第29話 開幕第3戦(3)
6回表
4番・ゲイリーがまたも勝負を避けられて四球。
小芦レフトフライの後、平山が肩に死球を受けて一瞬ヒヤリとしたものの大事には至らず。
米丸サードゴロだが俊足飛ばしてゲッツーは防ぐ。
続く後藤がスタンドインかと思われる大飛球を放つも
相手センターのスーパーファインプレーに阻まれ無得点。
6回裏
喜多須に投手交代。
ヒットを許しながらも要所を締め、スコアは5-5のまま。
7回表
打撃不振に苦しむ9番・若狭の打席。
俺は思い切ってベンチを動いた。
「代打、大広!」
ネクストバッターズボックスから向かった大広。初球、相手投手の高めに入ったスライダーを迷いなく振り抜いた。
打球は綺麗な放物線を描いてレフトスタンド中段へ吸い込まれる代打勝ち越しソロホームラン。
「行ったぁぁぁ! 大広、神代打!!」
ベンチを飛び出した俺と大広は強く抱き合った。大広のシーズン第1号でついにリードを奪う。
その後、恵良がヒットで出たものの牽制死というポカはあったが、主導権は完全にクリッパーズへ。
7回裏
ベテラン前田を投入し、内野陣はセカンドの平山をショートへ、小芦をセカンド、大広をファーストへ回す超攻撃型シフト。平山に焦りからのエラーが出たものの、
前田が経験豊富なピッチングで後続をしっかり打ち取った。
8回表
平山、米丸の連続ヒットで1死1・3塁の絶好のチャンス!
ここで俺はキャッチャーの後藤に代え、中北を代打に送る。
相手バッテリーが警戒する中、中北はインコースの球を見事にサード前へ転がす完璧なスクイズ。
7-5と価値ある1点をもぎ取った。
8回裏
3試合連続登板となったモーガンがマウンドへ。
さすがに登板過多の疲れからか、相手打者にソロアーチを被弾して7-6と1点差に詰め寄られるも、
最後は意地で後続を断った。
9回表
鎌倉がヒットと盗塁で2塁へ進む。
西橋三振の後、ゲイリーはまたしても敬遠気味の四球。小芦が痛恨のダブルプレーに倒れ
7-6のまま9回裏へ。
9回裏
マウンドへ送り出したのは、昨日危険球退場となり、意地と悔しさを抱えていた守護神・川井元だった。
「川井、昨日のことは忘れろ! お前がうちのエースリリーフだ、腕振ってこい!」
「……はい! 監督、全員三振取ってきます!」
マウンドに上がった川井の目は、静かに燃え上がっていた。
1人目の打者に対し、内角へ突き刺さる154km直球! 空振り三振!
2人目の打者へ、落差の大きいフォーク! 空振り三振!
そして最後の打者に対し、渾身の155kmズバッと見逃し三振!!
主審の「ストライクアウトッ!」の声とともに、川井が雄叫びを上げながら右拳を高く突き上げた。
「シャアアアアッ! 」
開幕ビジター3連戦3連勝。
敵地グラウンドの真ん中で、川井を中心に選手たちが歓喜の輪を作る。
「監督! やりましたね! 開幕3連勝ですよ!」
恵良のプロ初ホームラン&爆走、
米丸のランニングホームラン
ゲイリー、代打大広のアーチに
中北のスクイズ
そして川井の圧巻の三振ショー
全員野球で掴み取った文句なしの開幕スタート。
「ガタさん……世間のBクラス予想、まずは一吹きで吹き飛ばしたな!」
「ああ! この勢いのまま、ホーム開幕戦へ乗り込もうぜ!」
下馬評をあざ笑うかのように、京浜ライマルクリッパーズが最高の笑顔と最高の手応えを胸に、ホームスタジアムへと帰還する!




