるほど筋肉が盛り上がっていて、立っているだけで相当な威圧感があった。


「え、うそ、あの人…?」


 ミオの声が裏返った。


「あの人と戦うの……? 絶対殴られたら一発で終わるやつじゃん」


「魔法科なんだろ、あいつも」


「見た目、完全に武術科じゃん! なんであんな体してんの!」


「さっきまでエアーパンチやってたの誰だっけ」


 ミオが両手で頭を抱えた。ルリも遠目にゴーエンを見て、顔を強張らせている。


「あの、僕も同じ相手だったら心臓止まってたと思います……」


「大丈夫、ルリは武術科だからあいつとは当たらない」


「そういう問題じゃなくて…」


 ソラは黙ってゴーエンの方を見ていた。地面にしゃがみ込んでは伸び上がる動作、スクワットを黙々と繰り返している。魔法の準備運動には見えない、ただの肉体トレーニングにしか見えない光景に、ソラは軽く眉を寄せた。


「なあ、魔法科なら魔法見たことある奴いないのか」


 ソラは周りの生徒の何人に聞いてみたが、皆が顔を見合わせた。


「見たことないな……そもそもあいつ、普段訓練場出てこないし」


「授業もほとんど休んでる噂聞くけど」


「じゃあ本当に魔法使えるのか?」


「使えなきゃここにいないだろ、1回戦勝ってきてるわけだし」


 誰も詳しいことを知らないまま、ただ見た目の威圧感だけが独り歩きしていた。ミオは半分泣きそうな顔でもう一度対戦表を見た。名前の横に、確かに「ゴーエン」の三文字があった。


「あ、いてててて…なんか急にお腹痛くなってきた気がする…」


「いや絶対仮病だろ、諦めるなよ」


「だって! あんなの絶対勝てないよぉ!」


 ミオが叫ぶと、少し離れた場所からリゼアの声がした。


「何なの、あんたたちうるさいわね」


 周りではすでに、自分の対戦相手を確認し終えた生徒たちがぽつぽつと散り始めていた。掲示板前の混雑も、いつの間にか落ち着いている。


「あっ、リゼア! リゼアの相手は誰だったの?」


 ミオが縋るように駆け寄ると、リゼアは対戦表の別の欄を指した。そこには「カレン」の名前があった。


「カレンさんと……」


「1回戦、魔法1発で相手飛ばしてた子だよね」


「そう」


 リゼアの声は普段と変わらなかった。表情も動かない。ただ、対戦表を見る視線だけが、その名前の上でわずかに長く止まっていた。


「大丈夫? カレンさん結構強いって噂だよ」


「別に」


 短く答えると、リゼアは踵を返して人垣を離れていった。ミオがその背中をぽかんと見送る。


「なんかリゼア、いつも通りすぎない……?」


「いつも通りだからいいんだろ」


 ソラが呟くと、ミオは唇を尖らせた。


「ソラも大概他人事だよね」


「他人事じゃないさ。応援はする」


「応援だけかい!」


 エルダーが横で笑い声を上げる。ミオはもう一度掲示板を睨んでから、深く息を吸った。


「第1試合、ミオ選手対ゴーエン選手!」


 審判の声が響いたのは、その直後だった。柵の外がどよめく。


「え」


「もう始まるのか、早いな」


「早いとかそういう問題じゃなくて! 心の準備が!」


「準備なら昨日からしとけって言っただろ」


「してないよそんなの! 現実逃避してたんだから!」


 ミオが半泣きで叫びながらも、係の生徒に呼ばれて控えの方へ引っ張られていく。


「が、頑張ってください……!」


 ルリが柵際から声を張り上げた。エルダーも「潰れて死ぬなよー」と軽口を叩き、ソラは黙って柵に肘をついた。


 舞台の中央、対角線上にゴーエンが姿を現す。歩くたびに地面を踏みしめる音が、遠くまで響くように感じられた。至近距離で見ると、その体格はさらに威圧感を増していた。ミオが震えながらも、精一杯の構えを取る。


「……あの、よろしくお願いします」


「……ああ」


 短く低い声だった。それだけで、柵際のミオを見守る三人にも緊張が伝わってくる。


「ねえ、あれ本当に魔法科だよな……?」


 ルリが不安げに呟くと、エルダーが腕を組んで首を傾げた。


「見た目通りなら、ミオが不利すぎるだろ」


 ソラは何も言わず、ただ舞台の上のゴーエンを見つめていた。試合開始を告げる審判の声が、緊張した空気の中に響こうとしていた。

今回もお読み頂きありがとうございました!


今回はミオとリゼアの次回の対戦相手が判明するお話でした!謎キャラのゴーエンも登場、強いのか弱いのか果たして…?


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は8月24(月)6時を予定しております。


何卒よろしくお願いします!

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