第33話:リゼアvsトーマ
「第2試合、開始!」
審判の声に、柵の外がまた沸く。魔法科の女子生徒同士の対戦は、互いに火を放って土の壁を張るという我慢比べのような展開になり、最後は片方が息を切らして両手を上げた。
「降参により決着!」の声に、両者とも肩で息をしながら礼をした。柵際で見ていたエルダーが「ああいうの嫌いじゃないぜ」と満足げに頷く。
第3試合は一瞬で決まった。片方が放った雷撃が相手を吹き飛ばし、そのまま場外まで押し出す。歓声が上がる間もない、あっけない幕切れだった。
「今の、何が起きたの……?」
ルリが目を丸くする。
「んー、わからん!」
エルダーは考える素振りもなく返事をした。
第4試合は、逆に長引いた。2試合目のように両者とも防御に長けたタイプらしく、じりじりとした削り合いが続く。結局は体力切れで片方が崩れ落ち、審判が「戦闘不能」を告げて終わった。
「意外と地味な試合が多いんだな」
ソラが呟くと、いつの間にか柵に並んでいたミオが横から口を挟んだ。
「派手なのは後半からだよ! シード選手とか、まだ全然出てきてないし!」
「お、戻ってきたのか」
「他の生徒の試合、私も見ときたいじゃん! それより次、リゼアの番だよ!」
ミオが指さした先で、審判が次の選手を呼ぶ
「第5試合、リゼア選手対トウマ選手!」
控えの入口から、リゼアが歩いてくるのが見えた。相変わらず気だるげな足取りだった。対戦相手のトウマは、対照的に何度も拳を握ったり開いたりしている。緊張を持て余しているのが遠目にもわかった。
「あの子、大丈夫かな……」
ルリが小さく呟く。
「心配するのそっちかよ」
エルダーが柵に肘をついた。
結界の中、審判が両者の間に立つ。
「はじめ!」
トウマの詠唱が先に響いた。
───パーティクルエミッション・アンタレス!
炎の槍が幾筋も走る。速く、狙いも正確だった。柵の外から小さくどよめきが上がる。
だが、リゼアは動かなかった。
炎が届く寸前、槍の穂先が空中でふっと形を崩し、ただの熱の塊になって散った。詠唱の言葉は、一度も聞こえなかった。
「……は?」
トウマの声が裏返る。動揺を振り払うように、もう一度手をかざした。
───パーティクルエミッション・アンタレス!
同じ詠唱、同じ構え。だが今度は、炎が槍の形を保てなかった。トウマの手元でぼこりと膨らみ、光が渦を巻いたかと思うと――弾けた。
「うわああっ!」
爆風にトウマの体が吹き飛ぶ。受け身も取れないまま結界のふちに叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
「場外!決着、リゼア選手の勝利!」
柵の外から拍手と、戸惑いの混じったどよめきが上がった。何が起きたのか誰も正確には説明できないまま、それでも結果だけははっきりしていた。
審判席のすぐ後ろ、記録用の紙を手にしたセレナが、書きかけていたペンを一瞬止めた。だが軽くため息をついたあと、何事もなかったように視線を紙へ戻す。
「……今の、何した?」
「わからない…」
エルダーが首を傾げると、ルリも同じ角度で首を傾げた。
リゼアは涼しい顔で控えへ戻ろうとした。だが数歩進んだところで、足元が少しよろける。とっさに柵に手をついて何事もなかったように体勢を立て直した。額に浮いた汗を、袖で素早く拭う。
ソラはそれを見ていた。
「リゼア、いま……」
「気のせいじゃない?」
柵際に戻ってきたリゼアが、こちらの言葉を待たずに答えを被せてきた。腕を組んで、ぷいと顔を背けている。
「……まだ何も聞いてないけど」
「聞く前から答えたげたのよ、感謝しなさい」
ルリが小さく笑い、エルダーが「絶対誤魔化してるだろ、今の」と茶々を入れる。
「うるさいわね」
リゼアがエルダーの脇腹を軽く小突いた。「痛って!」という抗議の声が上がった。
柵の隅、少し離れたところに、あの見覚えのない魔法科の生徒がまた立っていた。今度はリゼアの方を、じっと見ている。表情はやはり読めなかった。
「ねえ、あの人さっきもいなかった?」
ミオが小声で聞いてくる。
「ミオの時も見てたな」
「知り合い?」
「知らない」
短いやり取りの間にも、その生徒はもう背を向けて人混みに紛れていくところだった。ミオが釈然としない顔で首を傾げる。
「なんか気になるなぁ……」
「気にしすぎだろ」
エルダーが軽く流すと、ミオは「そうかなぁ」と呟きながらも、すぐに次の対戦表へ興味を移していた。
今回もお読み頂きありがとうございました!
今回はリゼアvsトウマの戦いでした!
案の定、めちゃくちゃ強かったリゼア。底知れぬ強さには秘密があるのでしょうか…?
次回も是非、一読よろしくお願いします!
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未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/
次回投稿は8月17日(月)6時を予定しております。
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