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星脈と位相の狭間で  作者:
アレシス学院編
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第35話:アスカの視線


 時は少し戻る。ちょうどリゼアが5試合目の舞台に上がった頃のことだ。


 観覧席の隅の方で、アスカは腕を組んで舞台を見下ろしていた。武術科は今日も自習扱いだったが、わざわざ魔法科の試合に足を運んで見に来る生徒はそう多くない。



「珍しいな、お前がこういうの見に来るなんて」


 隣に立っていた同級生――ルシアが声をかけた。アスカは答えず、舞台の方を見たままだった。


「まあいいけど。にしても暇だよなぁ、俺らが見ないといけない方の大会はもう終わってんのに」


 ルシアが柵に肘をついて欠伸をする。アスカは相変わらず返事をしなかった。


「はじめ!」


 審判の声とともに、トウマの詠唱が響く。炎の槍が幾筋も走った。


 アスカの目が細くなる。


 槍の穂先が空中で崩れ、熱の塊になって散った。詠唱の言葉はどこにも聞こえなかった。トウマが顔を歪め、もう一度手をかざす。同じ詠唱、同じ構え。だが今度は炎そのものが手元で膨らみ、弾けた。爆風にトウマの体が吹き飛び、そのまま結界のふちへ叩きつけられる。


「戦闘不能! 決着、リゼア選手の勝利!」


 柵の外がどよめいた。何が起きたのか、誰も正確には説明できないままだった。柵際では「見間違いじゃないよな」「今の詠唱、失敗したのか?」といった声が飛び交っている。


 アスカだけは、腕を組んだまま動かなかった。


「なあ、さっきから舞台じゃなくてリゼアって子の方ばっか見てるけど。知り合いか?」


「別に」


「別にって顔じゃねぇだろ、それ」


「もしかして、あの子に一目惚れでもしたのか?」


「なわけねーだろ」

 アスカは短く息をついた。


 脳裏をよぎるのは、数ヶ月前の光景だった。ソラたちに稽古をつけていたある日、リゼアが軽く放った一撃。重力に干渉するようなあの技を見た時にも同じ感覚があった。あの時は深追いせずそのまま流したが、今日見たものはあの時とも種類が違う気がした。同じなのは、説明のつかなさだけだ。


「前にも似たようなのを見た」


「は?」


「…いや、なんでもない」


 それだけ言うと、アスカは観覧席の階段を降り始めた。ルシアが慌てて後を追う。


「おい、ちゃんと説明しろって!」


「気になるなら自分で見てこい」


 アスカの声は、いつもよりわずかに硬かった。


「お前がそこまで気にするの珍しいな。あの子、そんなにヤバいのか?」


「……あぁ」


 アスカはそれ以上答えず、そのまま人混みの中へ紛れていった。ルシアは釈然としない顔で、少しの間その背中を見送っていた。


「相変わらず何考えてるかわかんねぇ奴だな、あいつも」


 ルシアは肩をすくめて、自分もその場を離れた。


 教室へと帰る道すがら、アスカは一度だけ振り返った。舞台の方はもう、次の対戦の準備で慌ただしくなっている。それだけ確認すると、アスカは短く息を吐いてからまた歩き出した。


  

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

「以上をもって、本日の1回戦を終了とする! 2回戦の組み合わせは、明日の朝までに掲示板に貼り出す!」


 どっと歓声が上がり、柵の外の生徒がそれぞれ帰り支度を始めた。


「思ったより早く終わったな」


 ソラが対戦表を見ながら呟く。


「1年生だけの大会だしね。それでも結構詰め込んでる方だと思うよ」


 ミオが伸びをしながら答えた。


「明日の組み合わせも楽しみだな」


 エルダーが柵に寄りかかりながら言うと、ルリが小さく頷いた。


「掲示板、朝一で見に行かないと人だかりできてそうだよね」


「ルリ、朝早いの得意だっけ」


「いや…が、頑張ります……」


「ミオもリゼアも勝ち上がったし、次はどっちも厳しい相手になりそうだね」


「厳しいって言われると逆に燃えるよね!!」

 ミオが両手を握って気合を入れる。


「カレンって子とフィーナも勝ち上がってるみたいだし、意外と早い段階で当たる可能性もあるんじゃないか」


 ソラの言葉に、ミオの表情が少しだけ引き締まる。

 柵際のリゼアは、何も言わずに掲示板の方へ目をやっていた。


「リゼア、疲れてない? なんか、よくわかんない魔法使ってたし!」


 ミオが顔を覗き込むと、リゼアは肩をすくめた。

「別に、平気よ」


 声は普段と変わらなかったが、視線はどこか少しだけ舞台の方から逸れていた。


「ならいいけど……」


 言いかけたミオの言葉に被せるように、ソラが2人の方に視線を移してから口を挟んだ。


「とりあえず、今日はもう戻るか。明日また見に来よう」


「そうだね! お腹も空いたし!」


「おう」

 エルダーが大きく欠伸をしながら伸びをする。ルリも小さく頷いて、荷物を持ち直した。


 5人はそれぞれの帰り道へ向けて、まだ賑わいの残る会場を後にした。柵の向こうでは、掲示板の準備をする教師の姿が見えていた。夕暮れの道を歩きながら、ミオが思い出したように振り返る。


「明日の開始時間って、いつもと同じ時間でいいんだっけ」


「教師が朝一で貼り出すって言ってたし、たぶん通常通りじゃないか」


 ソラの返事に、ミオが「よ〜し!」と気合を入れ直しながらエアーでパンチを数発繰り出した。

「シュッ!シュッ!誰が来ても負けないよ!」


「いや、魔法科なのに物理で戦うつもりか?」

間髪入れずエルダーが突っ込む。


「うるせー!あちょーっ!」


「いてっ!ミオおめぇな!!!」


 結局、掲示板が貼り出される時間をちゃんと確認しないまま、5人は解散した。

今回もお読み頂きありがとうございました!


今回はリゼアの試合を眺めるアスカと、試合後のソラたちの後日談のお話でした!アスカほどの実力者でも気になるリゼアの力、この後の試合でも発揮されるのか、お楽しみに!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は8月22日(土)6時を予定しております。


何卒よろしくお願いします!

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