第29話:エルダーvsリンネ
ソラとローライトの対決が終わったあと、休憩を挟まずに次の選手の呼び出しがされた。
「準決勝、第2試合。エルダー選手対リンネ選手!」
舞台に上がったリンネは、いつもローライトのそばに居る従者のような人物だ。
「よーよー、お前のご主人様負けちまったな」
「…!!エルダー、余計なことを!」
それを聞いたソラは冷や汗をかいた。
しかし、リンネは表情一つ変えずに木剣を両手で構え、まっすぐ前だけを見ている。エルダーが対面に立ち、ニヤリと笑った。
「よろしくな」
「……」
返事はなく、頷きすらしなかった。
───では、始め!
合図とともに、リンネが先に踏み込んだ。速さより重さを乗せた一撃。エルダーはそれを真正面から受け止める。
ガンッ、と鈍い音が響いた。
「おお、重てぇ!」
思わず靴底が土を削る。受け止めただけで腕が痺れた。
リンネはたたみかけるように追撃を放つ。エルダーはそれも受け、押し返す。木剣越しに伝わる重さに、今度は半歩、足が後ろに下がった。
「……」
角度を変えた一撃が、真横から打ち込まれる。エルダーは弾くのではなく、体ごとぶつけて受け止めた。
ガンッ、ガンッ。
力と力のぶつかり合いが続いた。技巧も駆け引きもなく、ただ真っ向から打ち合う。柵の外からは単調に見えたのか、途中から歓声が薄れ、代わりに感嘆の声が漏れた。
「あの2人、ずっと受け合ってるだけじゃね」
「いや、あれ受けてる方もやばいぞ普通に」
さらに繰り出された払いが、エルダーの肩をかすめて木剣の先が僅かに当たる。
「っ……危ね!」
エルダーの声から、余裕の色が少し薄れた。
数分に及ぶ打ち合いの末、リンネの息がわずかに乱れ始めた。対するエルダーは、額に汗こそ浮かべているもののまだ表情を崩していない。呼吸も動きも、崩れる気配がなかった。
「おいおい、どうした!?こんなんじゃご主人様に怒られちまうぞ!?」
「……黙って」
初めて聞くリンネの声だった。短く、それだけ言うと、木剣を渾身の力で振り下ろす。
エルダーはそれを受けず、半歩だけ体をずらした。
空を切った木剣が、勢い余ってリンネの体勢を崩す。その一瞬をエルダーは見逃さなかった。木剣の腹で、リンネの木剣を下から弾き飛ばす。
リンネの木剣が宙で1回転し、地面に転がった。
「勝者、エルダー選手!」
審判の声に、リンネはその場に膝をついた。悔しさよりも、力を出し切った顔だった。エルダーが手を差し伸べる。
「なかなかやるじゃん、お前」
リンネは一瞬その手を見たものの、自分の力で立ち上がった。手は借りなかった。
木剣を拾い、一礼してから舞台を降りていく。
柵の方へ戻ると、エルダーはご機嫌な顔をしていた。ソラはまだ胸のあたりが落ち着かなかった。
「お前、なんであんな煽り方したんだよ」
「え、なんかまずかったか?」
「まずいとかそういう問題じゃなくて……」
「んん?」
言いかけて、ソラは口を噤んだ。結果的に何も起きなかったのだから、今更蒸し返す必要もないかと思ったからだった。それでも、心臓に悪かったことに変わりはなかった。
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対戦表の前に、人がまた集まり始めた。決勝の枠に、新しい2つの名前が書き込まれる。
ソラ対エルダー。
「まっ、知ってたっちゃあ知ってたな!」
エルダーが枠を指差しながら、笑いともつかない声を漏らした。ソラも同じ場所を見ていた。
「そうだな」
それ以上、2人とも何も言わなかった。柵の外では、もう決勝の話題に人が流れ始めている。
対戦表の一番上、『ソラ』と『エルダー』と書かれた文字を見つめながら、ソラは拳を強く握り直した。
今回もお読み頂きありがとうございました!
今回はエルダー対リンネの戦いでした!
本当はこの戦いの前にリンネの紹介とか少し挟もうかと思ったのですがストーリー上いきなり当たることになってしまいました( > <꧞)また、カクヨムの方の作品で深堀できたらなと思います!
よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015
未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/
次回投稿は8月8日(土)6時を予定しております。
何卒よろしくお願いします!




