第26話 新ヒーロー誕生
試合後のミーティングを終え、ホテルの部屋で缶ビールを開けた俺は、テレビのスポーツニュースをつけた。
どの局も開幕2戦目のプロ野球ニュースで持ちきりだったが、クリッパーズの試合ハイライトになると、アナウンサーの声が一段と熱を帯びた。
『さあ、続いては開幕2連勝を飾ったクリッパーズです! 今夜の主役は、昨夜支配下登録されたばかりのこの男! 背番号68、恵良和幸!!』
画面には、バント失敗からの爆走内野安打、そして相手バッテリーをあざ笑うかのように次々と盗塁を決める恵良の姿が映し出される。
『小芦のヒットを足で広げ、鎌倉の犠飛で生還!さらに今日だけで圧巻の1試合5盗塁!育成出身の韋駄天が、開幕2戦目にして敵地で空前の大暴れです!』
「ハハッ、恵良のやつ、めちゃくちゃ大映しになってるな」
画面はインタビューへ切り替わる。満面の笑みを浮かべた恵良の顔が映し出される。
『素晴らしい活躍でした、恵良選手! 1試合5盗塁、ご自身で振り返っていかがですか!?』
『はいっ! 監督から「お前の武器は足だ、暴れてこい」と言われていたので、塁に出たら絶対に走るつもりでした!支配下、そしてスタメン起用していただいた恩返しが少しでもできて本当に嬉しいです!』
『最後は上平監督が緊急登板でセーブを挙げましたが?』
『いやあ、監督がマウンドに出てきた時は正直一番テンション上がりました(笑)。監督の今年初セーブを僕の足でアシストできて最高です!』
「おいおい、俺の珍登板までネタにしてくれたな……」
俺は苦笑いしながらビールを飲み干した。
翌朝、ロビーに降りると、売店に並べられたスポーツ新聞各紙が壮観なことになっていた。
『【ド恵良い韋駄天! 恵良、怒涛の5盗塁で連勝導いた!】』
『【恵良いぞ! 育成の星が足で魅せた神脚劇】』
『【偉いぞ恵良! 上平采配ズバリ、電撃抜擢に5盗塁で応えた!】』
見事にどの紙面も『偉い』と『恵良』を引っかけたダジャレ見出しで踊っている。
「おはようございます、監督!」
ロビーに現れた恵良本人が、スポーツ紙を両手に抱えて新聞を買い込んでいた。
「おお、恵良。朝から新聞買い占めてんのか?」
「へへっ、実家の親に送ろうと思って! 『ド恵良い』なんて書かれたの人生初ですよ!」
照れくさそうに頭をかく恵良の横から、2番セカンドでフル出場した平山や、犠飛2本で手堅く貢献した鎌倉が冷やかしにやってくる。
「よっ!恵良様!今日の走り込みは恵良様の後ろ走らせていただきます!」
「やめろよ平山ぁ! 」
若手たちが楽しそうにじゃれ合う姿を見て、俺は胸の奥が熱くなるのを感じていた。
評価の低かったチームに、新しい風が確実に吹き始めている。
「よし、浮かれるのはここまでだ!今日勝てば開幕3連勝だぞ!気合入れて行くぞ!」
「「「はいっ!!!」」」
恵良の脚力という強力な武器を手に入れたクリッパーズ。
勢いそのままに、敵地での開幕3戦目へと向かう。




