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星脈と位相の狭間で  作者:
アレシス学院編
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31/34

第30話:ソラvsエルダー

 準決勝から間を置かず、決勝の呼び出しが迫っていた。


 会場の隅、水を飲んでいたエルダーがこちらに気づいて片手を上げた。


「おう、いよいよだな」


「そうだな」


「なんか緊張してきたわ、お前とやんの」


「今更かよ」


 少し呆れ気味に言葉を返すと、エルダーがニヤッと笑った。


「言い返してくるようになったなぁ、お前も」


「エルが色々抜けてるとこ多いからな」


「うるせぇ」


「本気でいくからな、負けないよ」


「ほ〜、偉く余裕そうだな。よし、じゃあ賭けるか!勝った方が奢りな」


 軽口を叩き合いながらも、エルダーの目はさっきまでとは違っていた。ふざけた口調の下に、静かな熱が沈んでいる。ソラにもそれが伝わってきた。


 少し離れた柵の向こうで、リゼアがじっとこちらを見ていた。声はかけてこない。ただ、目が合うと小さく頷いた。緊張が少しだけ和らいだ気がした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 準決勝までの喧騒が嘘のように、観客席は静まり返っていた。誰もが息を潜め、舞台の中央だけを見ている。柵に鈴なりになった生徒たちの隙間から、先輩らしき生徒や教師の姿もちらほら見えた。グエンが腕を組んで立っているのが遠目にわかる。


 アスカは見ているだろうか。

 柵の向こうに視線を走らせたが、人だかりに紛れてよく分からなかった。見ていようがいまいが、やることは変わらない。そう思ったはずなのに、剣を握る手にわずかに力がこもった。


「決勝戦。ソラ選手対エルダー選手!」


 舞台の中央、2人が向かい合う。エルダーの表情から、さっきまでの軽さが消えていた。


「本気で行くぞ」


「ああ」


───始め!


 先に動いたのはエルダーだった。振り下ろされる一撃を、ソラは真正面から受け止める。


 ガンッ。


 腕の骨まで響くような重さだった。リンネとの一戦を見ていたはずなのに、実際に受けると想像以上だった。


(これは…受け切れない!)


 連続する打ち込みに、ソラは受けずに体をずらして流す方に切り替えた。重心を落とし、力の軌道からわずかに外れる。準決勝で掴んだ感覚を、今度は違う相手に当てはめる形だった。


「お、避けるようになったな」


 エルダーが口の端を上げる。だが、動きは緩まなかった。むしろ速さが増した。


 力押しだけの相手だと思っていた認識を改める。太い腕から放たれる一撃は、速さも十分に乗っていた。避けたはずの一撃が、肩をかすめた。


「っ……」


 柵の外から、悲鳴に近い声が上がる。


「今の当たったか!?」


「いや、かすっただけじゃねぇか!?」


 ソラは痛みを堪えながら、木剣を握り直した。肩に鈍い痛みを感じる。


 隙を見てソラが踏み込み、攻守が入れ替わる。剛の型、縦の一撃を放った。エルダーはそれを真横に弾く。木剣同士がぶつかる音が、いつもより低く響いた。


 カン、と一度。


(こんな簡単に……!?)


 弾かれた手応えが、思っていたよりずっと軽かった。会心の一撃のつもりだったが、それがいとも簡単に弾かれたことにソラの中で動揺が走る。


 その反動でソラの体勢がわずかに流れる。エルダーはその隙を見逃さなかった。ソラの顔を見ながら、ニヤッと口角をあげた。


 二の腕を掴まれる。


「え……」


 組み技に近い距離まで踏み込まれるとは思っていなかった。エルダーの体格差が、そのまま重さになって伝わってくる。振り払おうとするが、力の差は歴然だった。


「悪いな」


 短い一言のあと、地面が突然遠ざかった。いや、自分が浮いたのだと悟る。空と地面がぐるりと反転し、次の瞬間、背中に容赦ない衝撃が突き抜けた。木剣は手を離れ、乾いた音を立てて地面へ転がる。


 息が詰まる。見上げた視界に、切っ先が突きつけられていた。


「……勝者、エルダー選手!」


 審判の声が響いた瞬間、周囲がどっと沸いた。


 仰向けのまま、ソラはしばらく動けなかった。負けた実感より先に、背中の痛みが強かった。


「大丈夫か」


 エルダーが手を差し伸べてくる。ソラはその手を掴み、引き上げてもらいながら立ち上がった。


「……反則技じゃないか、あれ」


「反則じゃねぇ、木剣使ってないだけだ!」


「そういうもんか…?」


 文句を言いながらも、口元は笑っていた。


  


 柵の外から、ミオとリゼアが駆け寄ってくる。


「ソラ、大丈夫!? 肩、腫れてない?」


「平気平気」


「平気そうに見えないけど……」


 リゼアは何も言わず、ソラの肩の辺りをじっと見ていた。それから小さく肩をすくめる。


「ま、生きてるならいいんじゃない」


「ずいぶん軽いな」


「本気で心配したら、負けたって事実が余計重くなるでしょ」


 リゼアらしいその言い方に、ソラは思わず笑った。


  


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 閉会の声が響く頃には、日が傾き始めていた。対戦表の一番上、決勝の枠に「エルダー」の名前が書き込まれる。ソラの名前の横には、2位を示す印がある。


 エルダーが対戦表を見上げたまま口を開いた。


「じゃっ、俺の勝ちということで!また明日!」


 足早にその場から立ち去ろうとする。


「おい待てエル!!」


 ギクッ、とエルダーの肩が跳ねた。


「ど、どうしたんだよソラ……」


「試合前、勝った方が奢りって……言ったよな?」


 ソラの後ろからメラメラと炎が上がるような威圧感が発せられる。


「あー、いやーー、そうだっけなー、あはは!」


「……」


 ソラはじっとエルダーの顔を見た。


「おーい!リゼア!ルリ!ミオ!エルがご飯奢ってくれるって!」


「あ!ちょいお前!」


 ドドドドドド


 物凄い足音とともにミオが走り寄ってきた。


「なになに!ありがとう! ゴチになります!」


 ソラはニンマリとした顔でエルダーを見る。


「……はぁ、仕方ねぇな」


 そんなやり取りをしながら、5人は屋台の方へ歩き出した。柵の外では、明日から始まる魔法科の大会について話す声が、あちこちから聞こえ始めていた。


 ソラは歩きながら、まだ痛む肩に手をやった。負けは負けだ。だが、悔しさの中に、次の稽古への意欲が確かに芽生えていた。

今回もお読み頂きありがとうございました!


今回はソラ対エルダーの戦いでした!

おふざけキャラかと思ったら意外と強かったエルダー!ソラは悔しさをバネこれからも成長する事でしょう!


次は幕間を挟んだ後、魔法科の試合です。お楽しみに!



よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は8月10日(月)6時を予定しております。


何卒よろしくお願いします!


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