第28話:ソラvsローライト
準決勝の日は、朝から風が吹かず、旗が垂れたままで、訓練場は賑やかだが緊張感も混じっていた。
柵の外は昨日より人が増えていた。応援に来た他学年の生徒や、噂を聞きつけた保護者らしき姿も混じっている。エルダーが伸びをしながら、その人だかりを眺めた。
「うわ、今日えぐいな人の数」
「準決勝だからな」
「ふぅ〜、緊張してきた」
「今更かよ」
ソラが呆れた声で返すと、エルダーは自分の頬を両手で叩いた。
「よっしゃ!気合入れ直しだ!!」
「叩く前から気合入ってただろ、お前」
「ソラ、お前もやってやろうか!」
「いやいやいやいや!遠慮しとくよ」
もう少しで頬を叩かれるところだった。
対戦表の前には人だかりができていた。準決勝、第1試合はソラとローライト。第2試合はエルダーとリンネ。
リンネはいつもローライトの隣にいる2人組のうちの1人だ。ローライトに負けず劣らずか、ここまで勝ち上がってきたらしい。
決勝の枠は空白のまま、二本の線が上へ伸びている。
ミオが人混みを縫って駆け寄ってきた。
「やっほー!ソラ!準決勝まで勝ち上がったらしいじゃん!やっるぅ〜!」
「ありがとう。たまたまな所もあるけどね」
「それはそうと聞いた? 今日で決勝の相手決まるんだって!」
「知ってる」
「魔法科の大会は明日からなんだよ!リゼア、当たる相手もう決まってるみたい」
「そうなのか」
「フィーナって子らしいんだけど、リゼアの相手なら誰でも多分って感じじゃない?」
「まぁ、そうだろうね」
事実、リゼアに関しては相手が誰だろうとあまり関係ない気がしていた。
「そういうミオも出るんだろ。相手は?」
「まだ分かんない、抽選これからみたい」
少し不安そうな顔をしたのも一瞬で、すぐにいつもの調子に戻る。
「あ、そういえば最近タピオカ?にハマっててさ」
「また新しい食べ物か?大会は大丈夫なの?」
「………えへへ〜」
ミオは苦笑いするとそのまま後ずさって去っていった。
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開始の合図とともに、審判の声が響いた。
「準決勝、第1試合。ソラ選手対ローライト選手!」
舞台に上がると、ローライトは既に待っていた。相変わらずの気だるげな目でこちらを見ている。
「さて、お待ちかねだね」
ローライトの声には、いつもの見下すような響きがあった。ソラは黙って構えを取った。答える気はなかった。
合図が鳴る。
先に仕掛けたのはローライトだった。ルリの時にも見た連続した踏み込み。剣撃を繰り返す度に速さが増していく。ソラは受けるだけで精一杯になりかけたところで、ふと、アスカの声が頭の奥をよぎった。
(踏み込みが早すぎる。重心が高い)
言われ続けたが、意識しても直せなかった言葉だった。今、ローライトの3撃目を受け止めた瞬間、腰の位置がわずかに浮いているのが自分でも分かった。
4撃目が来る。
膝を落とす。意識的に、深く。
重心が下がった分、受ける衝撃が腕ではなく足に逃げていった。木剣を跳ね返す感触が、いつもより軽い。
「……ん?」
ローライトの動きが、初めて少しだけ止まった。
その隙を、ソラは見逃さなかった。踏み込みながら振り下ろす。アスカから教わった、剛の型、縦の一撃。
ローライトが横に跳んでかわす。木剣が空を切り、地面すれすれで止まった。
「へえ」
ローライトの声から、退屈さが少し抜けていた。
そこから先は拮抗した。互いに1撃も当てられず、木剣がぶつかる音だけが何度も響く。
カン、カン、カン───
観客席から声が上がり始める。
「まだ決まらねぇのか」
「ローライトが押し切れてない……?」
柵の外でエルダーとルリの声が聞こえた。
「いけソラ!」
「がっ、頑張ってソラ!」
声が届いたその折、ソラの中で何かが噛み合った感覚があった。ローライトの速さに乗せた横から振り払うように繰り出された一撃。それを下からすくい上げて弾いた瞬間、理想の構えになる。
(感情を乗せて振れ)
アスカに言われた言葉を思い出す。
剣先が、ローライトの喉元寸前で止まる。
ローライトの木剣は、宙を舞ってから地面に落ちた。
静寂のあと、審判の声が響いた。
「勝者、ソラ選手!」
歓声が一気に膨らんだ。ソラは肩で息をしながら、剣を下ろす。ローライトはしばらく動かなかった。落ちた木剣を見下ろし、それから拾い上げる。
「……重心を変えたか」
誰に向けたでもない呟きだった。ソラは何も返さなかった。ローライトは軽く肩をすくめ、舞台を降りていく。すれ違いざま、いつもの見下した目ではなかった。何かを測るような目だった。
柵の方に戻ると、エルダーが両手を上げて突進してきた。
「いやー、すげーなソラ最後の一撃!」
「応援してくれてたの聞こえてたよ。そのおかげかな」
「おーおー!嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか!」
背中を叩かれ、ソラは咳き込んだ。
「痛い痛い」
「悪ぃ悪ぃ、興奮しすぎた」
少し離れた場所で、リゼアが腕を組んでこちらを見ていた。目が合うと、小さく口の端を上げる。それだけで、何も言わずに人混みの向こうへ消えていった。
今回もお読み頂きありがとうございました!
今回はソラvsローライトのお話でした!なんとかローライトに勝てたソラ、次回はエルダーの試合のお話です!次回もよろしくお願いします!
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未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/
次回投稿予定ですが、8月5(水)6時を想定しております。
何卒よろしくお願いします!




