第25話 開幕第2戦(3)
7回表
先頭の恵良がライト前へしぶとく落とし、本日3安打・猛打賞。
出塁するや否や、初球から足を飛ばして二盗成功。
さらに相手捕手が送球すら諦める完璧なタイミングで三盗まで決め、本日5つ目の盗塁をマークする。
無死3塁から、9番・鎌倉がこの日2本目となる深々とした犠牲フライを打ち上げ、恵良が生還。
5-2と貴重な1点を追加した。
7回裏
アンソニー・ソトが登板。
甘く入ったスライダーを捉えられ痛恨のソロホームランを被弾。5-3と再び2点差に。
8回表
西橋がキャッチャーフライ、警戒されるゲイリーがボール球に手を出してファーストゴロ、後藤三振で三者凡退
8回裏
エルナンデスとモーガンの完璧な継投で三者凡退に抑え込み、リードを保ったまま最終回へ。
9回表
若狭、小芦、そして本日大暴れの恵良も三振に倒れ、攻撃終了。
9回裏
2点差のセーブシチュエーション。
満を持してマウンドに登ったのは守護神・川井元!
「頼むぞ川井! 締めてこい!」
川井は最速155kmの力強い直球を投げ込み、1人目、2人目を圧巻の2者連続三振!
誰もが「あとアウト一つでゲームセットだ」と確信したその直後、悪夢が起きた。
——バシィィィンッッ!!
「ああっ……!?」
3人目の打者へ投じた内角高めの152km直球が指に引っかかり、すっぽ抜けて相手打者のヘルメットを直撃!
鈍い音が響き、打者がその場に崩れ落ちる。
主審の手が大きく上がった。
『危険球のため、ピッチャー川井、退場!!』
愕然とする川井に寄り添いながら、ベンチから緊急で2年目左腕の喜多須昌弘をマウンドへ送る。
しかし、2死から突然訪れたスクランブル登板のプレッシャーは大きく、喜多須は連続ヒットを浴びて5-4と1点差に詰め寄られ、なおも一打逆転のピンチを招いてしまう。
ブルペンではベテランの前田が猛スピードで肩を作っていたが、ガタさんが首を振る。
「だめだ健二! 前田の肩が間に合わねえ!」
「クソッ……! ここで打たれたら、ここまで投げた香川にも、川井にも顔が立たない!」
俺は腹を括った。腹を括るしかなかった。
「審判! ピッチャー交代、『上平』で行きます!」
『えっ……今、兼任監督の……上平監督とおっしゃいましたか!?』
「そうです! 上平です!」
場内アナウンスが絶叫する。
『ピッチャー喜多須に代わりまして……上平! 背番号39!』
敵地スタンドが、昨日以上の「ざわめき」と「大爆笑」に包まれた。
「うそだろ!? 2日連続で監督が出てきたぞ!」
「しかも1点差のサヨナラの大ピンチだぞ!?」
投球練習はわずか数球
肩もろくに温まっていない。
だが、マウンドに立った俺の眼光は真剣そのものだった。
内野陣の米丸、若狭、平山、小芦が集まってくる。
「監督……マジで投げんすか!?」
「当たり前だ! これ以上走者出したらサヨナラだぞ! 絶対に勝つぞ!」
打席には一打サヨナラの相手打者。
俺はロージンバッグを強く握り締め、腹の底から声を吐き出しながら初球を投げ込んだ——!
——ボコッ……!!
「引っ掛けた!!」
打者が打ち焦せって手を出したボールは、ボテボテのサードゴロ!
サードの米丸が冷静に捕球し、一塁へ矢のような送球!
——アウトッ! ゲームセット!!
「うおおおおお! 勝ったぁぁぁ!!」
「監督ナイスリリーフ!! まさかの今期初セーブだ!!」
ダグアウトから選手たちが一斉に飛び出し、マウンドの俺に飛びついてくる。
ベンチ裏へ戻ると、ガタさんが抱腹絶倒しながら出迎えてくれた。
「ハハハハ! 健二、最高だよ! 危険球退場からのスクランブルで、監督自らセーブ挙げちゃうなんてプロ野球史上何年ぶりの珍事だ!?」
「笑い事じゃないですよガタさん! 寿命が縮まりましたよ……!」
冷や汗を拭いながらも、俺の口元は緩んでいた。
育成上がりの恵良が5盗塁の縦横無尽の大暴れ。
ベテラン香川の125球の執念
そして全員で繋ぎ切った勝利。
評論家の「Bクラス予想」を冷笑するように
京浜ライマルクリッパーズが開幕戦に続き怒濤の開幕2連勝を達成した。




