第20話・学院紹介
グエンの後ろを、武術科の10人がぞろぞろと続いて歩く。廊下は長く、外から見ていた印象よりずっと奥まで続いていた。
グエンは前を向いたまま歩く。振り返らず、説明もない。
エルダーがソラの横に来た。
「なあ、どこ行くんだろうな」
「さぁ…?」
「もしかして先生、案内するの忘れてたりしないか?」
「そんなことはないと思う、たぶん…」
後ろで生徒たちが不安がってざわつき始めたが、当のグエン自身は表情を変えず歩いていた。
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廊下の突き当たりで、グエンが立ち止まった。重い両開きの扉が目の前にある。
「訓練場だ」
扉を引くとギィ、と音を立てた。空気が変わり、木と汗と石の匂いが中から香る。
どうやらちゃんと目的地はあったようでソラは安堵した。
部屋は広く、壁沿いに木製の棚が並んでいて、木剣や打ち棒が整然と収まっている。中央は何もなく、ただ空間があるだけだ。床の石畳は長年使われた後だからか、中央部だけ色褪せていた。
「ここで訓練するんですか」
新入生の誰かが聞いた。
「そうだ」
それだけ言って、グエンは訓練場を出ていった。もう次へ行くらしい。
エルダーがまだ訓練場の中を見回していた。壁の木剣を一本手に取ろうとしていたので、ソラが袖を引いた。
「あ」
「もう行くみたい。後で」
「そうだな…」
エルダーは少し名残惜しそうに木剣と訓練場の中央を見たあと、列に戻ってついて行った。
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グエンは訓練場を出てすぐ、隣の部屋で足を止めた。
「武器庫だ」
扉を開けると、様々な大きさの剣がずらりと並んでいた。短いものから長いもの、少し変わった形のものまで、数だけでいうとかなりある。
「借り出す場合は俺に一言言え。無断で持ち出したらきつい処罰が待ってる」
エルダーが手を挙げた。
「処罰って、どのくらいのものなのですか」
グエンがエルダーを見た。間があった。
「……それはもう、えりゃあゲンコツグリグリが待っとる」
「ゲンコツグリグリ…」
その場にいた全員がキョトンとした顔だった。ギャグなのか真面目なのか全くわからない、発言したグエンの顔が至って真面目なのが余計にそう思わせた。
一同に静寂が包む。
グエンは新入生たちをキョロキョロと見渡すと、どうしたんだと言わんばかりの顔をしてから次の場所へ歩き出した。
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別の棟へ向かう途中、中庭を通った。
石畳の広い庭だった。片隅で3人の生徒が打ち合っていた。みんなソラよりも年上に見える。上級生だろう。金属の剣が当たる音が短く響いて、また間が開いた。
足が少し止まりかけた。
3人のうち1人が踏み込んだ瞬間、残り2人が左右に散った。
「速いな」
エルダーが小声で言った。
「あの動き、何の型だ?」
「……迅か、捌のどっちかじゃないかな、速さを使うなら迅で、読んで動くなら捌だと思う」
「違いがわかるのか?」
「いや、予測だよ。あの人たちの動きがそういう風に見えた」
「なるほど」
どちらの型か見定める前にグエンが曲がり角に差しかかって、ソラも続いた。
「くそ…もうちょっと見たかったな」
エルダーが名残惜しそうに首を伸ばしていた。
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別棟をしばらく歩いたあと、グエンは1年と書いた札のかかった教室に入っていった。ソラたちもそれに続く。
教室は思ったより小さかった。長机が3列で、詰めれば20人は入るだろうか。
「座学をする教室だ。週に2回ある」
「剣の座学って、何をやるんですか」
エルダーがまた聞いた。今度は手を挙げなかった。
「型の理論と成り立ちと、それから医術の基礎も少し」
「医術ですか?」
「怪我した時に何もできんのは困る。自分の体は自分で守るもんだに」
意外だった。エルダーも同じように思ったらしく、「なるほど」と言って室内を見回した。
窓の外からは中庭が見えた。さっきの3人がまだ打ち合っている。今度は1対2の構図になっていた。1人の方が押されているように見えたが、それでも崩れなかった。
ソラはエルダーの方を見た。エルダーもその光景を見ていて、目をキラキラと輝かせていた。
今回もお読み頂きありがとうございました!
グエンと共に学院を周り、紹介を受ける回でした。学院は広い!広すぎて書ききれなかったので分割しました。次回に続きます!
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未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/
次回投稿予定ですが、7月15(水)6時を想定しております。
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