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星脈と位相の狭間で  作者:
アレシス学院編
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26話・武闘大会開幕


 大会当日、訓練場は普段と違う顔をしていた。四隅に旗が立ち、中央には即席の試合場が組まれている。柵の外には他学年の生徒や教師たちがすでに集まり始めていた。


 入り口の掲示板には、大きな紙が張り出されていた。上部に「1回戦」、その下に「2回戦」「準決勝」「決勝」と段々になった枠組みが描かれ、名前を書いた札が対になって並んでいる。勝ち残った者だけが次の段に進める形だった。


「ん〜、字が小さくて見えねぇな」


 エルダーが背伸びしながら文句を言う。ソラは自分の名前を探した。1番下の段、左端の枠にソラの名前があった。


「ソラ、1回戦の相手誰?」


「まだ見えない」


 ようやく見つけた自分の欄の隣には、聞いたことのない名前が並んでいた。


「誰だこれ?」


「知らない奴だな」とエルダーが横から覗き込む。

「まあ、15人もいたら全員知ってるわけないか」


 ローライトの欄も近くにあった。同じく見覚えのない相手だった。当然のように、涼しい顔して離れていくのが見えた。


「あいつも1回戦は楽勝そうって顔だな」


「…かもな」


 2人の視線の先で、ルリが対戦表を見上げたまま固まっていた。


「ルリ、大丈夫か?」


「……あ、うん。大丈夫」


 声のわりに、木剣を持つ手に力が入っているのが分かった。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 最初の呼び出しは、意外にもソラだった。


「第1試合、ソラ選手対トーマ選手!」


 審判の声に、腹の底がすっと冷えた。柵の外に並ぶ視線が、一斉にこちらへ向く感覚。相手のトーマは、ソラより頭一つ大きい男子だった。がっしりとした体格で、木剣の握り方も様になっている。


「よろしく」


 相手が短く言う。ソラも頷き返した。それ以上の会話はなかった。


 開始の合図とともに、トーマが先に踏み込んできた。


───ブンッ


大振りの一撃を受けた瞬間、腕にずしりと重さが伝わる。


(力は強い……でも)


 2撃目、3撃目と続くが、動きに無駄が多く振りかぶるたびに大きな隙ができる。ソラはその隙を見切り、4撃目を大きく弾いた瞬間に木剣を振った。木剣の切っ先が、相手の喉元数センチのところでぴたりと止まる。


 トーマが小さく息を呑み、両手を上げた。


「勝者、ソラ選手」


 審判の声とともに、歓声が響いた。試合場を降りるとき、手のひらの震えにようやく気づいた。緊張していたのだと、そこで初めて分かった。


「ナイス、ソラ!」


 柵に駆け寄ってきたエルダーが、肩を叩いてくる。


「危なかったな!あの最初の一撃!」


「いきなりだったしな、対応が間に合ってよかったよ」


「必死なのが伝わってきてこっちもヒヤッとしたぜ」


「……そんな分かりやすかったか」


「顔面蒼白だったからな!」


 からかうような口調に、ソラは苦笑いを返すしかなかった。


 


「第2試合、ルリ選手対イツキ選手」


 次はルリの名前が呼ばれた。


 対戦相手のイツキは均整の取れた体で、動きの俊敏さと、堅実さを併せ持った生徒だった。開始直後から一気に距離を詰めてくる。

ルリは防戦一方で、木剣を握る手が明らかに硬い。


「……っ」


 刃先が服をかすめるたびに、小さく体を縮こまらせた。


 柵の外で見ていたエルダーが、思わず声を上げる。

「ルリ、下がるだけじゃ埒あかねぇぞ!」


 その声が届いたのか、イツキの5撃目が振り下ろされようとした瞬間、ルリが懐に素早く入り込み、掬い上げるように木剣を振り抜いた。踏み込みも普段とは違う、迷いのない一歩だった。イツキの木剣が弾かれて宙を舞い、地面に転がる。


「おぉ……?」


「一瞬だったな……」


 周囲がわずかにどよめく。しかし、ルリはすぐにまたオドオドとした構えに戻ってしまった。武器を失ったイツキが拾いに動く間に審判が試合を止める。


「勝者、ルリ選手」


 試合場を降りるルリの顔は、勝った喜びよりも息を切らした疲労の方が色濃く見えた。


「なんだルリ!お前すげーじゃん!」


「えっ、あはは、ありがとう…」

ルリは照れながら誤魔化すように笑った。


「さっきの、最後の一歩」とソラが言う。

「いつもの動きと違ったな」


「そ、そうかな……自分じゃよく分かんない」


「次も見れたら見てみたいな」


「……うん」

 ルリは小さく頷いたが、その声はさっきまでの照れ笑いとは違う、少し硬い響きだった。




 休憩を挟んで、ローライトの名前が呼ばれる番が来た。ソラとエルダーは柵にもたれかかって、その様子を眺めた。


「見とく?」


「見とく」



「第3試合、ローライト選手対サキ選手!」


 審判が開始の合図をしたその直後だった。カン、と木剣同士がぶつかる音は、一度しか響かなかった。


 気づけば相手は膝をついていた。何が起きたのか、柵の外から判別できないほどの一瞬だった。


「……は?」


「終わった!?」


「今の見えた奴いる?」


 あちこちから戸惑いの声が上がる。ソラの隣で、エルダーが低く呟いた。


「……マジかよ」


「ああ」


 ローライトは木剣を軽く振る仕草だけして、汗ひとつかいた様子もなく試合場を降りていった。すれ違いざま、ソラたちの方にちらりと視線を寄越す。何を思っているのか、表情からは読み取れなかった。


 


 その後の試合も、滞りなく進んだ。エルダーも危なげなく勝ち上がり、全ての1回戦が終わる頃には日も高く昇っていた。

休憩の合図とともに、対戦表の前にまた人が集まる。2回戦の組み合わせが新たに書き加えられていた。


「あ」


 エルダーが対戦表を指差した。


 トーナメント表の左上、2回戦の枠に、ローライトとルリの名前が並んで書き込まれていた。



今回もお読み頂きありがとうございました!


武闘大会についてのお話でした!とりあえずメイン組とローライトの闘いが少しだけ描けて満足です!次回以降の闘いはどうなるのでしょうか、お楽しみにっ!!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿は7月29日(水)6時を予定しております。


何卒よろしくお願いします!

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