第28話 開幕第3戦(2)
1回裏
2点のリードをもらった先発・竹井だったが、立ち上がりからボールが高めに浮き、投球に本来のキレがない。
連敗を避けたい相手打線の執念にも押され、連打を浴びて1死1・2塁。
ここで迎えたのは相手の4番打者だった。
「竹井、低めだ! 慎重にいけ!」
後藤のミットに応えて投じた外角低めへのスライダー。コースとしては決して甘くなかった。
しかし、相手4番のバットが上手くボールの下に入り込む。
——カキンッ!!
高々と上がった打球は、そのままレフトスタンド最前列へ滑り込んだ。逆転の3ランホームラン。
マウンドでガックリと肩を落とす竹井。ローテーション生き残りをかけた大事なマウンドで、いきなり出鼻をくじかれてしまう。
2回表
6番・平山が右中間を破る二塁打で出塁し、米丸のファーストゴロで1死3塁。
ここで7番・捕手の後藤が期待に応えるセンター前タイムリーヒット。
すぐさま3-3の同点に追いつく。
しかし、なおもランナーを置いた場面で、9番に下がった若狭が打ち取られて痛恨のダブルプレー。ベンチに戻る若狭の表情は暗く沈んでいた。
2回裏
竹井はヒットを打たれながらも、内野ゴロで打ち取ってなんとか無失点に凌ぎ切る。
3回表
先頭打者は1回にプロ初アーチを放っている恵良。
相手ピッチャーは恵良の足と打力を警戒するあまりストライクが入らず、ストレートの四球で出塁。
「よし恵良、暴れてこい!」
出塁すればこちらのペースだ。恵良は初球から完璧なスタートで二盗を決めると、続く球で間髪入れずに三盗
無死3塁で打席には2番・鎌倉。
鎌倉は引きつけてライト深くまで打ち上げる、完璧な犠牲フライ
恵良が悠々と生還し、4-3と再び勝ち越しに成功した。
「よっ! ミスター犠牲フライ!」
ベンチへ戻ってくる鎌倉に、スタンドのクリッパーズファンから愛のある歓声が飛ぶ。
鎌倉も「任せてください!」と照れくさそうに胸を叩いた。
3回裏
しかし、勝利の女神はそう簡単に微笑んでくれない。
リードしてもらった直後の3回裏。
竹井は2死まで漕ぎ着けたものの、走者を2塁に背負った場面で高めに浮いたストレートを痛打されてしまう。
——グラウンドを揺らす大歓声。
右中間スタンドへと吸い込まれる逆転2ランホームラン
「クソッ……!」
マウンドで膝に手を当て、地面を見つめる竹井。
俺は迷うことなくベンチを飛び出し、審判に球主交代を告げた。
「竹井、今日はここまでだ」
「……すみません、監督……」
悔しさと情けなさで声を詰まらせる竹井からボールを受け取る。
ローテ生き残りをかけた先発で、3回途中5失点でのKO降板。
「反省は試合後だ。まだ1点差、試合はこれからだぞ!」
竹井の肩を強く叩き、俺は早めの継投を決断。
3回裏でマウンドを降りた竹井の後を継ぎ、リリーフ陣へバトンを繋ぐこととなった。
マウンドに上がったのは、背番号19の山本尊
26歳、プロ2年目。遅咲きのルーキーとして昨年入団し、谷間の先発6番手として投げ抜いてきた男だ。
今季はロングリリーフもこなせるタフさを評価され、見事に開幕1軍の切符を掴み取っていた。
この回は無難に残り1人を打ち取る。
4回表
先頭の6番・平山が倒れ、打席には7番・米丸
チームNo.1の俊足男が、相手の初球を鋭く引っ張った。
——シュバッッ!!
打球はライト線ギリギリへ跳ぶ鋭いライナー!
相手ライトが決死のダイビングキャッチを試みたが、ボールはグローブのわずか先をかすめてライト線を転々とし、ファウルグラウンドの奥深くへ。
飛び込んだライトは衝撃で起き上がれない!
「抜けたあぁぁ! 走れ米丸! 3塁を狙え!」
コーチャーの叫び声に、米丸はギアをトップに入れた。
ライトのカバーに向かったセンターがボールに追いつき、拾い上げようとした瞬間——。
米丸はすでにサードベースを蹴り、猛烈なスピードで本塁へ突っ込んでいた!
「おいおいおい、ホームまで行っちゃうぞあいつ!」
「走れぇぇぇ米丸ッッ!!」
センターからの本塁返球が届くよりも早く、米丸がホームベースを駆け抜ける。
主審の両手が大きく横に広がった。
『セーーーフッ!!』
「うおおおおおーーーっ!! ランニングホームランだあああ!!」
ベンチを飛び出した全員が、泥だらけの米丸の頭を揉みくちゃにする!
米丸の今季第1号は、超圧巻のランニングホームラン。これで5-5の同点。
ベンチの隅で肩を落としていた竹井の元へ、息を切らした米丸が駆け寄って胸を小突いた。
「おい竹井! お前の黒星、消しといてやったぞ!」
「米丸さん……! ありがとうございます……!」
チームの熱い絆で、試合は再び振り出しに戻った。
4回裏
回跨ぎで山本が引き続きマウンドへ。
山本は持ち前の動くストレートと切れ味鋭いスライダーを低めに集め、相手打線を面白いように打ち取っていく。
ファーストゴロ、サードゴロ、そして空振り三振。
完璧な三者凡退!
荒れに荒れた乱打戦に、山本の静かな快投が冷や水を浴びせ、試合のペースをぐっと引き戻した。
5回表
恵良、鎌倉、西橋が打ち取られ無得点
5回裏
山本がこの回も踏ん張り、見事に相手の攻撃をゼロに抑える。




