第37話 ホーム開幕第2戦(2)
5回表
後藤の負傷退場により、ベンチ入りの捕手2人を使い切ってしまったクリッパーズ。
絶体絶命の危機に、上平監督が下した決断は
西橋の捕手起用だった。
入団時は捕手だったが、打撃を買われ外野手に転向してからほとんどマスクを被ったことがなく
今回が4年ぶりの捕手起用となった。
ライトの大広が西橋の守っていたレフトに入り
代走の恵良がライトの守備に就いた。
投手は前田に交代。
西橋はかつて前田の球を受けた経験があったものの、それも6年前の話。ブランクの影響と急造バッテリーの脆さがすぐに露呈することとなる。
ギリギリのコースを突く前田の投球に対し、西橋の不慣れなキャッチングでは際どいコースがことごとく「ボール」判定に。
カウントを悪くしてストライクを取りに甘く入った球を相手打線に痛打され1点を失う。
それでも前田が要所を締め、最少失点の1点で踏ん張ってイニングを終了。
スコアは7-6。
5回裏
4番のゲイリー。あわやホームランかという強烈なツーベースヒットを放ちチャンスメイク。
しかし、続く大広、西橋、若狭が凡退。
6回表
マウンドに左腕のエルナンデスを送る。
しかし、急造捕手・西橋との呼吸が合わず、連打を浴びた直後に痛恨の逆転3ラン本塁打を被弾。
スコアは7-9と逆転を許してしまう。
ここで1軍に昇格したばかりのサウスポー、田中丈一郎へスイッチ。
田中は落ち着いたマウンドさばきで後続をしっかりと断ち、これ以上の追加点を与えずに流れを食い止める。
6回裏
逆転された直後の攻撃。
しかし、鎌倉、恵良、米丸が揃ってあっさりと凡退。三者凡退でチェンジとなる。
7回表
2点ビハインドで迎えた終盤の守備。
捕手陣壊滅の危機に、ベンチ前でプロテクターを身にまとった上平監督が審判へ告げる。
「キャッチャー、俺!」
場内アナウンスが流れた瞬間、超満員のスタンドからどよめきと大歓声が巻き起こる。
「5番大広に代わりまして、上平。5番キャッチャー上平、背番号39。キャッチャー西橋がレフト。6番レフト西橋。ピッチャー田中丈一郎に代わりまして、モーガン、背番号85」
マウンドには普段は勝ちパターンを担うモーガン・レイノルズ。
「監督が受けてくれるなら投げる」と自ら志願してのマウンドだった。
上平の構えに対し、モーガンはノーサインで小気味よく豪速球をミットへ叩き込んでいく。
淀みのないテンポと鋭い球威に相手打線はタイミングをまったく合わせられず、あっという間に三者凡退。
7回裏
先頭の平山が持ち前の俊足を生かして内野安打。
一気に追いつきたい場面だったが、続く小芦の打球は無情にも野手の正面を突く併殺打。
その直後、ゲイリーが甘く入った初球を豪快にすくい上げ、ライトスタンドへ叩き込む第5号ソロホームラン
スコアは8-9と、1点差に迫る。
そして、打席には上平。
代打を出す選択肢もあったものの、捕手が残っていない現状を鑑みてそのまま打席へ。
気迫で食らいつくも内野ゴロに倒れてチェンジ。
8回表
モーガンが続投。
ほぼノーサインでテンポ良く力強い直球をズバズバと投げ込み、相手打線を寄せ付けず三者凡退。
8回裏
相手の勝ちパターンであるセットアッパーが登場。
西橋、若狭、鎌倉が完璧に抑え込まれ三者凡退。
9回表
ビハインドの展開ながら、モーガンが「監督が受けてくれて楽しい」と志願して3イニング目のマウンドへ。
今年から日本人枠となった助っ人右腕は、上平のミットめがけて迷いなくテンポよく投げ込み、相手打線をあっさりと三者凡退に切って取る。
ベンチ裏では「これ、もう上平監督がモーガン専用捕手でいいんじゃないか……?」と、コーチ陣から本気とも冗談ともつかない声が漏れるほどの抜群のコンビネーションを見せる。
9回裏
1点を追う最終回、相手は絶対的守護神を投入。
恵良に代打・廣中を送り込むも凡退。
米丸、平山も粘りを見せるが打ち取られてゲームセット。
乱打戦と捕手負傷のアクシデント、そして「キャッチャー俺」の発動と波乱に満ちた第2戦は8-9で惜敗。
クリッパーズの開幕からの連勝は「4」でストップとなった。




