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星脈と位相の狭間で  作者:
アレシス学院編
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第19話・アレシス学院入学式

 

入学式は、学院の中で最も広い大広間で行われた。


壁際には教師陣が並び、真ん中には長椅子が二列に向かい合わせで並べられて、片方に武術科、もう片方に魔法科の新入生が座る形になっていた。ソラは武術科の列の、前から三列目に並んだ。


 隣にエルダーが来た。「おっ」と言いながら荷物を置く。その二つ隣にローライトがいるのが視界に入って、ソラは静かに視線を戻した。


 向かいの列に、長髪の銀髪が見えた。おそらくリゼアだろう。最前列の端に座って、すでに前を向いている。その少し後ろにミオがいた。周囲に何か話しかけているらしく、隣の子が苦笑いしていた。


 壇上には三人が並んで立っていた。


 右端にはシャルドがいた。相変わらずつかみどころのない笑みで、広間全体を眺めている。真ん中と左端は初めて見る顔だ。大柄で口をへの字に結んだ男性と、穏やかな顔立ちの女性。二人とも、静かに前を向いていた。

 やがて、広間の前に老いた人物が出てきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

開校の言葉が始まった。


 「新入生の諸君、まずは入学おめでとう。私はこの学校の校長を務めるディートリヒと言う。私は歴史あるこの学院を素晴らしい所だと思っている。この学院が建てられたのは、今から120年前のこと。当時のアレシスは、力ある者が…」

前置きもほどほどにディートリヒ校長の弾丸のような話が続く。


「…であるからして諸君たちには先人の想いを後世に伝えるべく…」


 途中から、ソラは天井を見ていた。

 石造りの天井には鳩が一羽止まっていた。特に何もせず、今のソラと同じようにぼーっとしているように見えた。


 式は続いている。


 鳩は動かない。


 ーー今日のにゃごすちん、普通に開いてるのかな。

 頭の端にそんなことが浮かんでは消えてを繰り返していた。


「おい」

 エルダーが肘で突いてきた。


「聞いてるか」


「……聞いてる」


「いや、絶対聞いてなかったろ」

 ソラは前を向き直した。壇の前に立って喋っているディートリヒがちょうど言葉を区切るところだった。


ーーうん、たぶんセーフだ。


「続いて、学術指導副主任であるシャルド教授にクラスの構成や上級生の人数などについて話してもらう」


驚いた。どうやらシャルドは学院の中でもそれなりの立場にいる人間なのだらしい。


「初めまして新入生諸君。ただいま紹介に預かったシャルドと申します。先程、学院長から挨拶があったので私からは省かせてもらう。私からは1点、この学院のクラス構成についてだけ説明する」


 シャルドは新入生たちに目をやり、続けた。

 「今年の新入生は武術科と魔法科から各10名が合格し、計20名。元々の在校生を合わせると1年の合計は30名だ。その他、2年から4年までは合わせて40名。5年生は6名だが、現在は全員が学院外での活動中のため式には出席していない」


「五年生いないのか」

 エルダーが小声で言った。


「遠征とかするらしいぞ」


「遠征…か」


 しばらくして、エルダーが指を折り始めた。

「何してる」


「新入生が何人いるか数えてた」


「……今言ってたぞ、20人だって」


「え、あれ、そうだっけ」


エルダーも人の話聞いてないな…

 そう思いながらも口には出さなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それでは続いて、新入生代表の挨拶に移ります」


 列から1人の少女が出て、スタスタと壇上へ登っていく。

 呼ばれたのはリゼアだった。


 驚きはしなかった。試験の成績が基準らしく、それならまぁリゼアしかいないよな、と思った。


 ゆっくりとした足音が、大広間に静かに響く。壇の前に立って、リゼアは全員の方を向いた。


 しん、と静まり返った。


「新入生代表のリゼア君だ。それでは、一言よろしくお願いする」

 クラス構成の話だけすると言っていたのになぜか引き続き進行役を任されているシャルドがリゼアへ促す。


「新入生を代表して、一言申し上げます」

 声は澄んでいた。



「精進します」



 間があった。


「以上です」


 降りた。


 広間がしばらくそのままだった。誰も動かなかった。生徒たち、もちろん教師陣も呆気にとられて固まっていた。

どうやら人間は本当に呆気にとられた場合は声が出るよりも先に固まってしまうらしい。


「……それだけ?」

 エルダーが小声で言った。ソラは前を向いたまま、何も返さなかった。


 流石リゼアだなと思った。あれがリゼアなりの誠意なのかどうかはわからない。ただ、あれを堂々とやれる人間など他に何人もいないだろう。



「で、では上級生代表の挨拶に移ります」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

名前が読み上げられた瞬間、ソラは聞き間違えたと思った。壇の脇から出てきた人物を見て固まってしまった。


 アスカだった。


 訓練場の端で毎日素振りをしていた、あのアスカが。基本は素っ気ないがたまにデレる、あのアスカが。今、目の前の壇上に立っていた。


 まっすぐ前を向いている。広間全体を一度見渡して、ソラの方にも視線をやった。一瞬止まったように見えたがそのまま次へ流れた。何の反応もなかった。


「1年から4年の在校生の中で、成績最優秀の人なんだらしいぜ」


 エルダーがまた小声で解説してくれた。今度もどこからの情報なのか不明だった。


 アスカは短く息を吸って、口を開いた。


「歓迎する」


一度、広間全体を見渡した。


「生徒代表、3年のアスカだ。厳しいことを言うようではあるが、1年後ここに全員がいるとは思っていない。2年後はさらに減る。それがこの学院だ」


場が少しざわついた。


「ただ、怖じ気づく必要もない。消えていく者の大半は、弱かったからではない。続けることをやめた者、ついていけないと諦めた者が消える。それだけの話だ」


また少し間が空いた。


「何のためにここへ来たか。それを自分で見つけ、答えられるうちはまだやれるだろう」


「学院にいる間は、自由にやれ」


 以上、という顔で降りた。

 ソラはしばらく口が開いたままだった。


「知り合いか?」

 エルダーが横から覗いてくる。


「……世話になってた」


「どのくらい?」


「入学前にあの人にずっと鍛えてもらってた」


「えっ」 エルダーが壇の方を見た。「マジかすげぇな、羨ましいけど大変そうだな」


 ソラは何も言わなかった。大変だったかどうかは、今も正直よくわからない。ただ、なんとなく納得はした。素振りの精度が凄かったことや、偶に人だかりができていたり。そういうことだったのか、と思った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

式が終わると、武術科と魔法科でそれぞれ別の部屋へ移動することになった。


 向かいの列が立ち上がる。リゼアの後ろ姿が列に混じっていく。ミオが走って駆け寄り、何か言いながらその横に並んだ。こちらを振り返って手を振ったので、ソラも軽く手を上げた。


 廊下の角を曲がると、向こうの列は見えなくなった。

 武術科の新入生が廊下に並んで待っていると、奥から足音が聞こえてきた。ぬっと現れたその人物は、式の時に壇上にいた大柄の男性だった。口元はへの字のままで、全員が揃っているのを一通り確認した。


「グエンだ。武術科を担当しとる」

 それだけ言って、歩き出した。


 エルダーが「お〜、この人が武術科の先生か」とぼそりと言って列に続く。ソラも後に続いた。


 歩きながら、ふと天井を見上げた。

 式の時にいた鳩はいなかった。



今回もお読み頂きありがとうございました!


今回は入学式のお話です。ネタキャラになりつつあるシャルドとリゼアとアスカのキャラがたってるお気に入りの回でもあります。

まだまだ面白いところも書けると思いますので、何卒応援お願いします!


よければアクションやTwitterのフォローとかお願いします! @kuronekomaru015


未完成ですが一応作品HPあります→https://hasuki-kuro.github.io/seimyaku/


次回投稿予定ですが、少し予定があり7月11日6時を想定しております。


最近ビューが減ってきて!正直怖いです!ピャーッ!!

何卒よろしくお願いします!


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