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星脈と位相の狭間で  作者:
アレシス学院編
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22話・武術科の初授業

 


 武術科の教室に足を踏み入れると、既に半分近くの生徒が席についていた。木造りの長机が並び、後ろの方の席は埋まっていたが、黒板の前にの席にはまだ誰もいない。ソラは入り口近くの席を選んで座った。


「あ、あの、隣大丈夫…かな?」


  声をかけてきたのは小柄な男子だった。同年代と並ぶと明らかに幼く見える顔立ちで、骨格自体が華奢だった。手首も指も細く、力を入れたら折れてしまいそうなほどだ。制服の上から羽織った上着はぶかぶかで、袖から覗く手はさらに小さく見える。


「ああ、どうぞ」


  声は高く、男子にしては澄んでいて、耳に残る。喋りながらも視線は落ち着かず、教室のあちこちに泳いだかと思うとまたソラに戻ってくる。指先で袖口をきゅっと握るような仕草を繰り返していて、ずっと何かに怯えているようにも見えた。


 ──女子か…?と一瞬思ってしまって、ソラは内心で首を振った。制服は間違いなく男子のものだった。


  その少年は隣に座ると前を見て少し固まったあと、ソラに話しかけてきた。


「ぼ、僕はルリっていいます」


「ソラだ」


 ルリは席に着くとすぐに教科書を机に並べたが、視線はちらちらと教室の様子を窺っていた。周りをきょろきょろ見回し、誰かと目が合うたびに視線を逸らした。


  教室の後方、窓際の席にはローライトの姿があった。頬杖をついて外を眺めている。少し離れた席には、いつも彼の傍にいる女子生徒の一人が座っている。武術科の生徒だったようで、木剣の手入れ道具を膝の上に置いていた。もう1人の女子生徒はここにはいない。おそらく魔法科の教室にいるのだろう。


 やがてグエンが教室に入ってきた。挨拶もそこそこに、開口一番。


「今日は訓練場に行くだに」


 教室がわずかにざわついた。何人かが顔を見合わせる。


「…だに?」


「俺らのことダニ呼ばわりしてるのか…?」

  グエンの特徴的な訛りのある言葉に生徒一同が戸惑う。


「型はまだ教えん。まずお前らを見る」


 それだけ言うと、グエンは教室を出て行った。生徒たちは戸惑いながらも後に続く。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 訓練場に着くと、木剣が人数分並べられていた。グエンは生徒を一列に並ばせると、一人ずつ名前を呼んで前に出させた。


「好きに振ってみい」


 型も構えも教えない。ただ一太刀、自由に振らせる。それだけの指示だった。最初に呼ばれた生徒は戸惑いながらも木剣を上段から振り下ろした。グエンは何も言わず、手元の紙に何かを書きつけた。


 次、次、と淡々と進んでいく。大振りする者、慎重に小さく振る者、力任せに叩きつける者。振り方はそれぞれ違ったが、グエンの反応は一貫して変わらなかった。ただ見て、ただ書く。


「ソラ」


 名前を呼ばれ、前に出た。木剣を握る。何を求められているのか分からないまま、頭上に構えた。アスカに教わった上段構えが自然と体に出た。まだ早いと言われた構えだったが、体が覚えていた。


 振り下ろす。ザッ、と空を切る音。


 グエンは一瞬だけ眉を動かした。しかし、他の生徒たちに見せた反応と違わず、何も言わずに紙へ何かを書き込む。


「次」


 その後はルリが呼ばれた。

  背中をかがめ、木剣を腰元へやってから素早く一太刀を振った。しかし、緊張感か動きが硬いのが誰の目にも明らかだった。


  ローライトの番になると、動きに迷いがなかった。速く、鋭く、無駄がない。周りから小さくどよめきが漏れたが、グエンは表情ひとつ変えずに書き終えると次の生徒を呼んだ。


 全員が終わった後、グエンは紙をまとめて懐にしまった。


「型はこれから決めるんじゃなくて、おみゃーらの中に既にあるもんを見ただけだに。明日から本腰入れる」


 説明はそれだけだった。何を見られたのか、どう判断されたのか、誰にも分からないまま解散になった。




 ソラが木剣を返却しようと武器庫に向かうと、ルリがついてきた。


「グエン先生、何見てたんだろうね」


「さあ」


「振り方だけじゃなさそうだったし、なんか、こう……性格まで見透かされてるような…」


「かもな」


 会話はそれ以上続かなかった。ルリは特に気にした様子もなく、ソラの隣を歩きながら周りをきょろきょろと見ていた。落ち着きがないというより、慣れない環境を必死に把握しようとしている、そんな感じだった。


 武器庫の前でローライトとすれ違った。目が合ったが、ローライトは何も言わずに視線を外し、通り過ぎていった。それだけのことだったが、空気が一瞬だけ張り詰めた気がした。ルリが小さく肩をすくめる。


「あの人、苦手だ……」


「慣れるしかないだろ」


「そう、なんだけどさ」


 語尾が弱く消えていった。




 放課後、訓練場の隅でエルダーが一人、木剣の素振りをしていた。汗だくで、息が上がっている。


「よぉ、ソラ」


「まだやってたのか」


「グエン先生に見られたやつ、なんか気になってさ。自主練」


「性格見られたって話か」


「そうそれ!お前も思っただろ、なんかあれ絶対振り方だけ見てないよな」


 エルダーは木剣を肩に担ぎながら苦笑いした。


「俺なんか多分『考えなしのバカ』って書かれてる自信あるわ」


「否定はしないよ」


「おい」


 小さく笑いが漏れた。ルリも一緒にいたが、エルダーの豪快さに圧倒されたのか、少し後ろに下がって様子を窺っていた。


「あ、お前初めましてだな!ルリだっけ、ソラから聞いた」


「あ、はい……よろしくお願いします」


「そんな畏まんなくていいって、な!」


 エルダーがルリの肩を強めに叩くと、ルリが小さくよろけた。


「悪い悪い!」


「い、いえ……」


 ルリは苦笑いしながら肩をさすった。ソラはその様子を眺めながら、明日からの訓練のことを考えていた。型を教わるのがいつになるのか、グエンが何を見ていたのか、答えは出ないままだった。


 訓練場の外はもう暗くなりかけていて、エルダーの素振りの音だけがしばらく響いていた。


今回もお読み頂きありがとうございました!


武術科の初授業とルリくんの登場シーンでした!!はぁーーーーー!!ルリくん!可愛いですよ!これからもお気に入りのキャラクターもして登場させるつもりです!!!乞うご期待!!!!!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿予定は7月20日(月)6時を想定しております。


何卒よろしくお願いします!

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