第10話・手伝い
ーーー朝五時、都市アレシスの一角のカフェにて
窓の外がまだ薄暗く、小鳥がさえずる頃。一階からネロが動く気配がして、ソラは自然と目が覚めた。リゼアの部屋の扉は閉まったままだった。
着替えて階段を降りると、ネロが厨房で湯を沸かしていた。
「早いね」
「目が覚めました」
「手伝えるかい?」
「はい」
ソラはネロの隣に立って、言われた通りに動いた。椅子を並べる、テーブルを拭く、看板を出す。別段、難しいことは何もなかった。
しばらくするとリゼアが降りてきた。寝癖が少しついていた。黙って厨房に入って、二人をじっと見たあと何も言わずとも作業を手伝い始めた。
ミオが降りてきたのはそれからさらに少し後、三人が一通りの店準備を済ませ、紅茶を飲んでいた頃だった。
「おはよー……」
目が半分閉じていた。ちゃちゃ丸がミオの足元に寄ってきて鳴いた。ミオはそのまましゃがんで、ちゃちゃ丸を抱え上げた。しかしすぐに飛び降りてまた鳴いた。餌のおねだりだった。
「ミオ、猫たちにご飯あげて」
「はぁーい…」
ミオとは対照的に、猫たちの方が元気だった。
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開店すると、すぐに客が来た。
常連らしい老夫婦が窓際の席に座った。ミオが駆け寄った。
「いらっしゃいませ!今日もいつものですか?」
「そうだねぇ」と老婆が言った。「ここで猫ちゃんを愛でながらの紅茶が一番落ち着くんだよ」
「えへへ、ありがとうございます!」
老爺の方はミオをしばらく眺めてから、「今日は違う子も来てるのかい」と言った。ミオが「そうなんですよ!」と声を弾ませた。老夫婦はソラとリゼアの方をちらりと見た。
「新しい子かい?」
「はい!旅に来た子で今このお店の二階に住んでるの!かっこいいでしょ」
「そうかいそうかい、若いねぇ」
それからしばらくして、若い男が一人。昼になるにつれて、ぽつりぽつりと人が増えた。
ソラは給仕を手伝った。
皿を運ぶ作業自体は単純だったが、何度かテーブルを間違えた。どのテーブルに何を出すかが頭に入らなくて、ミオに小声で怒られた。
「違う違う!そっちはさっき頼んだ人!」
「えっ、どっちが先だっけ」
「もー!ちゃんと覚えといてよ!」
リゼアは給仕より厨房の方が向いているらしく、ネロに頼まれてハーブを束ねたり干したりする作業を黙々とこなしていた。手際が良かった。
昼過ぎ、客が落ち着いた頃にネロが「少し休みなさい」と言った。
三人は店の隅のテーブルに座った。ミオが賄いを持ってきた。スープと硬いパンだった。
「じゃーん!にゃごすちん特製セットだよ〜!パン単体だと硬いんだけど〜、スープに浸して食べるとこれがも〜!」
ミオが話している途中、リゼアがじーっと見つめた後に言う。
「…それ今さっき私とネロさんが作ったやつ」
「あっ…」
三人の間に沈黙が走る。
慌ててミオが話題を変えようと違う話を振り直した。
「そっ、そういえばさ!二人って同じ村出身なの!?」
「そうだよ」
「どんな村?」
「小さい村で。畑と森しかない」
「ふーん」
ミオは平成を装いながらスープを一口飲んだ。
「親は!?」
「両親がいる。裕福じゃなかったけど畑仕事とかしてたから食べるものとかもあったしそれなりの暮らしはしてたかな」
「へー!いいじゃんいいじゃん!」そう言うと、それからリゼアを見た。
「リゼアは?」
「お父さんが商人で、お母さんが魔法使い」
「えっ、じゃあ魔法はお母さんから教わったの?」
「少しだけ。あとは自分で」
「すごいじゃん!」
リゼアは特に何も言わなかった。スープの底をスプーンでつついていた。
「二人はずっと仲良かったの?」とミオが続けた。
「まあ」とソラが言った。
「幼なじみって感じ?」
「そんな感じ」
「いいなぁ」
ミオがほんの少し遠い目をした。それからすぐに「あたしも旅してみたいな〜」と言った。
「学院じゃダメなのか?」
「違う違う、そうじゃ、そうじゃない!旅って感じじゃないし!」
ちゃちゃ丸が足元をうろうろした。ミオが抱え上げた。
「まあでも、ここには美味しいものあるし、この子もいるし」
「個々人が一番好きな環境が一番だよ」
「いいこと言うね!その通り!」
そのやり取りを横目に、リゼアはスープを飲み干した。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
本当はもう少し先まで書きたかったのですが時間と、文が少し長くなるかなと思い少し短めになりました…!
次回は6月10日水曜日6:00更新予定です!
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