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洛陽炎上

呂布の軍は敵の拠点を占領し、反乱軍の首魁(しゅかい)の一人である曹操も白馬(はくば)で撃退した。

後は首領の袁紹を捕らえ、長安に送れば当面の軍事的課題は達成されたと言って良いだろう。

しかし、ここで伝令が予想外の事を伝えてきた。

「報告いたします!帝は無事長安に着かれましたが、董相国が洛陽に火を放つよう命じ、都は灰燼に帰してしまいました。」

「なんだと!」

全幕僚に動揺が走った。

「信じられぬ」

「一体、兵糧は何処から運ぶのじゃ」

「なんたること、漢帝国300年の貴重な文化遺産が・・」

「ワシらは何処に帰れば」

「兵士ともども捨て石にされたのじゃ」

「これが帝の意思とは思えん」

「重臣たちは何をしておったのか!」

幕僚らは不安と絶望から口々に意見を捲し立てている。

呂布は言い放った。

「・・残念ではあるが、済んだことを言っても、仕方あるまい。重要なのは、これからどうするかだ。意見があるものは居るか?」

長史の荀爽(じゅんそう)は言う。彼は曹操の参謀、荀彧(じゅんいく)の叔父に当たる。

「畏れながら、将軍府は兵糧の現地徴収の権限を持っています。各県に代官を派遣し、早急に兵糧を集めるのが宜しかろうと思います。」

参軍の陳宮が続ける。

「左様。兗州刺史の橋瑁(きょうぼう)に兵糧を供出するよう使者を出しましょう。彼らはこの戦いで中立の立場を取り軍を動かしませんでした。」

高順が反論する

「しかし参軍殿。相手が敵が味方か判然としない現状で、我が軍の窮状を悟られてはまずいのではないでしょうか?」

華雄も同調して言う「そうじゃ。連合軍の中で、いの一番に反乱の狼煙(のろし)を上げたのが、この橋瑁よ。奴は信用できん。」

その時、軍師の盧植(ろしょく)が幕舎に入ってきた。

「各々方、心配めされるな。」盧植が呂布に向き直って言う。

「大将軍閣下。先程、劉代、劉表、公孫瓚らが兵糧の供出と臣従を申し出て来ました。酸棗(さんそう)砦には既に続々と兵糧が集まっております。また、我が軍が撃ち破った張邈(ちょうばく)、張超の兄弟が臣下の礼を取り、居城の陳留城を明け渡すと申して来て居ります。」

オオと歓声があがる。

「そうか。良き報せじゃ、まずは酸棗(さんそう)に戻り、全軍を休ませ、後に陳留城に入る事にしよう。」

「御意」



「どうしたのじゃ、貂蝉よ。眠れないのか?」

王允は娘に語りかける。

「お父様。洛陽の我が家も燃えてしまったのですか」長安の新宅の中庭にて、遠くの空を眺めながら貂蝉が言う。

「ああ・・洛中洛外の全ての宮殿、家屋が、悉く瓦礫の山と化したそうじゃ・・」

深い闇に包まれた山脈を越えた遥か先に洛陽があり、そのさらに数百里向こうで呂布軍が賊と対峙している。

「奉先さま・・」貂蝉は、遠い空の下、洛陽の人々を護るため孤軍奮闘している呂布の事を想っていた。

「いつか、再び、お目にかかりとう御座います・・」

月に照らされた美しい貂蝉の頬に、一筋の涙が伝うのであった。




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