第31話 ホーム開幕戦(1)
青空が広がる本拠地スタジアム。
超満員に膨れ上がったファンが打ち鳴らすカンフーバットと大歓声が、スタジアム全体を心地よく揺らしていた。
ビジター開幕3連戦で怒濤の3連勝。
完璧なスタートを切って帰ってきたクリッパーズを迎え入れるファンの熱気は、最高潮に達していた。
『大変お待たせいたしました!2026年ホーム開幕戦、スターティングメンバーの発表です!』
ウグイス嬢のアナウンスとともに、大型ビジョンに選手たちが映し出される。
1番 サード 米丸慎也 背番号60
2番 センター 鎌倉大斗 背番号57
3番 レフト 西橋賢介 背番号8
4番 ファースト ゲイリー 背番号42
5番 DH スチュワート 背番号9
6番 キャッチャー 後藤紀之 背番号33
7番 ショート 若狭大将 背番号7
8番 セカンド 平山明彦 背番号0
9番 ライト 恵良和幸 背番号68
先発 五反田竜太 背番号13
足の自打球で欠場していたスチュワートが「5番・DH」で復帰したことに歓声が上がる一方で、
「ゲイリーがファースト!?」
「小芦はベンチか……? 大丈夫か!?」
脚部に違和感を訴えた小芦を大事を取ってベンチに下げ、まだ自打球の影響で走塁に不安の残るスチュワートを指名打者に据えるための、兼任監督・上平による苦肉かつ大胆な超攻撃的布陣。
どよめくスタンドをよそに、当のゲイリーはどこ吹く風。
ファーストミットをポンポンと叩きながら、余裕の笑みを浮かべてベンチの前で大きく体を伸ばしていた。
昨年までMLBでファーストを本職として守り抜いてきた男にとって、内野の守備に一切の揺らぎはなかった。
一方、ダグアウト裏では、ドラフト1位ルーキーの五反田が緊張した面持ちで肩を作っていた。
本来先発予定だった前原が発熱のため登板を回避したため、スライド登板となったのだ。
オープン戦ではベテラン捕手・中北とバッテリーを組むことが多かったが、今日バッテリーを組むのは後藤だ。
五反田の投球スタイル的には強気のリードをする後藤のほうが合ってるのではないか、という首脳陣の判断だ。
「五反田、固くなってるぞ」
後ろから声をかけると、五反田はハッとして振り返り、深くお辞儀をした。
「監督……すみません。地元のホーム開幕戦で先発なんて、やっぱり手の汗が止まらなくて……」
「ハハッ、緊張しない方が嘘だろ。だがな、お前が投げたいボールを投げるんじゃない、後藤が要求するミットに目をつむってでも投げ込め。そうすれば勝てる」
そこへ、プロテクターを装着した後藤が歩み寄ってきた。
「五反田、オープン戦の中北さんとの投球は見させてもらった。お前のストレートのキレと落ちるフォークは一軍でも十分に通用する。今日は俺のリードに黙って乗っかってこい! 相手打線をゴリゴリに押しまくってやるからな!」
「後藤さん……! はいっ、よろしくお願いします!」
後藤の力強い言葉に、五反田の表情から硬さが消え、ルーキーらしいギラギラとした目が戻ってきた。




